お風呂場の声

エヌ·ケイ

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お風呂場の声

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誰もいないと思っている時に、傍で人の話し声がしたらビクッとしませんか?私はします。

あれは夏の暑い日のことでした。当時は家にクーラーがなく寝るときは窓を開けて風をいれていた。
それでも暑く寝苦しかった思い出があります。
仕事から帰ってきて体はクタクタで、ちょっと横になるつもりが、いつの間にか眠りに落ちていた。目が覚めると寝汗をかいて体がベタついている。
もう夜中の1時過ぎ。
スッキリするためにシャワーを浴びることにした。
蛇口をひねりシャワーを頭から浴びると、凄く気持ちが良かった。しばらくそうしていた。すると水の音に紛れ人の話し声が聞こえた気がした。
こんな時間に誰だろう?
窓をあけ外を確認したが誰もいない。
そもそもいるはずがない。
窓の外は隣の家との間で1メートルほどの幅しかない狭い通路だ。普段から人などまったく通らない場所である。通るとしてもプロパンガスの業者ぐらいだがこんな時間にありえない。
気のせいか。そうだよな。いるはずない。
そう思いシャンプーで髪を洗い出した。
「綺麗にしましょうね。うふふふふ」
「え、」
今度はハッキリ聞こえた。女性の声だ。しかも甲高い声で普通の精神状態ではない。
しかも自分に向けて話しかけている。恐怖に駆られ急いでシャンプーを洗い流すが、目に入ってしまい良くみえない。
片目のまますぐ外を確認する。
が誰もいない。

やっぱり気のせいだった。そうに違いない。
こんな時間に人がいるはずがない。疲れて幻聴が聞こえてきてるのかも?
そう思い込みたかった。
とにかく落ち着こう。
湯船に浸かって落ち着くことにした。

肩までしっかりぬるま湯に浸かった。少し落ち着き考える余裕ができてきた。
声は確かに聞こえてきている。でも姿はみえない。
一体誰なんだろう?いたとしたら一体何者なのだろう?
この時私は頭の中で考えていたことに対する返答がかえってくるとは思ってもいなかった。
「私ミニーよ。宜しくね」

「わっ!!」
慌てて風呂場を飛び出した!!
声はずっと外から聞こえてきてるのだと思っていた。勘違いだった。声はお風呂場の中で反響していた。声の主はずっと傍にいたのだ。
目に見えない何かがずっと後ろにいる。
恐怖心に捉えられじっとしていられなかった。タオルをとり震える手で体を拭くと、急いで服をきがえようとしたが上手くいかない。転びそうになりながら自分の部屋に駆け込むと、頭から布団をかぶって恐怖に震えた。
歯がガチガチと鳴る。とめようとしても震えが酷く止まらない。今まで生きてきてこれ以上の恐怖を感じたことがなかった。電気やテレビも全部つけガタガタと震えた。
そして疲れはてた私はいつの間にか深い眠りについていた。
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