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第8章
【55】事件翌日!
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ニーハイムス様に毒矢が放たれたその日の晩は、ニーハイムス様が心配で心配で一睡も出来ませんでしたわ。
ハクテイさんには『今はどうすることも出来ないのだから落ち着け』と言われてしまいましたが、中々そういうわけにもいきません。
私が知らなかっただけで、今までも数々の事件が有ったのでしょうか? 時期王を噂される大公閣下ともなればそういった謀略に巻き込まれていても不思議では有りません。
私の頭の中がどれだけお花畑だったのか……思い知らされましたわ。
※
翌日。ラフーワ魔法学院の校門にて。
いつも通り、子猫姿のハクテイさんと馬車を降りると、ニーハイムス様ことニース先生が校門前に立っていらしたわ。
こんな普通に生活されていて大丈夫なのかしら? いえ、今までも大丈夫だったのかしら?
「おはようございます。カレン」
ニーハイムス様ことニース先生がご挨拶してくださったわ。
「おはようございます、ニース先生」
「どうしました? 目の下にクマが出来ていますが」
「――レディーに伺うことでは有りませんわ、ニース先生!」
私はつい、強気の態度で出てしまいました。
「おっと、それは失礼!」
ニース先生は悪びれない態度で交わしました。他の生徒にも挨拶をしています。
「――……カレン。放課後、執務室に来て授業の準備を手伝ってくれませんかね?」
きっと昨日のお話しなのでしょう。私は『はい』とお返事いたしました。
※
「どうしたのカレンちゃん! そのクマ! 眠れなかったの?」
教室ではヒロさんが私に気遣って声を掛けてくださいましたわ。
「すみません、ヒロさん。昨日、つい面白い本を読んでいたら寝不足になってしまって――」
「カレンちゃん、自分の癒やしの魔法でクマを治すの出来ないの?」
「…………! はっ! それですわヒロさん!」
流石ヒロさんですわ! 天才の発想ですわそれ!
私はコンパクトを見ながら、自分の目元に癒やしの魔法を掛けました。
確かに目元のクマは綺麗に消えましたわ!
「ありがとうございます、ヒロさん。自分で気付きませんでしたわ」
癒やしの魔法、美容にも利用できますのね…………。
「カレンちゃん、読書ならいいけど、何か不安なことが有って眠れなかったりしたら私にも言って欲しいな」
突然、ヒロさんが核心を付いてきましたわ。
「だってカレンちゃん、月の曜日から堂々と寝不足で学院に来るようなヒトじゃないもの」
「ヒロさん…………」
「聞くだけでも、チカラになれるかもしれないから。ね?」
「ありがとうございます…………お気持ちだけでも受け取りますわ」
私は、とても素敵な親友を持ちましたわ!
※
――放課後。ニース先生の執務室にて。
ニーハイムス様と私と、ハクテイさんと。
「今朝はすみませんでした、ニーハイムス様!」
私は真っ先にニーハイムス様に謝りました。
「何がいけなかったのかな? むしろ俺が貴女をレディーとして扱わなかったことが良くありませんでした。すみません」
お互いに頭を下げてしまいましたわ。
「…………」
「…………」
これでは埒が明きません。
「あのっ!」
私は頭を上げてニーハイムス様を正面から見つめます。
「……おや、クマは治ったようですね」
「それは治癒の魔法でささっと治しました」
「なるほど。魔法の簡単な応用ですね」
ニーハイムス様はとりあえず、私に応接ソファに座るよう促しましたわ。
私もお言葉に甘えてそちらに座ります。
「いつもの紅茶でよろしいですか?」
「はい」
ニーハイムス様は美味しい紅茶を淹れてくださいました。
「にゃー」
ハクテイさんも何か言いたげでしたわ。
ニーハイムス様はハクテイさんに告げました。
「ハクテイさん、今なら元の姿に戻ってくださっても大丈夫ですよ」
私の肩から飛び降りたハクテイさんは元の大きな白虎の姿に戻っていました。
「ふむ。して、昨日の毒矢はどうなったニーハイムス」
ハクテイさんはいきなり話題を要点に持っていきましたわ。
「……はい。まだ調査中ですが、あの矢は魔法を使って放たれた物だと言うこと、王領地にて行われた犯行ゆえ、犯人は王族関係者が濃厚なこと、そして同時刻ごろ、俺の祖父……元国王のシェルトン様も何者かに狙われたという情報を得ました」
