24 / 50
第二章 仲間とともに
リーナの話 3
しおりを挟む
リーナの話が終わると、ギザは不意に声を落として、
「壮絶な経験をしたんだな」
と、しんみりと言った。
「面白半分に聞いて悪かったよ」
「何よ、あんたらしくないわね」
リーナはいつものように快活に笑い飛ばすと、焦げ目のついたマシュマロを口に運んだ。
「ギザはどうして白魔術師になったの?」
テオが訊くと、ギザはツンツン頭をぼりぼり掻いて、
「冒険はしたかったけど、戦いの最前線には立ちたくなかったから」
「何、それ」
リーナが噴き出すと、ギザは俯いて、
「だって、剣士はモンスターと至近距離で戦わなきゃならないし、攻撃魔法の使える黒魔術師は真っ先に狙われるから……」
「男性の白魔術師なんて珍しいと思ったら、そういうわけだったのね」
リーナは呆れたように笑った。ギザはむきになって、
「悪いかよ」
「別に、悪いなんて言ってないでしょ」
「どうせ、俺は意気地なしだよ」
そう言って、ギザはすねたようにそっぽを向いてしまった。
もしかしたら、男でありながら白魔術師という進路を選んだことで、ギザは周囲からからかわれたり嘲笑されたりしてきたのかもしれない。テオはふっとそう思ったが、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。
一方、リーナはギザの横顔を苦笑しながら眺めていたが、
「意気地なしなんて思うわけないでしょ。白魔術師は大事な後方支援部隊なんだから」
「……」ギザがちらりとリーナを見た。
「後方支援ってバカにされがちだけど、私、ギザが――白魔術師がいなかったら安心して戦えないもん。白魔術師を意気地なしなんて言う人は、サポートの重要性を分かってないのよ」
「そうかな」
「当たり前でしょ。私はこのパーティに、ギザがいてくれて良かったって思ってるよ」
と言ったあと、リーナは照れたように唇を結んで下を向いた。ギザがはっとしたような顔になり、「お、おう」と言いながら同様に視線を落とした。
ふたりとも心なしか頬が上気して見えるのは、焚火の勢いが強くなり過ぎたためだろうか。
「確かに、ギルドに登録されたパーティの中でも、白魔術師を加えているパーティの割合は九十六パーセント以上……」
ココが何か言おうとしたが、テオはその脇腹をつついて制止した。すると後にはパチパチと火の粉の爆ぜる音だけが残った。
リーナとギザは目を合わせようとしなかった。だが、互いの存在を全身で意識し合っているのがその表情から察せられた。
テオは何となく自分まで甘酸っぱい気分に染まった。無粋な口を挟めばこのガラス細工のように繊細な雰囲気が壊れてしまいそうで、何も言わずに空を見上げた。
頭上には満天の星が輝いている。明日の天気を予感させるような、いい夜だった。
「壮絶な経験をしたんだな」
と、しんみりと言った。
「面白半分に聞いて悪かったよ」
「何よ、あんたらしくないわね」
リーナはいつものように快活に笑い飛ばすと、焦げ目のついたマシュマロを口に運んだ。
「ギザはどうして白魔術師になったの?」
テオが訊くと、ギザはツンツン頭をぼりぼり掻いて、
「冒険はしたかったけど、戦いの最前線には立ちたくなかったから」
「何、それ」
リーナが噴き出すと、ギザは俯いて、
「だって、剣士はモンスターと至近距離で戦わなきゃならないし、攻撃魔法の使える黒魔術師は真っ先に狙われるから……」
「男性の白魔術師なんて珍しいと思ったら、そういうわけだったのね」
リーナは呆れたように笑った。ギザはむきになって、
「悪いかよ」
「別に、悪いなんて言ってないでしょ」
「どうせ、俺は意気地なしだよ」
そう言って、ギザはすねたようにそっぽを向いてしまった。
もしかしたら、男でありながら白魔術師という進路を選んだことで、ギザは周囲からからかわれたり嘲笑されたりしてきたのかもしれない。テオはふっとそう思ったが、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。
一方、リーナはギザの横顔を苦笑しながら眺めていたが、
「意気地なしなんて思うわけないでしょ。白魔術師は大事な後方支援部隊なんだから」
「……」ギザがちらりとリーナを見た。
「後方支援ってバカにされがちだけど、私、ギザが――白魔術師がいなかったら安心して戦えないもん。白魔術師を意気地なしなんて言う人は、サポートの重要性を分かってないのよ」
「そうかな」
「当たり前でしょ。私はこのパーティに、ギザがいてくれて良かったって思ってるよ」
と言ったあと、リーナは照れたように唇を結んで下を向いた。ギザがはっとしたような顔になり、「お、おう」と言いながら同様に視線を落とした。
ふたりとも心なしか頬が上気して見えるのは、焚火の勢いが強くなり過ぎたためだろうか。
「確かに、ギルドに登録されたパーティの中でも、白魔術師を加えているパーティの割合は九十六パーセント以上……」
ココが何か言おうとしたが、テオはその脇腹をつついて制止した。すると後にはパチパチと火の粉の爆ぜる音だけが残った。
リーナとギザは目を合わせようとしなかった。だが、互いの存在を全身で意識し合っているのがその表情から察せられた。
テオは何となく自分まで甘酸っぱい気分に染まった。無粋な口を挟めばこのガラス細工のように繊細な雰囲気が壊れてしまいそうで、何も言わずに空を見上げた。
頭上には満天の星が輝いている。明日の天気を予感させるような、いい夜だった。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる