なぜ吟遊詩人は殺したか

一条りん

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第二章 仲間とともに

リーナの話 3

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 リーナの話が終わると、ギザは不意に声を落として、

「壮絶な経験をしたんだな」

 と、しんみりと言った。

「面白半分に聞いて悪かったよ」

「何よ、あんたらしくないわね」

 リーナはいつものように快活に笑い飛ばすと、焦げ目のついたマシュマロを口に運んだ。

「ギザはどうして白魔術師になったの?」

 テオが訊くと、ギザはツンツン頭をぼりぼり掻いて、

「冒険はしたかったけど、戦いの最前線には立ちたくなかったから」

「何、それ」

 リーナが噴き出すと、ギザは俯いて、

「だって、剣士はモンスターと至近距離で戦わなきゃならないし、攻撃魔法の使える黒魔術師は真っ先に狙われるから……」

「男性の白魔術師なんて珍しいと思ったら、そういうわけだったのね」

 リーナは呆れたように笑った。ギザはむきになって、

「悪いかよ」

「別に、悪いなんて言ってないでしょ」

「どうせ、俺は意気地なしだよ」

 そう言って、ギザはすねたようにそっぽを向いてしまった。

 もしかしたら、男でありながら白魔術師という進路を選んだことで、ギザは周囲からからかわれたり嘲笑されたりしてきたのかもしれない。テオはふっとそう思ったが、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。

 一方、リーナはギザの横顔を苦笑しながら眺めていたが、

「意気地なしなんて思うわけないでしょ。白魔術師は大事な後方支援部隊なんだから」

「……」ギザがちらりとリーナを見た。

「後方支援ってバカにされがちだけど、私、ギザが――白魔術師がいなかったら安心して戦えないもん。白魔術師を意気地なしなんて言う人は、サポートの重要性を分かってないのよ」

「そうかな」

「当たり前でしょ。私はこのパーティに、ギザがいてくれて良かったって思ってるよ」

 と言ったあと、リーナは照れたように唇を結んで下を向いた。ギザがはっとしたような顔になり、「お、おう」と言いながら同様に視線を落とした。

 ふたりとも心なしか頬が上気して見えるのは、焚火の勢いが強くなり過ぎたためだろうか。

「確かに、ギルドに登録されたパーティの中でも、白魔術師を加えているパーティの割合は九十六パーセント以上……」

 ココが何か言おうとしたが、テオはその脇腹をつついて制止した。すると後にはパチパチと火の粉の爆ぜる音だけが残った。

 リーナとギザは目を合わせようとしなかった。だが、互いの存在を全身で意識し合っているのがその表情から察せられた。

 テオは何となく自分まで甘酸っぱい気分に染まった。無粋な口を挟めばこのガラス細工のように繊細な雰囲気が壊れてしまいそうで、何も言わずに空を見上げた。

 頭上には満天の星が輝いている。明日の天気を予感させるような、いい夜だった。
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