転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

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第一章 魔法士学校編

第十六話 宇宙人ってことかな?

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「うわ、このオムライス、すっごいうまい!」

「本当おいしいよね! 私ここのオムライス好きで毎日食べてるの。気に入ってもらえて良かった」

 俺たちは今、ベッドで死体のように眠っているベガの横で食事をしている。

 目の前でオムライスを食べているアトリアを見ていて思ったことは色々あるが、まずこの女の子は可愛い。

 アトリアの第一印象は黒髪の元気な女の子って感じだったのだが、こうしてじっくり見ていると人受けの良さそうな感じと言うか、オーラがある気がする。会って間も無い俺を自分の部屋に誘って一緒にご飯を食べるあたり、相当なコミュ力の持ち主だろう。

「彼方君、あんまり見つめられると恥ずかしいよ……」

 これがバレてるんだよなぁ。そして恥じらう姿はまさに女の子って感じだ。この世界に来て女性にはアトリアを含め三人と会ったはずなのに、何故か初めて会った女性って感じがした。何故だろうな。

「そういえばここってアトリアの部屋なんだよな?  
この学校の生徒はみんな自分の部屋が与えられているのか?」

「そうだよ。私は一人部屋だけど基本は二人部屋なんだよ。まぁ卒業までここに住まないといけないし寮みたいなものかな」

「え、この学校って住み込みなの?」

「あれ、先生に聞かされてないの? この学校は卒業するまでここで生活しながら勉強するんだよ」

 えぇぇー初耳なんですけど。帰る場所なんか無いのだけれども。

「それじゃあ俺も誰かと一緒の部屋ってことか」

「彼方君はベガと一緒の部屋って先生が言ってたよ」

 だから初耳なんですけど。なんで俺自身の事をアトリアが知っていて俺が知らないんだよ。先生も大事なことは全然言ってくれないよな。

「あーあ、アトリアと一緒の部屋が良かったなー」

「え!? 彼方君、だっ、ダメだよ。私たちまだ知り合ったばっかだし、お互いのこともまだよく知らないし、えっとその、もう少し仲良くなってからと言うか卒業してから帝都に行って一緒に住むとかならその……良いかな……」

「いやいや俺何も言ってないよ」

 嫌な予感がしてベッドに目をやると、ベガがニヤニヤしながらこちらを見ている。こいつの仕業か、変な事を言いやがって。

 見てみろ、さっきまで早口で長々と喋っていたアトリアの顔がすごく赤くなっている。きっと怒っているのだろう。お前次は殺されるぞ。

「……彼方君……今言ったことは忘れてね……」

「あ、うん」

 ベガはベッドから起き上がると俺の横に座り込み、何事もなかったかのように野菜炒めを食べ始めた。

 このベガという男は俺のルームメイトらしいが、結構恐ろしい男だ。アトリアのことをすぐ怒らせるし、一緒に居るといつか俺もこいつと同じようにアトリアにボコボコにされそうだ。

 しかしこいつよく見ると身体を鍛えているのか、俺と同年代のはずなのに身体が俺よりも大きい。見た感じ身長は同じくらいなのだが……

「ところで彼方はさぁ、なんでこの学校に入学したんだ? 卒業は俺たちと同じ時期だし、何かあるのか?」

「それ私も聞きたかったんだー。地元はどこなの?」

 試練の質問攻めがきたぞ。さてどうしようか、これは正直に前の世界の事を言うべきか、それとも隠すべきか。

 俺にも分からないことは山ほどあるがそもそもの話、ルナさんが色んな説明を省いているせいだよな。卒業まで二ヶ月しかない理由だって聞かされてないし、魔法士にならなければいけない理由も知らない。

「あっ、ごめんね。言いたくないことなら無理に言わなくても大丈夫だよ」

「えー隠さないで教えろよー、俺たち親友だろー?」

 お前と親友になった覚えはないし今後も無い。だがアトリアが心優しいだけに、つい言いたくなってしまう。

「……実は俺、別の世界から来たんだ」

 ついに言ってしまった。けれどベガはともかくアトリアは良いやつだし、口止めされたわけじゃないが他言もしないだろう。

「ぷっ、あーはっはっ彼方お前最っ高だよ、あっはっはは、あー腹が痛いって」

 忘れていたがこいつはこういう奴だったな。もうこいつには絶対に秘密ごとは話さん。

「ベガ笑いすぎ。ごめんね彼方君、それって宇宙から来た宇宙人ってことかな?」

 あれ、アトリアさん、もしかしてオツムが弱い人ですか? でもアトリアの表情を見るとからかっているようには見えない。むしろ俺の発言の方が二人をからかっているように見えるよな……

「とにかくものすごく遠い場所から来たんだよ。それで安定した生活を送るために魔法士になろうと思って」

 普通すぎるがこれが一番無難だよな。生前がサラリーマンだったせいでどうしても安定を選んでしまう自分が情けない。

「すごく良いと思うよ。私も彼方君と同じようなものだから」

「アトリアは卒業して魔法士になったら何をするんだ?」

「私はね、お父さんとお母さんと三人で暮らしてるの。田舎の実家は商売をしているんだけど、田舎じゃお客さんが少ないからどうしても売り上げが伸びなくて……だから魔法士になって帝都に行って家族みんなで商売をしようかなって思ってるの」

「そうか……アトリアにはちゃんとした夢があるんだな。尊敬するよ」

 商売って泣きまんじゅうのことだよな? 売り上げが伸びないのは人がいないからってだけじゃないと思うんだが、まぁ言わないでおこう。きっとアトリアにはなんとかできる力があるだろうし。

「さぁ、次はベガの番だぞ。俺のことを笑ったからにはものすごい夢があるんだろうな」

「あー腹いっぱいになったことだしそろそろ帰るわ、卒業したら教えてやるよ」

 そう言ってベガは自分で食べた野菜炒めの空の食器を持ち、そそくさとアトリアの部屋から出て行った。

 人の事を聞いておいて、自分の事は言わないのかよ。もしかして言いたくないことでもあるのか? まぁ俺も同じか……

「アトリアはベガの夢って知ってるのか?」

「……うん、一応聞いてはいるけど、えーっとね、ベガが彼方君に自分から話す時が来るまで待っていてあげて。私はベガと同郷だから分かるんだけど、私の口からは言えないの……ごめんなさい」

「ああ、こっちこそごめん。本人が教えてくれるまで待ってみるよ」

 喋りながらアトリアの表情が暗くなっていくのを察して、空気を読んでしまった。恐らく何か良くないことがあったのだろう。

「ご馳走様、そろそろ自分の部屋に戻るよ」

「うん、たまにはこうやってみんなでお話ししようね!」

 本当にアトリアは良い子だ。こんな女の子の部屋でご飯を食べて普通にお喋りして、俺ってもしかしてリア充なのか?

 そう考えると気分が良くなってきた。なんだか本当に学生に戻った気がするなぁ。前の世界で学生だった時より面白いじゃないか。

 そう思いながらアトリアの部屋を出た矢先、すぐに問題が生じた。

「俺の部屋ってどこだっけ?」







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