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第5章
【40】聖女と伝承と聖なる存在と!
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「――――なるほど。それはニーハイムスが悪い」
「――うむ。ニーハイムスが悪い」
「えっ、えええ……そうなんですの??」
シオン神父様とリュオン様はニーハイムス様と私の間に有った話を聞いてくださり、そうして開口一番そう仰っしゃりましたわ。
「私は……こうやって冷静になってお話ししてみると、私自身が幼稚だったような気がいたしますが」
「そんな賢者タイム要らん要らん。夫婦喧嘩はガンガンいこうぜじゃ」
リュオン様が私の背を押すような発言を……。
「というか『夫婦喧嘩』なんて!」
私は赤面してしまいましたわ。
「立派な『夫婦喧嘩』、もしくは『痴話喧嘩』ですよカレン」
シオン神父様も頷いていらっしゃるわ……。
「でも、政争に私を巻き込みたくないニーハイムス様のお気持ちも確かに解るといえば解るのです……。私ももし、お家に何か有ってもヒロさんを巻き込むようなことだけはしたく有りませんし」
「……ニーハイムスに並ぶ基準がヒロとはのう。そなた本当にヒロが好きじゃの」
「当然ですわ!」
ヒロさんもニーハイムス様も別腹で愛していますのよ、私は!
「……その気持ちが解るなら、ニーハイムスにすることはひとつでは有りませんか?」
シオン神父様は私に優しく微笑んでいるわ。
「そうじゃのう。ニーハイムスのことをあまり持ち上げるのは何となく癪に障るが」
リュオン様がニーハイムス様にお厳しいのは何故なのかしら?
「それは私も同意見ですよ、リュオン様」
……シオン神父様までも。謎だわ……。
「しかし。私たちは応援しますが、伝説の『聖飛竜』を従える『聖女』であるヒロさんの存在と伝承を無視してニーハイムスが次期王を目指すのはなかなか難しいのでは?」
それは、『聖飛竜』を従えた『聖女』――つまりヒロさん――は次期王と結ばれなければいけないという伝承ですわ。
「――……それはそうですけれど、ニーハイムス様は以前私にお約束してくださいましたわ。『王の言うことは『絶対』だ。『絶対』なのならば自分が王になろう』と」
「ほう――――」
リュオン様は目を細めて嬉しそうに微笑みましたわ。
「熱いですね」
シオン神父様も微笑んでらっしゃいます。
――あら? 私何か恥ずかしいことでも言ったかしら?
「おい、シオンは居るかー?」
そこに唐突に聞こえたのは。あの馴染みのある声は。
「おやおや、噂をすれば何とやらですね」
シオン神父様は立ち上がり、声の主を迎えに行きましたわ。
「運命じゃのう。若人はよいのう。見ていて飽きぬのう」
リュオン様は私をいじり始めました。
「こちらですよニーハイムス。今お茶をしていたところです――」
「お前は本を読むかお茶をするか散歩をするかばかりだな。いつ礼拝をしているんだ?」
「礼拝したい時に」
「いいご身分だなぁ」
「だから転職したんだよ」
「――――あ」
ニーハイムス様が、お庭のテーブルセットに座る私を見つけましたわ。
「―――……に、ニーハイムス様……」
「……カレン……」
リュオン様もシオン神父様も、無言でニーハイムス様と私のふたりを見守って(?)います。
「…………」
「…………」
ニーハイムス様、急に無言になられたわ……私も無言になってしまいます。
「――あのっ!」
私が先に、テーブルに手をついて立ち、声を掛けました。
「――はいっ!」
ニーハイムス様がお返事してくださったわ!
