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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第276話 お姫様の件に触れちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む霧の一件に関して事情聴取を受けているわたしは、調査隊の隊長さんであるセシーナさんからの質問に正直に回答していった。
だけど、ついにこの質問が来てしまった。
霧の発生原因だ。
当然ながらこれが聞かれるであろうことは予想していたけど、この回答がなかなか難しい。
説明が複雑で言語化するのが困難というわけではなく、単純に話したところで信じてもらえるのかという懸念だ。
そしてその懸念は見事に的中してしまったらしい。
「その……祠、というのは何なのでしょうか?」
セシーナさんがスッと目を細めてわたしに問いかける。
より一層、圧が増したような気がした。
思わずその圧に呑まれそうになるけれど、ぐっと踏ん張ってわたしも真っ直ぐにセシーナさんと顔を合わせる。
「言葉通りですよ。よくあるような、古びた石でできた祠です。そんなに大きくはない、小ぢんまりとした祠でした」
「ふむ、そうですか。それで、その祠とやらがどのように今回の霧の騒動に関与していると?」
「えーと、信じてもらえるか分からないんですけど……」
「構いません。ありのままのお言葉をお聞かせください」
セシーナさんは一切表情を変えることなく断言した。
その言葉を信用し、わたしは数秒の間を取ったあと、ぽつぽつと語り出す。
「実は、わたしもよく原理は分かっていないんです。ですけど、その謎の祠に触れた瞬間、真っ白な光に包まれて意識を失ってしまったんです」
「っ。意識を、ですか」
「はい。そうして目を覚ましたら、そこはさっきまでいた森の中ではありませんでした。というか、どこなのかも分からない、今まで見たことも聞いたこともないような謎の異空間だったんです」
セシーナさんが片方の眉をかすかに曲げるけど、わたしは構わず続ける。
「その異空間はわたし以外に何もない無の空間でした。最初はその訳の分からない空間で右往左往していたんですけど、しばらくして誰かに声をかけられたんです」
「その者はどのような人間だったのですか?」
「人間じゃありませんでした。わたしに声をかけてきたのは、ガイコツの……多分、男です。甲冑のような鎧を全身に装着していて、剣も携えている騎士でした。いきなりそんな化物が現れるとは思ってなかったので、ちょっとわたしの記憶も曖昧でしたけど……」
「ガイコツの騎士……ということは、それはアンデッド系の魔物だったということですか?」
「無理やり既存の常識に当てはめるならそうなるんじゃないかと。ただ、わたしとしてはあまり魔物というような感じはしませんでしたけど。どちらかと言うと幽霊……あの祠のエリアを守護しているような地縛霊みたいな感じがしっくりきますね」
ボーンさんとは普通に会話もできたし、途中から何故か戦闘に巻き込まれはしたものの、しっかりとした人としての意志のようなものを感じた。
人外であるのは確かだろうけど、だからといって魔物にまで成り下がったのかと言うとほんのちょっぴり疑問符が沸き出る。
「そこでわたしはそのガイコツ騎士と話をして、そのガイコツ騎士にボーンさんっていう名前をつけて呼んでいました」
「ぼ、ボーンさん、ですか」
セシーナさんが少し困惑した顔で反芻する。
部屋の端にいる記録係の人も一瞬筆を止めたあと、またさらさらと速記に戻った。
「それで、具体的にそのボーンさんとはどのようなお話をされたのでしょうか? 何か霧の原因になり得るような情報を漏らしていませんでしたか?」
セシーナさんの食い入るような質問に、わたしは一度目を閉じてボーンさんとの会話を脳内で再生する。
そして、恐らくこの霧の件に関して核心に触れていたんじゃないかという情報を思い出し、そっと口を開いた。
「ボーンさんは、騎士のような振る舞いをしていました。そしてわたしが招かれたその異空間というのは、ある人物の精神世界だと言ってたんです」
「ふむ、その人物というのは?」
わたしは溜めるように間を置き、セシーナさんの目を見て答える。
「ボーンさんが忠誠を誓って仕えている主――――『お姫様』です」
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