勇者旅立つ!

エヌ·ケイ

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勇者旅立つ!2

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俺はこの国を救う勇者になる!

そう決心し俺は村を飛び出した。
村を出て1キロは歩いただろうか、まだ景色は見慣れた景色である。

王国に向かい街道沿いを歩く。進んでいると前方にこんもりとした森が現れた。のんびりと歩きながら山々の紅葉を眺めていると、前方の道を横切る影があらわれた。ポヨンポヨン跳ねながら渡っている。

【スライムがあらわれた】
スライムはゼリー状の軟体生物で体が薄い水色をしている。冒険者達が最初に戦うモンスターだ。
スライムはまだ此方に気づいていない。

▶️【たたかう】
 【逃げる】
良し!早速勇者の実力を試す時がきた。
初めての戦闘だ。緊張が走る。
俺は腰に差した剣を取り出し、とりだし、とりだし。
「はっ!」
取り出したかったが剣を家に忘れてきた。
その間にスライムは此方の存在に気付き、ポヨンポヨンと近づいてくる。
考えている時間はない。ヤンは右の拳を握り込むとスライムに向けて放った!
「パァン!」激しい音と共に顔面に激しい衝撃が走った。ドッチボールで顔面にボールが当たった時と同じ衝撃。
スライムは左右にステップを踏みながら跳ねている。「こ、こいつ」後ろによろめきながら、打たれた鼻をさわるとヌルリとした感触がある。
血だ。スライムの予想外の反撃に驚いていると一撃二撃顔面に攻撃が飛んでくる。
堪らず防御を堅め相手の攻撃を防ぐ。スライムはボヨンボヨン跳ねながら、周りの木々を利用し前後左右に飛び回る。攻撃するスキがない。
「相手の動きをよむのです」「モンスターの動きは直情的です。冷静になれば対処のしようはいくらでもあります」ダダンの言葉を思い出した。
スライムの動きを良く見る。左、右、左、木にぶつかる反動を利用して跳んできた。ボディを狙っている。
「捕まえた!」
ガッチリスライムをキャッチする。
捕まえれば此方のものだ。掴んだスライムを地面に叩きつける。何度も叩きつけるうちに血で手が滑った。スラリと抜け出すと顔面に飛び付いてきた。
スライムは透明な口をあけるとヤンの頭を包み込む。スライムの身体の99%は水分で出来ている。
「ゴボッ!」息が出来ない。
ゴムで出来た水袋を頭から被っているようなものだ。引き剥がそうとするが伸びるだけで取れない。首の方がもげそうだ。意識が遠のいていく。
目の前が真っ暗になり俺はドテンと地面に倒れた。

パチパチ音がする。炎で薪がはぜる音だ。
暖かい。焚き火のまわりが暗い。日はすっかり暮れていた。
「目が覚めたか」
目の前に親父がいた。親父は焼いた肉を差し出す。
ヤンは身体を起こすとそれを食べた。
「俺を探しにきたのか、親父」
「…いや、帰り道で昼寝をしてるお前見つけただけだ」
ヤンは自分の枕にしていたスライムをみた。どうやら俺は魔王軍最弱にして最強のスライムを倒したらしい。旅立ちのスタートとしては順調だ。
「ふふふ、はっはっはっは!」
「お前は遊んでないで仕事を手伝え」親父はヤンに拳骨を食らわすと立ち上がった。「帰るぞ母さんが心配している」俺達は帰路についた。
家に帰ると母ちゃんと暖かいシチューが待っていた。

俺は勇者!この国を救うため明日も旅立つ!
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