ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火

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新作

踏切の地縛霊

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「カンカンカン」
けたたましく線路の警報機がなる。
轟音をたてながら横浜線の電車が通り過ぎ、遮断器があがる。みんな一斉に線路を渡る。
線路の向こう側には男の人が立っている。
スーツを着たサラリーマン風の男だ。
男は全身から血を流し、俯いている。
その男に気づくことなく、みんなすれ違う。
その横を私も通り過ぎる。
男は私にしか見えていない。
男は既に死んでいて幽霊なのだ。
電車に轢かれて死んだ地縛霊。
男は通り過ぎる人々の顔を覗き込む。
私はそれを見えていないふりをする。


私は子供の頃から幽霊が見えていた。
そして、それだと気づかず過ごしていた。
「あそこに怪我してる人がいるよ」
私が指さすところには誰もいない。
「ほんとだよ。ほんとにいるんだよ」
私は嘘つき呼ばわりされて、いじめられた。
両親すらも私のことを気味悪がっていた。
そんな私に優しくしてくれるのはお婆ちゃんだけだった。
お婆ちゃんだけが私の言う事を信じてくれた。
そして、お婆ちゃんにも幽霊は見えていた。
「仏壇の引き出しの3番目の引き出しにお守りがある。それを持ち歩きなさい。守ってくれるからね」
お婆ちゃんに言われ、引き出しをあけると、中にお守りがある。お守りには長い紐がついていて、私はそれを首からぶら下げた。
何気なく顔を上げたときに、仏壇に飾られている遺影をみた。そこにはお婆ちゃんが写っていた。
両親が気味悪がるわけだ。
私は死んだお婆ちゃんと会話していたのである。


「あれ?水瀬じゃね?何だよお前も同じ高校だったのかよ」
小学校の時のクラスメイトだ。しかも不良、女と一緒にいる。
知り合いに会いたくないので、わざわざ遠くの学校にしたのに、最悪だ。
「何?知り合い?」目つきの悪い女が私を値踏みする。
「どこ行くんだよ」
無視して横を通り過ぎようとする私の足を引っ掛ける。
体はバランスを崩し前のめりになる。
その拍子に御守りが首から外れて飛んでいく。
転んだ私を見下ろしながら、女は笑う。
「これからも宜しくな」
それだけ言うと二人は笑いながら去っていった。

「クソぉ」悔しい気持ちを抑えながら、上体を起こそうとする。
起き上がろうとすると、目の前に血だらけのサラリーマンの顔があった。
完全に意表をつかれ、私は思わず反応してしまった。

「お前…見えているな」

背中に何か冷たいものが入り込んでくる。
内部から冷たいものが全身に広がっていく。
背中から体内に冷たい水を入れられているような感覚だ。
う、動かない。
自分の意思で、体を思うように動かすことが出来ない。
ユラリと体が起き上がった。
私の体は私の意思とは関係なく動き出す。
足が一歩、また一歩前に進む。
「カンカンカン」
信号機が鳴る。
それでも止まらず足は勝手に前に進む。
これから起きることを想像してゾッとした。
「プァン」
電車の警笛の音と共に電車が近づいてくる。
「ガタンゴトン」「ガタンゴトン」
目の前を電車が通り過ぎる。
冷や汗がどっとでた。
遮断器があがり、線路を渡る。
私の体は一体どこに向かっているのだろうか?
坂道を登り、人気の少ない道を進む。
雑木林を抜けるとお寺にでた。

お墓の前で足が止まる。
高橋家の墓。
「やっとこれた…」
口がひとりでに喋る。
私の言葉ではない、霊の言葉だ。
私の顔は満面の笑みを浮かべていた。
体から力が抜け、人の形をした何かが、お墓の中に吸い込まれ煙のように消えていく。
体の自由を取り戻し、私はその場に倒れそうになった。

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