小説の悪党公爵とお見合い結婚することになっちゃいました

月冴桃桜

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4、初めて知ったこの世界の人の事情

私の態度を特に怪しむことなく「どういたしまして」と微笑んでくれだ美人侍女。

ーーさすがだなぁ。

「(ーーそうだ。このなら……。)」

自分の名前が書かれた紙を見下ろしながら、《》を思い付いたのですぐに実行に移すことにした。

「ーーねえ。を書いてくれる?」

ーーそう、私は名前は勿論、人間関係とかを調として用意した紙とペンで、ことにした。

ーーうん。これなら自然と挨拶することで、相手の名前を知ることができて、おまけにその人の職業とか立場といった情報も手に入れられる。

「……私の名前ですか?」

と、少し驚いたような顔をする美人侍女とその後ろに控えていた侍女たち。

「? ……うん。だって私の名前とは違う文字でしょう?」

と、侍女たちの表情が気になるものの、至極当たり前のことを言ってみる。いわゆるのような感じにちゃんと聞こえるかな?

ーー侍女たちの顔を見ていると、さっきよりは……まし、かな?

「ーーあ! あともっと《》も書いてほしいな。」

ーーそう、この言い方で、を得るための質問をした。

「ーー難しい言葉、ですか?」

ーーさすがの敏腕美人侍女でも、予測つかないのかな?

「ーーうん。そうだな……例えば、……とか?」

ーーそう、私はこの質問で侍女たちの名前だけでなく、といったの情報をこのやり方で得ようとした。

「ーーーーなるほど。かしこまりました。」

その質問でようやく理解して納得してくれたのか、すぐに手に取ったペンにインクをつけて、自分の名前と職業を書いてくれる。

『ヘレン・デーカー、筆頭侍女長、臨時専属侍女』
と、書いてから、ビシッと背筋を伸ばして、

「ヘレン・デーカーと申します。旦那様より、筆頭侍女長の地位を頂き、今はフィオナお嬢様の専属侍女が正式に決まるまでの間、臨時で専属を務めさせて頂いております。」

と、丁寧に挨拶して、優雅に頭を下げた。

ーーさすがだと、その所作の美しさに見とれてしまう。

ーーそれにしても、彼女は《》なんだ?
ーーだとしたら、正式な専属侍女っていつ決まるんだろう?

「お嬢様の専属侍女はおそらくは半年以内ぐらいには決まると思われます。」

私の心を読んだように、ヘレンが私の疑問に答えてくれる。

「ーーそ、そうなんだ? わかった。」

ーーホント、優秀だわ。

「ーーあ。貴女たちもここに書いて教えてくれる?」

後ろの侍女二人にもそうお願いすると、また驚いたような顔をされる。

「(……まただ。うーーん。何かあるのかな?)」

二人は一瞬、ためらう素振りを見せたものの、すぐに、

「ーーーかしこまりました。」

と、頷いてくれる。

ーーまあ、さっきの私とヘレンとのを見ていたからであろう、何か動揺していたのもすぐに隠して、それぞれ《名前》を書いてくれた。

ーー二人が順番に書いている間にヘレンが私の耳元に顔を寄せてくる。

「ーーお嬢様。もしや、ここにいる以外の侍女や他の者たちにも名前を書くように命じるつもりですか?」

私の耳元でヘレンが小声でそう聞いてくる。

「ーーうん。そのつもりだけど、いけない?」

ーー正直、ヘレンの質問の意味が分からなかった。

「そうですね。私たちのように上級侍女はほぼ貴族の子女ですが、下級侍女やその他屋敷の使用人たちの多くは平民です。勿論、平民の一部にも文字の読み書きができるものもいます。でも、平民の大半が読むことも書くこともできない者たちです。」

ヘレンのその言葉で、ようやく彼女が何が言いたかったのかがわかった。

「ーーなので、使用人たちにという命令はお控えください。」

ーー使……彼女たちは《》で生きているんだから、それぞれにそれぞれの事情があるのが普通なんだよね。

二人には分からないように貴族のヘレンに頭を下げられて、……少しのやりとりでこの世界の人の事情を少しだけ理解したのだった。

私が「分かった」と頷いたのを見て、ふわりと微笑んだヘレン。

書き終えた二人は紙を私の前に戻すと、

『テリー•リード 臨時専属侍女』の文字を指差して、

「テリー•リード、子爵家の次女で、フィオナお嬢様の臨時専属侍女でございます。」

と、名乗って頭を下げる。もう一人の侍女も同じように、『アンナ•ヒルトン 臨時専属侍女』の文字を指差して、

「アンナ•ヒルトン、男爵家の3番目の娘で、フィオナお嬢様の臨時専属侍女でございます。」

と名乗ってくれる。

ーーすぐそばでのヘレンとの内緒話。聞こえたかもしれないのにテリーとアンナも顔に出したりしない。

私もあえて顔にはださないようにして3人を見渡して、

「臨時だけどよろしくね!」

と満開の笑顔で微笑んだのだった。
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