「まあ……怖いですわね……ニーハイムス様もシェルトン様もご無事で良かったです」
「シェルトン様は剛健な方なので心配は無いにしろ。もし、俺でなく、毒矢がカレンに当たっていたかと思うと……ゾッとします。許せる事態ではありません」
ニーハイムス様は両手を組んで考えているようでしたわ。
「カレンを守るのが我の努めだ。そこは安心せよ」
ハクテイさんがニーハイムス様に仰っしゃります。
「……ありがとうございます。しかし、俺が護れなかったのは不甲斐ないです」
「狙われたのはニーハイムス様ですのよ! もっとご自分を大切になさって下さい!」
私は思わず声を荒げてしまいました。
「――……済まない。カレン。俺の私情に貴女を巻き込むようなことは有ってはならないのだが」
「私はニーハイムス様の『婚約者』ですわ! いつでも巻き込んでくださいまし! 覚悟は出来ております!」
「カレン……」
「我もカレンに付き添う者として、そなたも護ろう。ニーハイムス。カレンの笑顔の為にはそなたが必要不可欠だからな」
私はハクテイさんの背を撫でながら感謝の意を述べましたわ。
「ハクテイさん……ありがとうございます」
「しかしこれで暫くの間、カレンとはデート出来なくなってしまいましたね」
「…………! そう言われればそうですわね!」
恐らく、ニーハイムス様のお命を狙っている『賊』はニーハイムス様のプライベートを狙い襲撃してくるでしょう。その時に私が居れば、足手まといになってしまう可能性さえ有ります。
「なるべく早く解決して、またカレンと遊びたいものです」
ニーハイムス様は肩をすくめてやれやれと言ったポーズを取りましたわ。
私は考えながら、ニーハイムス様に伝えましたわ。
「次期国王の有力候補で有るニーハイムス様と、元国王である祖父のシェルトン様が狙われたというこの事件、点と点は意外と早く繋がりそうですが――」
「そうですね。主犯のだいたいの目星は付いています。が、王族の内輪事なだけに、不用意に動けません。まずは証拠を集めないと」
「証拠ですか――」
私がそう言うと、ハクテイさんが続けて発言します。
「そう言えば、我が捕まえた毒矢はどうしたのだ?」
そしてニーハイムス様が。
「勿論、大切に保管と調査をしています。魔力の痕跡を辿るだけでも大分犯人に近付けるでしょうからね――」
このまま、心からの平穏な日が戻る時は来るのでしょうか?
ハクテイさんには『今はどうすることも出来ないのだから落ち着け』と言われてしまいましたが、中々そういうわけにもいきません。
私が知らなかっただけで、今までも数々の事件が有ったのでしょうか? 時期王を噂される大公閣下ともなればそういった謀略に巻き込まれていても不思議では有りません。
私の頭の中がどれだけお花畑だったのか……思い知らされましたわ。
※
翌日。ラフーワ魔法学院の校門にて。
いつも通り、子猫姿のハクテイさんと馬車を降りると、ニーハイムス様ことニース先生が校門前に立っていらしたわ。
こんな普通に生活されていて大丈夫なのかしら? いえ、今までも大丈夫だったのかしら?
「おはようございます。カレン」
ニーハイムス様ことニース先生がご挨拶してくださったわ。
「おはようございます、ニース先生」
「どうしました? 目の下にクマが出来ていますが」
「――レディーに伺うことでは有りませんわ、ニース先生!」
私はつい、強気の態度で出てしまいました。
「おっと、それは失礼!」
ニース先生は悪びれない態度で交わしました。他の生徒にも挨拶をしています。
「――……カレン。放課後、執務室に来て授業の準備を手伝ってくれませんかね?」
きっと昨日のお話しなのでしょう。私は『はい』とお返事いたしました。
※
「どうしたのカレンちゃん! そのクマ! 眠れなかったの?」
教室ではヒロさんが私に気遣って声を掛けてくださいましたわ。
「すみません、ヒロさん。昨日、つい面白い本を読んでいたら寝不足になってしまって――」
「カレンちゃん、自分の癒やしの魔法でクマを治すの出来ないの?」
「…………! はっ! それですわヒロさん!」
流石ヒロさんですわ! 天才の発想ですわそれ!
私はコンパクトを見ながら、自分の目元に癒やしの魔法を掛けました。
確かに目元のクマは綺麗に消えましたわ!
