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出会い⑥
しおりを挟む空は厚い雲に覆われてどんよりとしている。
地面はひび割れ、付近の山々は草木も生えず、ただその肌を晒している。
どれも標高が高く、魔物は飛んでいるが鳥は見当たらない。
そんな中、一際大きな山の頂にまるで上の部分を切り取ったかの様な平地が広がっている。
そこに今、魔族の男と赤ん坊、そして巨軀のドラゴンがいた。
男は所々焦げ跡があり、髪も一部がチリチリな状態であった。
赤ん坊は泣き疲れたのだろうか、暫しの休息を取っている。
ドラゴンは2人を見下ろしている。
そして溜息をつきながら男に問う。
「で?この赤ん坊はなんだい?」
カシムはバツの悪そうな顔をしながら、これまでの経緯を話し始めた。
勿論、魔王になる為に利用する云々も馬鹿正直に告げる。
先程より更に深い溜息をつきつつ、見下ろすのが疲れたとか言いながら、ドラコは自分のサイズを縮めていく。
やがてそれは人型になり、女の形を取り始めた。
女の形と言っても2メートルはある身長に加え、大きな力こぶや六つに割れた腹筋等溢れんばかりの筋肉量だ。
並の成人男性であれば一捻りで骨が折れてしまいそうな程である。
蛮族の様な衣服をまとい、赤黒い髪は長く、肌は所々鱗が浮き出ている。
そして腕を組み、仁王立ちをすると、
「あんた、赤ん坊を育てるってどうする事なのか理解しているのかい?」
呆れ顔で言う。
普通に食事をさせれば勝手に育つのではないのか?と大真面目に答えるカシムを見て、思わず天を仰いだ。
よくお聞き!と話を切り出し、赤ん坊とはどう言うものなのか、どう育てていくのかを懇々とカシムに教える。
彼はふむふむと話を聞き、よくわからないところは質問などをしながら理解を深めていった。
知識が無い分、スポンジの様に吸収していく。
ただ、自発的に覚えようとすると全く頭に入らないし、理解が出来ないのだ。
そこが不思議だとドラコはよく首を傾げていた。
「と言う事だ。あんたに出来るのかい?」
その問い掛けに自信たっぷりにうなづく。
そして、最後に一つだけ質問いいかと問い、ドラコがうなづく。
彼女をジッと見つめ、真剣な面持ちで言う。
「先程から言っているミルクとはなんだ」
その瞬間はまるで時が止まっているかの様だったと後にカシムは語った。
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