3 / 41
新作
踏切の地縛霊
しおりを挟む「カンカンカン」
けたたましく線路の警報機がなる。
轟音をたてながら横浜線の電車が通り過ぎ、遮断器があがる。みんな一斉に線路を渡る。
線路の向こう側には男の人が立っている。
スーツを着たサラリーマン風の男だ。
男は全身から血を流し、俯いている。
その男に気づくことなく、みんなすれ違う。
その横を私も通り過ぎる。
男は私にしか見えていない。
男は既に死んでいて幽霊なのだ。
電車に轢かれて死んだ地縛霊。
男は通り過ぎる人々の顔を覗き込む。
私はそれを見えていないふりをする。
私は子供の頃から幽霊が見えていた。
そして、それだと気づかず過ごしていた。
「あそこに怪我してる人がいるよ」
私が指さすところには誰もいない。
「ほんとだよ。ほんとにいるんだよ」
私は嘘つき呼ばわりされて、いじめられた。
両親すらも私のことを気味悪がっていた。
そんな私に優しくしてくれるのはお婆ちゃんだけだった。
お婆ちゃんだけが私の言う事を信じてくれた。
そして、お婆ちゃんにも幽霊は見えていた。
「仏壇の引き出しの3番目の引き出しにお守りがある。それを持ち歩きなさい。守ってくれるからね」
お婆ちゃんに言われ、引き出しをあけると、中にお守りがある。お守りには長い紐がついていて、私はそれを首からぶら下げた。
何気なく顔を上げたときに、仏壇に飾られている遺影をみた。そこにはお婆ちゃんが写っていた。
両親が気味悪がるわけだ。
私は死んだお婆ちゃんと会話していたのである。
「あれ?水瀬じゃね?何だよお前も同じ高校だったのかよ」
小学校の時のクラスメイトだ。しかも不良、女と一緒にいる。
知り合いに会いたくないので、わざわざ遠くの学校にしたのに、最悪だ。
「何?知り合い?」目つきの悪い女が私を値踏みする。
「どこ行くんだよ」
無視して横を通り過ぎようとする私の足を引っ掛ける。
体はバランスを崩し前のめりになる。
その拍子に御守りが首から外れて飛んでいく。
転んだ私を見下ろしながら、女は笑う。
「これからも宜しくな」
それだけ言うと二人は笑いながら去っていった。
「クソぉ」悔しい気持ちを抑えながら、上体を起こそうとする。
起き上がろうとすると、目の前に血だらけのサラリーマンの顔があった。
完全に意表をつかれ、私は思わず反応してしまった。
「お前…見えているな」
背中に何か冷たいものが入り込んでくる。
内部から冷たいものが全身に広がっていく。
背中から体内に冷たい水を入れられているような感覚だ。
う、動かない。
自分の意思で、体を思うように動かすことが出来ない。
ユラリと体が起き上がった。
私の体は私の意思とは関係なく動き出す。
足が一歩、また一歩前に進む。
「カンカンカン」
信号機が鳴る。
それでも止まらず足は勝手に前に進む。
これから起きることを想像してゾッとした。
「プァン」
電車の警笛の音と共に電車が近づいてくる。
「ガタンゴトン」「ガタンゴトン」
目の前を電車が通り過ぎる。
冷や汗がどっとでた。
遮断器があがり、線路を渡る。
私の体は一体どこに向かっているのだろうか?
坂道を登り、人気の少ない道を進む。
雑木林を抜けるとお寺にでた。
お墓の前で足が止まる。
高橋家の墓。
「やっとこれた…」
口がひとりでに喋る。
私の言葉ではない、霊の言葉だ。
私の顔は満面の笑みを浮かべていた。
体から力が抜け、人の形をした何かが、お墓の中に吸い込まれ煙のように消えていく。
体の自由を取り戻し、私はその場に倒れそうになった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
静かに壊れていく日常
井浦
ホラー
──違和感から始まる十二の恐怖──
いつも通りの朝。
いつも通りの夜。
けれど、ほんの少しだけ、何かがおかしい。
鳴るはずのないインターホン。
いつもと違う帰り道。
知らない誰かの声。
そんな「違和感」に気づいたとき、もう“元の日常”には戻れない。
現実と幻想の境界が曖昧になる、全十二話の短編集。
一話完結で読める、静かな恐怖をあなたへ。
※表紙は生成AIで作成しております。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