「ありがとうございます、ヒロさん。自分で気付きませんでしたわ」
癒やしの魔法、美容にも利用できますのね…………。
「カレンちゃん、読書ならいいけど、何か不安なことが有って眠れなかったりしたら私にも言って欲しいな」
突然、ヒロさんが核心を付いてきましたわ。
「だってカレンちゃん、月の曜日から堂々と寝不足で学院に来るようなヒトじゃないもの」
「ヒロさん…………」
「聞くだけでも、チカラになれるかもしれないから。ね?」
「ありがとうございます…………お気持ちだけでも受け取りますわ」
私は、とても素敵な親友を持ちましたわ!
※
――放課後。ニース先生の執務室にて。
ニーハイムス様と私と、ハクテイさんと。
「今朝はすみませんでした、ニーハイムス様!」
私は真っ先にニーハイムス様に謝りました。
「何がいけなかったのかな? むしろ俺が貴女をレディーとして扱わなかったことが良くありませんでした。すみません」
お互いに頭を下げてしまいましたわ。
「…………」
「…………」
これでは埒が明きません。
「あのっ!」
私は頭を上げてニーハイムス様を正面から見つめます。
「……おや、クマは治ったようですね」
「それは治癒の魔法でささっと治しました」
「なるほど。魔法の簡単な応用ですね」
ニーハイムス様はとりあえず、私に応接ソファに座るよう促しましたわ。
私もお言葉に甘えてそちらに座ります。
「いつもの紅茶でよろしいですか?」
「はい」
ニーハイムス様は美味しい紅茶を淹れてくださいました。
「にゃー」
ハクテイさんも何か言いたげでしたわ。
ニーハイムス様はハクテイさんに告げました。
「ハクテイさん、今なら元の姿に戻ってくださっても大丈夫ですよ」
私の肩から飛び降りたハクテイさんは元の大きな白虎の姿に戻っていました。
「ふむ。して、昨日の毒矢はどうなったニーハイムス」
ハクテイさんはいきなり話題を要点に持っていきましたわ。
「……はい。まだ調査中ですが、あの矢は魔法を使って放たれた物だと言うこと、王領地にて行われた犯行ゆえ、犯人は王族関係者が濃厚なこと、そして同時刻ごろ、俺の祖父……元国王のシェルトン様も何者かに狙われたという情報を得ました」
「まあ……怖いですわね……ニーハイムス様もシェルトン様もご無事で良かったです」
「シェルトン様は剛健な方なので心配は無いにしろ。もし、俺でなく、毒矢がカレンに当たっていたかと思うと……ゾッとします。許せる事態ではありません」
ニーハイムス様は両手を組んで考えているようでしたわ。
「カレンを守るのが我の努めだ。そこは安心せよ」
ハクテイさんがニーハイムス様に仰っしゃります。
「……ありがとうございます。しかし、俺が護れなかったのは不甲斐ないです」
「狙われたのはニーハイムス様ですのよ! もっとご自分を大切になさって下さい!」
私は思わず声を荒げてしまいました。
「――……済まない。カレン。俺の私情に貴女を巻き込むようなことは有ってはならないのだが」
「私はニーハイムス様の『婚約者』ですわ! いつでも巻き込んでくださいまし! 覚悟は出来ております!」
「カレン……」
「我もカレンに付き添う者として、そなたも護ろう。ニーハイムス。カレンの笑顔の為にはそなたが必要不可欠だからな」
私はハクテイさんの背を撫でながら感謝の意を述べましたわ。
「ハクテイさん……ありがとうございます」
「しかしこれで暫くの間、カレンとはデート出来なくなってしまいましたね」
「…………! そう言われればそうですわね!」
恐らく、ニーハイムス様のお命を狙っている『賊』はニーハイムス様のプライベートを狙い襲撃してくるでしょう。その時に私が居れば、足手まといになってしまう可能性さえ有ります。
「なるべく早く解決して、またカレンと遊びたいものです」
ニーハイムス様は肩をすくめてやれやれと言ったポーズを取りましたわ。
私は考えながら、ニーハイムス様に伝えましたわ。
「次期国王の有力候補で有るニーハイムス様と、元国王である祖父のシェルトン様が狙われたというこの事件、点と点は意外と早く繋がりそうですが――」
「そうですね。主犯のだいたいの目星は付いています。が、王族の内輪事なだけに、不用意に動けません。まずは証拠を集めないと」
「証拠ですか――」
私がそう言うと、ハクテイさんが続けて発言します。
「そう言えば、我が捕まえた毒矢はどうしたのだ?」
そしてニーハイムス様が。
「勿論、大切に保管と調査をしています。魔力の痕跡を辿るだけでも大分犯人に近付けるでしょうからね――」
このまま、心からの平穏な日が戻る時は来るのでしょうか?
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