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新作
訪問者
しおりを挟む目が覚めて窓をみると、薄いカーテン越しに人影が立っているのがみえる。
昨日ついてきた女性の霊だ。
人影はじっと窓の外に立っている。
それをみて、今日は学校に行くのはやめることにした。
学校に風邪で休むことを連絡すると、一眠りすることにした。
どれくらい時間がたったのだろう?
「ピンポーン」と玄関チャイムの音が鳴り、目を覚ます。
眠い目を擦り、玄関の覗き穴から外をみる。
ドアの外には女性が立っていた。
クラスメイトの高梨さんだ。
玄関ドアを開けて、挨拶する。
コホン、コホンと咳をする私をみて。
「やあ、元気そうだね」と彼女は笑った。
彼女は風邪(仮病)をひいた私を心配し、見舞いにきてくれたようだ。
彼女を部屋に招き入れると、お茶とお菓子を出す。
「それで何で仮病までして学校を休んだんだい?」
答えに少し迷う。
実は幽霊が見える。今も窓の外にいて、私のことを狙っています。と言いたいところだが。
本当のことを言ったところで、信じてくれるどころか異常者扱いするだろう。人は自分と違ったものを嫌う。
私にとっての真実と見えない人達の事実は違うのだ。
今までそうだったし、これからもそうだろう。
「寝坊したんですよ。そしたら学校行くのが面倒になって」
当たり障りない言い訳をする。
「窓の外の女性はお知り合い?」
驚いて、お茶を飲む動きがとまる。
「反応が素直だなー」と彼女は笑う。
「見えるんですか…?」
「見える時と見えない時がある。私は霊がみえるが、その日の体調に左右されやすいんだ」
初めて霊を見える生きた人に出会えた。
「実は昨日もみていた。線路のところで、霊に取り憑かれていたでしょ。そのあとお墓の前まで歩いていって…。それが原因で体調を崩したと思ってたんだけど、もしかして…」
見えているなら、嘘をつく必要がない。
「本当はあの女性の霊につきまとわれて、学校を休んだんです。ずっと、家のまわりに張り付いているし、これからどうすればいいのか…」
「ねぇ、それならさ…」
何かよからぬことを思いついたらしい。
高梨さんはイタズラっぽく笑う。
「霊を体にとりつかせて成仏させる?」
「そそ」彼女は面白そうに笑う。
「霊も未練がなくなれば成仏すると思うんだ。線路の幽霊のように」
「そんなの絶対危険じゃないですか!」
線路の霊に取り憑かれた時のことを思い出す。冷たい何かが体の中に入り込み全身を支配する。あの冷たいものが入り込む感触。
自分の意思では体を動かせない恐怖。しかも危うく電車に轢かれるところだったのだ。
「だから、安全かどうかまずは調べる」
高梨さんは線路の幽霊を例に話始める。
「線路の幽霊の名前は前田俊夫さん。享年39才。事故で家族を亡くし、一人で生活していたの。家族を亡くしてからはお酒に溺れ、仕事も失っていた。それでも、毎年家族の墓参りにはちゃんと行っていた。死んだのは1年前で酔って帰宅中に、間違って線路の中で電車が通り過ぎるのを待ってしまった。その後地縛霊になってしまい、家族の元に帰れなくなってしまった」
どーやって調べたのか線路の幽霊の情報を知っている。
情報を知ると、線路の霊がそれほど怖い存在ではなかったことが理解でき、恐怖心も薄まる。
「これだけ情報があれば安全な霊か悪霊か判断出来るでしょ」と自信ありげに高梨さんは話す。
「じゃあ、窓の外の霊は?」
「あれは…ストーカーの幽霊で、何でも好きな人にこっ酷く振られて…」
「いやいや、無理無理!完全にヤバい霊でしょ!」
その反応に高梨さんは笑っている。
「大丈夫だって、ちょっとだけ、ちょこっとだけ。怖いのは最初だけだから。詳しいことは本人に聞きましょ」
高梨さんは立ち上がると、迷いなく窓を開ける。
一陣の風と共に、煙のような何かが部屋の中に入り込む。
まただ、体の中に冷たいものが入り込む。
サウナのあとの水風呂のような感覚。
ゾワリと寒けが背中を襲う。
体の支配権を奪われ、身動きできなくなる。
そんな私に対して高梨さんは言う。
「浜中美幸さん。あなたの未練をお聞かせ下さい」
高梨さんは霊に質問する。霊はそれに反応する。
「私の…未練…」
体が勝手に動き出す。アパートを出て外にでる。
だから、嫌だったのだ。今度はどこにいくのか。
私の気持ちなどお構いなしに、裸足で歩いて坂道を登る。
女霊の街灯の近くを通り過ぎ、近くの住宅の前にくる。
ある一軒家の車庫の電動シャッターに手を伸ばし、上昇ボタンを押す。
大きな音と共にシャッターはあがっていく。
車庫の中には1台のスポーツカーが止められていた。
その車は最近事故にでもあったかのように、フロント部分が大きくヘコんでいる。
ここまでくると、私にもわかってくる。
この車は浜中美幸を轢き殺した車だ。
「何してるんだ!」怒鳴り声と共に家から、ホスト風の若い男が出てくる。男は隠すように急いでシャッターを閉める。
「勝手に人の家のシャッターをあけるな!警察呼ぶぞ!」
凄まじい怒鳴り声で叱りつけてくる。
「何で開けたんだ!誰かに開けてこいとでも言われたのか!」シャッター開けただけなのに、その説教は終わらない。疑念は確信に変わる。
「警察呼べばいいんじゃないかな」
いつの間にか高梨さんが横にいる。
「私の方から電話しましょうか」
「もういい、いい、今回だけは許してやる」
実際に警察を呼ぶとなると急にトーンが下がる。
「シャッター開けただけだしな、ほら、もう帰れ。二度とするなよ!」
「はい」
いつの間にか体の自由が、戻っている。
霊が体から抜け、体に体温が戻る。
みると浜中美幸は意中の相手の男に取り憑いたようだ。
まとわりつくように、男にしがみついている。
あれは一生、死んでもまとわりつくつくんじゃないかと思わされる。
それをみて「ハッピーエンドだね」と高梨さんは言ったが。
まったく、そうは思えなかった。
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