勇者旅立つ!

エヌ·ケイ

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勇者旅立つ!8

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俺はこの国を救う勇者になる!

月明かりのない森の中。ヤンは骸骨剣士と対峙していた。夜戦であったが幸い骸骨剣士は光っていたので動きが良く見えた。
骸骨剣士は骨で出来た体を魔法で動かしている。
本体である胸部の核を壊せばやつを倒せるだろう。
骸骨剣士が近づいてくる。間合いを見極め切り込んだ。激しく剣のぶつかりあう音が響く。
何度か打ち合ったのちに、振り下ろした剣を左に受け流される。すぐさま打ち込んできた剣を鍋の蓋で受け止め。骸骨剣士の横っ腹に剣を叩き込んだ。
決まったと思ったが崩れた体はすぐに修復される。
剣を何度も切り込むが上手く立ち回られ、核の心臓までは届かない。逆に打ち込むたびに傷が増えていった。
つ、強い。生前はさぞ名のある剣士だったのだろう。剣の腕では一枚上手だ。このままでは。
剣を弾き飛ばされ、ヤンは倒れこむ。やばい。
「バコンっ!」
骸骨剣士が剣を振り下ろそうとしたところを、スライムの体当たりが炸裂した。
骸骨の体の一部が崩れる。すぐさま骨を拾うと遠くに投げた。いくら亡霊でも亡くしたパーツは修復出来ない。体の一部を失った骸骨剣士は体のバランスを崩している。
「格上の相手との戦いでは、特に仲間との連携が必要だ。無理はするな!自分1人で戦っているんではないってことよ」ダダンの言葉を思いだした。
打ち合いでは勝てない。自分から切り込むのでなくて受けにまわる。
仲間に攻撃のチャンスを与えるんだ。
骸骨剣士の攻撃を受けることに集中した。スライムの攻撃が決まる度に落ちたパーツを拾いあげ、遠くに投げる。これを繰り返した。
が、そんなに何度も決まるわけがない。
「パンッ」スライムの体がはじけ飛んだ。
骸骨剣士の一撃により破裂したのだ。
「ポチ!」悲しむ間もなく横から影が跳び跳ねる。
骸骨剣士に体当たりすると、その体を崩す。
暗くて気づかなかったが他にもスライムがいた。細胞分裂だ。スライムは一斉に襲いかかる。
骸骨剣士の体のパーツが失くなった時、戦いは終わった。
青い核の炎は朝の光に照らされ消えていく。
後には剣士の身に付けていたブレスレットが残された。俺達は骸骨剣士に勝利した。

エリンの様子をみる。まだスヤスヤと眠っている。ヤンは寝顔を見て安堵した。
起こさないように朝食の準備をする。
村人達がエリンを探して森を探索しているはずだ。
下手に動かずここで待っていれば煙に気づいてくるだろう。大樹の根元に腰を下ろす。身体中は傷だらけで痛む。
俺は勇者ヤン。今夜は少し疲れた。
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