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第一章 魔法士学校編
第十五話 人生初の女子の……部屋?
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ベガとアトリアの帰りを待つこと三時間。俺は何もやることがないままただただ教室の椅子に座って待っていた。
「……た、ただいま……もどり……ました……」
やっと戻ってきたのかと思ったら、二人は息を切らせながらヨロヨロと教室に入ってきた。よく見たら服もボロボロになっている。
「二人とも大丈夫? なんでそんなに疲れ切ってるの?」
すると、ミラ先生がニヤつきながら言った。
「彼方、貴様もすぐにわかる。二人のようにボロ雑巾になる日も近いぞ」
そうか、これはミラ先生の自主練でこうなったという事か。魔力の高いベガとアトリアがこの有様って、俺が耐えられるわけないと思うのだが……
「疲れて帰ってきたところ申し訳ないんだけど、学校の案内をしてくれないかな?」
「彼方くん……ちょっと、5分だけ……休ませて……」
アトリアはそう言って自分の膝に手をつき、その場で呼吸を整えている。
アトリアもベガも体操服の様なものを着ているが、どちらの服も所々破けている。
アトリアは女の子だから毎回授業の度に服が破れると目のやり場に困るなぁ。今だって視界に入れない様に努力している。
「先生、彼方がアトリアのおっぱいをチラチラ見ています!」
「ーーなっ、おい!!」
急に何を言いやがったこいつ。みっ、見てねーし、チラチラとか言ったら見てるっぽいからやめろ。
「貴様は本当におっぱいが好きなんだな。私のおっぱいも散々見ておきながらまだ足りないのか、そうかあーはっはっはっ」
「いやだなぁ先生、見てないですよ。冗談キツいんですからぁ」
「しかし貴様、私のスリーサイズを見ただけでーー」
「うわーーーっ、わーーーっ、あっ、そうだお腹空いたなー!! ベガもアトリアもそう思わない?」
先生が恐ろしい事を言おうとしていた。危険人物だよこの人。
いまだニヤニヤしているミラ先生をよそ目に、食事の誘いで誤魔化したつもりだったのだが、
「彼方お前さぁ、アトリアのおっぱいなんて見てもつまんないだろ? こいつちっちゃいからなぁ。あ、もしかしてお前貧乳が好きなのか?」
折角話を逸らそうとしたのに掘り返してきやがった。だが、そんな事よりも今の発言はヤバい気がする。アトリア絶対怒っているよな? 確認したいが怖すぎてアトリアの方に視線を向けられない。
すると、突然小さな声でボソボソと何かが聞こえたと思えば、その瞬間ベガが崩れ落ちる様に目の前で倒れた。
「彼方君、ちょうど私もお腹すいてたところなの。案内するから一緒に食堂にでも行こっか」
アトリアは笑顔でそう言いながら、床に倒れているベガの片足を持ち、引きずりながら教室を出た。
笑顔だったのが怖すぎて、俺は頷くこともできず黙ってアトリアの後をついて行った。引きずられているベガはどうやら寝ているみたいだ。さすがにあれぐらいで殺すことはないよな?
それにしてもベガのおかげでアトリアの地雷ポイントを知ることが出来たな。彼には悪いがありがとうございます。
「お待たせ。ここが食堂だよ」
そんなに歩くこともなく到着した。良い匂いが漂っている食堂内は学生で溢れかえっており、空いている席が見つからない。
「いつもこんなに大勢いるのか?」
「そんなことは無いんだけど、今日は何故か人が多いね。席も空いてないし私の部屋で食べよっか」
アトリアは左手にベガの足を持ち、引きずりながら堂々と食堂の真ん中を歩いていく。
正直アトリアの後ろをついていくのは恥ずかしいが、周りを見ても皆んなが動じていないところを見ると、この二人にとってはいつもの事なのかもしれないと、狂気を感じずにはいられない。
「私オムライスー、ベガはえっとどうしようかな……野菜炒めでいっか。彼方君は何にする?」
まさかオムライスがあるのか! どうやら食に関しては前の世界と変わらないのかもしれない。てっきり変な動物の肉とかを食わされるものだと思っていたから嬉しい。
とりあえずアトリアと同じオムライスを注文すると、すぐに出来立てのオムライスが出てきた。外見は前の世界のものと全く変わらない。
「それじゃあ一緒に私の部屋行こっか」
未だに起きないベガをモップの如き扱いで引きずりながら、再び歩き出した。そろそろ可哀想になってくるよ。
いやそれより、今からアトリアの部屋に行くのか? 女の子の部屋だぞ、生まれてはじめての女子の部屋だぞ。彼女の部屋にも入ったことないのにいいのか俺。
そういえばルナさんのいるところは女子の部屋に含まれるのかな。いや、あれはノーカウントだよな。何もない殺風景な部屋だし。
ヤバい、考えただけでドキドキしてきたぞ。どうしよう、とりあえず二人きりは緊張するからベガは早く起きろ。
そうこうしているうちに、アトリアはとある部屋のドアの前で立ち止まった。
「ここが私の部屋だよ。さぁ入って入って」
なんでアトリアはそんなに普通の態度なのだろうか。まるで男子を部屋に招き入れる事に慣れているみたいではないか。まさか緊張しているのは俺だけ? 俺がおかしいのか?
