なぜ吟遊詩人は殺したか

一条りん

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第二章 仲間とともに

新しい案

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「なあ、子ども賢者。もっと手っ取り早く確実にアクセスできるお宝はねえのか?」

 子ども賢者とギザに揶揄されても、ココは眉ひとつ動かさず、

「それなら、トラウケル鉱山でしょうか」

「ダイヤモンドの産地ね」

 リーナが言うと、ギザが目をぱちくりさせて、

「お前、さっきから随分詳しいじゃねえか」

「盗賊だもの、宝探しに関して一通りの知識はあるわよ」

 そう告げたあと、リーナはにっと笑って、「それに、女っていうのは宝石に目がないものなのよ。主要な産地くらいは知ってるわ」

「でも、そんな有名な産地なら、めぼしいダイヤモンドはもう採り尽くされちゃってるんじゃ……?」

 テオが訊ねると、リーナは浅く頷いて、

「確かに、各国の大企業がすでに大量の資金を投じて採掘を行っているわ」

「じゃあ、もうお宝はないんじゃないか?」

「だ、か、ら、そういう企業が採掘して製錬したダイヤモンドを、私たちが頂くのよ」

 リーナはそう言って、男なら誰もが逆らえなくなるような蠱惑的な微笑を浮かべた。

 ココにも異存はないらしく、ギザはもう乗り気になっている。

 けれど、テオは少し躊躇した。

「それって、要は泥棒ってことだよね。俺、泥棒はちょっと……」

 テオ自身、詐欺みたいな手口に引っ掛かって大借金を負う羽目になったのだ。犯罪じみた手段を取るのは気が進まなかった。
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