「――……先ほどは、私、失礼致しました……。思慮が浅はかでしたわ……」
「いえ! とんでもない! 俺も貴女の気持ちを考えずに――」
「ニーハイムス様は私を想ってあえてお話しに出さずにいてくださったのに、私――!」
「いいえ、俺も貴女を一人前の女性として扱わなかったのが良くない」
「ニーハイムス様…………」
「カレン…………」
私たちは見つめ合って動かなくなってしまいましたわ。
「…………私たちも居るんじゃがの」
リュオン様が一言、発せられましたわ。
「すっかりふたりの世界でしたよね、今」
シオン神父様も一言仰られました。
「…………あ」
私はリュオン様とシオン神父様に目を向けましたわ。
しかしニーハイムス様はこちらにずんずんと近付いてきて――
私を抱きしめてしまいました――
「カレン、貴女のことを『まだ学生』と言ったが、俺自身もまだ十分子供だと認めます。貴女が執務室から消えた時、俺はこの世の灯りが消えたかのようなショックを受けました――」
「あの、ニーハイムス様…………」
近い、近いですわっ!
「こどものニーハイムスくん」
「こどものニーハイムスちゃん」
シオン神父様には『くん』付けで、リュオン様には『ちゃん』付けで呼ばれてしまいましたわよニーハイムス様……っ!
「――……はっ!」
やっと、正気(?)に戻られたのか、ニーハイムス様は慌てて私から離れます。しかしもう既に遅かったようです――
「…………」
「…………」
リュオン様はニヤニヤと、シオン神父様はそれはそれは優しそうに私たちを観察しています。
「い、今のは無し! 無しだ! リュオン様、シオン! 聞かなかったことにして貰おう! カレンは聞いて良し!!」
「リュオン様はお子様じゃから何を聞いたか解らな~い」
「俺も子供だから何のことだか解らないね」
ふたりともニーハイムス様のことをバッサリですわ……。
「――……っ! よりによってこのふたりに見られるとは不覚……!」
誰に見られても不覚ですわよ、ニーハイムス様……。
ニーハイムス様はその場に崩れ落ちましたわ…………。
「さて、冗談はさておき。ニーハイムスや」
リュオン様がティーカップを置いてニーハイムス様に声を掛けましたわ。
「――……はい?」
「そなた、『聖女』と『聖飛竜』の伝説の件にも悩んでおるじゃろう」
「それは――……」
「そなた自身が気にせずとも、周りの者たちが納得しなければ意味が無い」
「そうですけれども……」
「そこでじゃ」
リュオン様は立ち上がり、空に向かって手を伸ばしましたわ。
「おいで――かわいい子猫よ」
そうして――小さな光の球が現れ、徐々に大きい球へと変化していきましたわ。
「我を『子猫』と呼ぶのは貴殿だけだ。リュオン殿」
大きい球は地上に落ち、そしてそこからは――
大きな白い虎が、現れたのです――――
「して、何用かな? つまらぬ用事ならすぐに帰らせて貰うぞ」
「うむ。そこの乙女と契約せぬか?」
「何?」
――私も、ニーハイムス様もシオン様もびっくりしていますわ。
「そこの乙女――というとこの少女か。ふむ――」
白い虎は、私の周りをウロウロと周ります。何。一体何が起きて居るのですか!?
