勇者旅立つ!

エヌ·ケイ

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勇者旅立つ!7

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俺はこの国を救う勇者になる!

泣き声のする方に向かっていくと、大きな木の根元でうずくまり泣いている子供をみつけた。
子供は大声で泣いている。「あっちいって!こっちこないでよー!」ポチに向かって騒いでいる。
「どうした?」声をかけると驚いてこっちをみた。

「森に入ったら、ヒック、迷子になって!家に帰れなくなったの。ああああん」と大声で泣く。
「それなら安心しろ俺達も迷子だ!」
場を和ませようとしたがさらに泣いた。

子供は泣きつかれて寝てしまった。ポチを枕にしている。最初は怖がっていたが、水槽の魚をみるやすっかり懐いてしまった。この場を動くことも出来ないので大きな木の下に泊まることにした。
夜営のための設営を始める。
斜面に穴を掘り、枯れ葉を敷き詰めて寝床をつくった。焚き火をつけると、フライパンにバターをぬって割いたエリンギを炒めた。焼き色がついたら塩、胡椒をかけて最後に醤油を垂らした。
良い香りがする。美味しそうな匂いで子供が目をさました。「グゥゥゥ…」腹を鳴らしている。
焼けたばかりのエリンギをあげると、よっぽどお腹をすかせていたらしい。フーフー冷ましながらムシャブリつくように食べた。料理は得意ではないが簡単なものなら教わっていてよかった。そうヤンは思った。

食事をしながら勇者ヤンの冒険譚を話した。
子供はヤンのことを「勇者様!勇者様!」ともてはやした。
娘はエリンといった。迷いの森の近くの村に住んでいて、病気のおじいちゃんに栄養のあるものを食べさせるために森に入った。「それでね、おじいちゃんがねー」おじいちゃんの話ばかりしている。おじいちゃんのことが好きなのだ。
和やかな雰囲気が続く。
ヤンは迷子になってるのが嘘の様に夜営を楽しんだ。

エリンは穴の中で寝ている。
夜も更け肌寒くなってきた。
「さて」ヤンは立ち上がると、剣を構えた。
迷いの森とは魂の迷う森。昔、この森が戦場になった時に多くの人が亡くなり、今も森をさまよっている。森の木々の間にボォと青白い炎が浮かびあがる。
この森で死んだ亡霊の魂だ。青い炎がより一層燃え上がると地面から骸骨が起き上がる。骸骨の体の胸には炎が宿り。全身を青く包んでいる。
【骸骨剣士があらわれた】
骸骨剣士は歯をカタカタと鳴らすとこちらをみた。
親父から譲り受けた剣と熱熱の鍋の蓋を盾にヤンは立ち向かう。
負けるわけには行かない。何故なら俺は勇者、守るべき者があるからだ!
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