「お邪魔します……」
人生初の女子の部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、視覚よりも先に嗅覚が真っ先に俺に教えてくれた。
「良い匂いがする」
「ーーちょっ、彼方君! 部屋に入った途端に匂いを嗅がないでよ!」
「あっ、ごめんつい……」
思わず口に出してしまったらしい。これではまるで変態じゃないか。でも女の子の部屋ってこんなに良い匂いがするのか。異世界は新発見が多いな。
「狭い部屋だけど適当に座って、みんなでご飯にしようよ」
みんなでって二人だけなんですけど。ベガの奴は起きる気配が無いがもう放っておこう。
部屋の中央にはテーブルがあり、俺が床に座るとアトリアは俺の対面に座った。
辺りを見渡すと、ベッドがあり机があり、俺が熱を出してミラ先生に運ばれた部屋とあまり変わりはないように見えたが、圧倒的に違う箇所が二つある。
一つはぬいぐるみがやたら多いところだ。女の子の部屋は初めてだが、こんなに多いものなのか? ベッドや床やその他いろんな所に置かれている。
もう一つはあまり見たくなかったのだがこの部屋、筋トレ道具が多すぎる。ダンベルや握力を鍛えるやつとかがそれはもう沢山ある。まさかとは思うがもしかしてアトリアってヤバイやつなのか?
「それじゃあ彼方君。手を合わせてー、いただきます」
「いただきます……」
今は考えることはやめて食を楽しむか……
「……た、ただいま……もどり……ました……」
やっと戻ってきたのかと思ったら、二人は息を切らせながらヨロヨロと教室に入ってきた。よく見たら服もボロボロになっている。
「二人とも大丈夫? なんでそんなに疲れ切ってるの?」
すると、ミラ先生がニヤつきながら言った。
「彼方、貴様もすぐにわかる。二人のようにボロ雑巾になる日も近いぞ」
そうか、これはミラ先生の自主練でこうなったという事か。魔力の高いベガとアトリアがこの有様って、俺が耐えられるわけないと思うのだが……
「疲れて帰ってきたところ申し訳ないんだけど、学校の案内をしてくれないかな?」
「彼方くん……ちょっと、5分だけ……休ませて……」
アトリアはそう言って自分の膝に手をつき、その場で呼吸を整えている。
アトリアもベガも体操服の様なものを着ているが、どちらの服も所々破けている。
アトリアは女の子だから毎回授業の度に服が破れると目のやり場に困るなぁ。今だって視界に入れない様に努力している。
「先生、彼方がアトリアのおっぱいをチラチラ見ています!」
「ーーなっ、おい!!」
急に何を言いやがったこいつ。みっ、見てねーし、チラチラとか言ったら見てるっぽいからやめろ。
「貴様は本当におっぱいが好きなんだな。私のおっぱいも散々見ておきながらまだ足りないのか、そうかあーはっはっはっ」
「いやだなぁ先生、見てないですよ。冗談キツいんですからぁ」
「しかし貴様、私のスリーサイズを見ただけでーー」
「うわーーーっ、わーーーっ、あっ、そうだお腹空いたなー!! ベガもアトリアもそう思わない?」
先生が恐ろしい事を言おうとしていた。危険人物だよこの人。
いまだニヤニヤしているミラ先生をよそ目に、食事の誘いで誤魔化したつもりだったのだが、
「彼方お前さぁ、アトリアのおっぱいなんて見てもつまんないだろ? こいつちっちゃいからなぁ。あ、もしかしてお前貧乳が好きなのか?」
折角話を逸らそうとしたのに掘り返してきやがった。だが、そんな事よりも今の発言はヤバい気がする。アトリア絶対怒っているよな? 確認したいが怖すぎてアトリアの方に視線を向けられない。
すると、突然小さな声でボソボソと何かが聞こえたと思えば、その瞬間ベガが崩れ落ちる様に目の前で倒れた。
「彼方君、ちょうど私もお腹すいてたところなの。案内するから一緒に食堂にでも行こっか」
アトリアは笑顔でそう言いながら、床に倒れているベガの片足を持ち、引きずりながら教室を出た。
笑顔だったのが怖すぎて、俺は頷くこともできず黙ってアトリアの後をついて行った。引きずられているベガはどうやら寝ているみたいだ。さすがにあれぐらいで殺すことはないよな?