「その白虎の名は『ハクテイ』じゃ。『聖獣』じゃよ」
「は、『ハクテイ』様――」
「うむ、悪くない。そもそもリュオン殿が推薦するなら問題無かろう」
「ありがとう、感謝するぞハクテイ」
ニーハイムス様がやっと口を開きましたわ。
「リュオン様――これは一体!?」
「これとは失礼ではないか。そこの若き王よ」
ハクテイ様はニーハイムス様に向かってひと吠えしましたわ。
「うわっ!?」
「ニーハイムス様!」
私はニーハイムス様のお側に寄り添いました。
「ははははは。驚くのも無理が無い。じゃがこの聖獣、まだったったの500歳の若造じゃよ」
リュオン様はそう言って、ハクテイを撫でましたわ。
あら、いいわね……ふかふかしてそう…………。
「カレン」
リュオン様が私を呼んだわ。
「は、はい……」
「王の后に『聖』なるイキモノが必要ならばそなたも持っていけば良い」
「え……」
「ニーハイムスとカレン、新しい伝説の始まりじゃ。アハハハハ!」
こうして、私の元に『聖獣』である白虎の『ハクテイ』がやって来たのです――――
「――うむ。ニーハイムスが悪い」
「えっ、えええ……そうなんですの??」
シオン神父様とリュオン様はニーハイムス様と私の間に有った話を聞いてくださり、そうして開口一番そう仰っしゃりましたわ。
「私は……こうやって冷静になってお話ししてみると、私自身が幼稚だったような気がいたしますが」
「そんな賢者タイム要らん要らん。夫婦喧嘩はガンガンいこうぜじゃ」
リュオン様が私の背を押すような発言を……。
「というか『夫婦喧嘩』なんて!」
私は赤面してしまいましたわ。
「立派な『夫婦喧嘩』、もしくは『痴話喧嘩』ですよカレン」
シオン神父様も頷いていらっしゃるわ……。
「でも、政争に私を巻き込みたくないニーハイムス様のお気持ちも確かに解るといえば解るのです……。私ももし、お家に何か有ってもヒロさんを巻き込むようなことだけはしたく有りませんし」
「……ニーハイムスに並ぶ基準がヒロとはのう。そなた本当にヒロが好きじゃの」
「当然ですわ!」
ヒロさんもニーハイムス様も別腹で愛していますのよ、私は!
「……その気持ちが解るなら、ニーハイムスにすることはひとつでは有りませんか?」
シオン神父様は私に優しく微笑んでいるわ。
「そうじゃのう。ニーハイムスのことをあまり持ち上げるのは何となく癪に障るが」
リュオン様がニーハイムス様にお厳しいのは何故なのかしら?
「それは私も同意見ですよ、リュオン様」
……シオン神父様までも。謎だわ……。
「しかし。私たちは応援しますが、伝説の『聖飛竜』を従える『聖女』であるヒロさんの存在と伝承を無視してニーハイムスが次期王を目指すのはなかなか難しいのでは?」
それは、『聖飛竜』を従えた『聖女』――つまりヒロさん――は次期王と結ばれなければいけないという伝承ですわ。
「――……それはそうですけれど、ニーハイムス様は以前私にお約束してくださいましたわ。『王の言うことは『絶対』だ。『絶対』なのならば自分が王になろう』と」
「ほう――――」
リュオン様は目を細めて嬉しそうに微笑みましたわ。
「熱いですね」
シオン神父様も微笑んでらっしゃいます。
――あら? 私何か恥ずかしいことでも言ったかしら?
「おい、シオンは居るかー?」
そこに唐突に聞こえたのは。あの馴染みのある声は。
「おやおや、噂をすれば何とやらですね」
シオン神父様は立ち上がり、声の主を迎えに行きましたわ。
「運命じゃのう。若人はよいのう。見ていて飽きぬのう」
リュオン様は私をいじり始めました。
「こちらですよニーハイムス。今お茶をしていたところです――」
「お前は本を読むかお茶をするか散歩をするかばかりだな。いつ礼拝をしているんだ?」
「礼拝したい時に」
「いいご身分だなぁ」
「だから転職したんだよ」
「――――あ」
ニーハイムス様が、お庭のテーブルセットに座る私を見つけましたわ。
「―――……に、ニーハイムス様……」
「……カレン……」
リュオン様もシオン神父様も、無言でニーハイムス様と私のふたりを見守って(?)います。
「…………」
「…………」
ニーハイムス様、急に無言になられたわ……私も無言になってしまいます。
「――あのっ!」
私が先に、テーブルに手をついて立ち、声を掛けました。
「――はいっ!」
ニーハイムス様がお返事してくださったわ!
