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その他
独りよがりの自殺
しおりを挟む就職して6ヶ月。
職場近くのアパートに引っ越した。
家賃が安いのが気になり、不動産屋に聞いたら、その男は口の軽い男で理由を教えてくれた。
「実はですね…」そう言い小さな声で内緒話を始める。
「この物件では前に自殺者が出たのです…」そう不動産屋は教えてくれた。
「入居者が次々と引っ越していくのです。何か異常などはないですか?」と聞いてきた。
「何もないですね」引っ越してから、1週間経っていたが何事もなかった。
就寝時間になると部屋の隅に人の気配を感じる。
気の所為かと思ったが、昼間の不動産屋の話を思い出す。
まさかな。と思ったが部屋の隅の人影は段々と色濃くなっていく。それは人の形をしていた。
初めからそれはいて、今まで気が付かなかっただけなのかも知れない。目蓋をギュッと閉じる。静かな部屋に足音が聞こえる。ミシッ…。ミシッ…。
それはゆっくりと近づいてきた。
耳元に吐息がかかる。
「やっと気づいた」それは耳打ちした。
それは毎晩現れた。部屋の隅の黒い影は段々と輪郭をおびていく。手は指の数がわかるようになり、シルエットはすらっとした体型になっていった。それは女性の姿をしていた。髪の長い女の幽霊である。日毎に姿がハッキリしてくる。
それとは裏腹に男は段々と痩せ細っていった。
今日も幽霊の足音は近づいてくる。
冷たい指が頬を撫でる。
自分はこのまま死ぬんだなと覚悟した。
男はこの一ヶ月で会社を首になり、友人に金を騙し取られ、貯金も底をついていた。未払いの電気水道もそのうち止められるだろう。逃げようと思えば逃げれたが。
男は自分で死ぬ勇気すらないし、動く気力さえない。
恐らくこれが最後の夜である。最後ぐらい顔をみてやろうと目蓋をあける。
吐息が耳にかかる。
「ちゃんとご飯食べないと駄目だよ」女は言った。
自殺すら出来ない男は絶望で涙を流した。
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