それにしてもベガのおかげでアトリアの地雷ポイントを知ることが出来たな。彼には悪いがありがとうございます。
「お待たせ。ここが食堂だよ」
そんなに歩くこともなく到着した。良い匂いが漂っている食堂内は学生で溢れかえっており、空いている席が見つからない。
「いつもこんなに大勢いるのか?」
「そんなことは無いんだけど、今日は何故か人が多いね。席も空いてないし私の部屋で食べよっか」
アトリアは左手にベガの足を持ち、引きずりながら堂々と食堂の真ん中を歩いていく。
正直アトリアの後ろをついていくのは恥ずかしいが、周りを見ても皆んなが動じていないところを見ると、この二人にとってはいつもの事なのかもしれないと、狂気を感じずにはいられない。
「私オムライスー、ベガはえっとどうしようかな……野菜炒めでいっか。彼方君は何にする?」
まさかオムライスがあるのか! どうやら食に関しては前の世界と変わらないのかもしれない。てっきり変な動物の肉とかを食わされるものだと思っていたから嬉しい。
とりあえずアトリアと同じオムライスを注文すると、すぐに出来立てのオムライスが出てきた。外見は前の世界のものと全く変わらない。
「それじゃあ一緒に私の部屋行こっか」
未だに起きないベガをモップの如き扱いで引きずりながら、再び歩き出した。そろそろ可哀想になってくるよ。
いやそれより、今からアトリアの部屋に行くのか? 女の子の部屋だぞ、生まれてはじめての女子の部屋だぞ。彼女の部屋にも入ったことないのにいいのか俺。
そういえばルナさんのいるところは女子の部屋に含まれるのかな。いや、あれはノーカウントだよな。何もない殺風景な部屋だし。
ヤバい、考えただけでドキドキしてきたぞ。どうしよう、とりあえず二人きりは緊張するからベガは早く起きろ。
そうこうしているうちに、アトリアはとある部屋のドアの前で立ち止まった。
「ここが私の部屋だよ。さぁ入って入って」
なんでアトリアはそんなに普通の態度なのだろうか。まるで男子を部屋に招き入れる事に慣れているみたいではないか。まさか緊張しているのは俺だけ? 俺がおかしいのか?
「お邪魔します……」
人生初の女子の部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、視覚よりも先に嗅覚が真っ先に俺に教えてくれた。
「良い匂いがする」
「ーーちょっ、彼方君! 部屋に入った途端に匂いを嗅がないでよ!」
「あっ、ごめんつい……」
思わず口に出してしまったらしい。これではまるで変態じゃないか。でも女の子の部屋ってこんなに良い匂いがするのか。異世界は新発見が多いな。
「狭い部屋だけど適当に座って、みんなでご飯にしようよ」
みんなでって二人だけなんですけど。ベガの奴は起きる気配が無いがもう放っておこう。
部屋の中央にはテーブルがあり、俺が床に座るとアトリアは俺の対面に座った。
辺りを見渡すと、ベッドがあり机があり、俺が熱を出してミラ先生に運ばれた部屋とあまり変わりはないように見えたが、圧倒的に違う箇所が二つある。
一つはぬいぐるみがやたら多いところだ。女の子の部屋は初めてだが、こんなに多いものなのか? ベッドや床やその他いろんな所に置かれている。
もう一つはあまり見たくなかったのだがこの部屋、筋トレ道具が多すぎる。ダンベルや握力を鍛えるやつとかがそれはもう沢山ある。まさかとは思うがもしかしてアトリアってヤバイやつなのか?
「それじゃあ彼方君。手を合わせてー、いただきます」
「いただきます……」
今は考えることはやめて食を楽しむか……
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