「――……先ほどは、私、失礼致しました……。思慮が浅はかでしたわ……」
「いえ! とんでもない! 俺も貴女の気持ちを考えずに――」
「ニーハイムス様は私を想ってあえてお話しに出さずにいてくださったのに、私――!」
「いいえ、俺も貴女を一人前の女性として扱わなかったのが良くない」
「ニーハイムス様…………」
「カレン…………」
私たちは見つめ合って動かなくなってしまいましたわ。
「…………私たちも居るんじゃがの」
リュオン様が一言、発せられましたわ。
「すっかりふたりの世界でしたよね、今」
シオン神父様も一言仰られました。
「…………あ」
私はリュオン様とシオン神父様に目を向けましたわ。
しかしニーハイムス様はこちらにずんずんと近付いてきて――
私を抱きしめてしまいました――
「カレン、貴女のことを『まだ学生』と言ったが、俺自身もまだ十分子供だと認めます。貴女が執務室から消えた時、俺はこの世の灯りが消えたかのようなショックを受けました――」
「あの、ニーハイムス様…………」
近い、近いですわっ!
「こどものニーハイムスくん」
「こどものニーハイムスちゃん」
シオン神父様には『くん』付けで、リュオン様には『ちゃん』付けで呼ばれてしまいましたわよニーハイムス様……っ!
「――……はっ!」
やっと、正気(?)に戻られたのか、ニーハイムス様は慌てて私から離れます。しかしもう既に遅かったようです――
「…………」
「…………」
リュオン様はニヤニヤと、シオン神父様はそれはそれは優しそうに私たちを観察しています。
「い、今のは無し! 無しだ! リュオン様、シオン! 聞かなかったことにして貰おう! カレンは聞いて良し!!」
「リュオン様はお子様じゃから何を聞いたか解らな~い」
「俺も子供だから何のことだか解らないね」
ふたりともニーハイムス様のことをバッサリですわ……。
「――……っ! よりによってこのふたりに見られるとは不覚……!」
誰に見られても不覚ですわよ、ニーハイムス様……。
ニーハイムス様はその場に崩れ落ちましたわ…………。
「さて、冗談はさておき。ニーハイムスや」
リュオン様がティーカップを置いてニーハイムス様に声を掛けましたわ。
「――……はい?」
「そなた、『聖女』と『聖飛竜』の伝説の件にも悩んでおるじゃろう」
「それは――……」
「そなた自身が気にせずとも、周りの者たちが納得しなければ意味が無い」
「そうですけれども……」
「そこでじゃ」
リュオン様は立ち上がり、空に向かって手を伸ばしましたわ。
「おいで――かわいい子猫よ」
そうして――小さな光の球が現れ、徐々に大きい球へと変化していきましたわ。
「我を『子猫』と呼ぶのは貴殿だけだ。リュオン殿」
大きい球は地上に落ち、そしてそこからは――
大きな白い虎が、現れたのです――――
「して、何用かな? つまらぬ用事ならすぐに帰らせて貰うぞ」
「うむ。そこの乙女と契約せぬか?」
「何?」
――私も、ニーハイムス様もシオン様もびっくりしていますわ。
「そこの乙女――というとこの少女か。ふむ――」
白い虎は、私の周りをウロウロと周ります。何。一体何が起きて居るのですか!?
「その白虎の名は『ハクテイ』じゃ。『聖獣』じゃよ」
「は、『ハクテイ』様――」
「うむ、悪くない。そもそもリュオン殿が推薦するなら問題無かろう」
「ありがとう、感謝するぞハクテイ」
ニーハイムス様がやっと口を開きましたわ。
「リュオン様――これは一体!?」
「これとは失礼ではないか。そこの若き王よ」
ハクテイ様はニーハイムス様に向かってひと吠えしましたわ。
「うわっ!?」
「ニーハイムス様!」
私はニーハイムス様のお側に寄り添いました。
「ははははは。驚くのも無理が無い。じゃがこの聖獣、まだったったの500歳の若造じゃよ」
リュオン様はそう言って、ハクテイを撫でましたわ。
あら、いいわね……ふかふかしてそう…………。
「カレン」
リュオン様が私を呼んだわ。
「は、はい……」
「王の后に『聖』なるイキモノが必要ならばそなたも持っていけば良い」
「え……」
「ニーハイムスとカレン、新しい伝説の始まりじゃ。アハハハハ!」
こうして、私の元に『聖獣』である白虎の『ハクテイ』がやって来たのです――――
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