おバカな魔族と少女の魔王計画

ユミ

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海へ①

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 朝。
 もそもそと動き出し、出発準備をする。
 まだ少し寒い。

 朝日に照らされ海が輝いている。
 一定のペースを守り、波が音を奏でていた。

「では、行こうか」

 自分達の周りに薄い膜を張り、海の中でも活動出来る様にする。
 リリアムが案を出し、カシムが実行。


 ドボンッ。
 水飛沫を上げ、海中へと飛び込んだ。


 どんどん海底へと進んでいく。
 様々な魚や珊瑚礁などがキラキラして綺麗だ。
 魚群が渦を巻く様に泳いでいる。



 海の様子を楽しみながら進み、人魚の一人や二人いてもいい頃合いだが、普段であればいるはずの人魚達が影も形もない。

「おっかしいなー。本に書いてあったんだけどなぁ」

 少女は首を傾げた。
 沢山の文献の中に人魚達を見かけないという事を書いているものはなかった。
 著者にとってもこの事態は異例な事と言ってもいいだろう。

 本来であれば、浅瀬だろうが海底だろうがすぐに向こうが見つけてこちらに寄ってくるらしい。
 そしてフランクに話しかけて来る。
『ようこそ、僕達の海へ。楽しんでいってね』と。


 人魚にとって非常事態が起こっているに違いない。
 そう思い、一先ず住処を探す事にした。


 ------


「ん?………あ!あそこ!建物っぽいのがあるよ」

 しばらく右往左往し、ようやくそれらしき場所を見つけた。
 近付くと主に石で出来ている家が点々とある。

 しかしそこでも人魚の姿が見えない。
 皆、家に引きこもっているのだろうか。

 試しに扉をノックしてみる。

 ガチャ……。
 中から怯えた様子の人魚が少しだけ扉を開け、こちらを覗いていた。

「私はカシムという。何かあったのか?」

「あ………陸の人だね。早く中へ」

 人魚はしきりに二人の後方を確認しながら、家に招き入れた。


 中に入ると、石を積み上げただけの家だという事がよくわかる。
 内装も質素で、僅かばかりの家具がある程度だった。

 住人は三人、親子の様だ。
 眉間に皺を寄せ、依然として怯えた表情をしている。

「僕達普段は自由に泳いで遊んだりしてるんだけど、最近変な魔物が彷徨くようになってさ」



 彼が言うには、鱗が驚く程硬い巨大な魔物が出現し、その魔物が人魚達に襲い掛かり捕食しているらしい。

 しかも海全域を我が物顔で彷徨いているという。

 何度か腕自慢達が討伐隊を結成し、なんとかしようと試みたが、仕留めるまでにはいかず仕舞いであった。

 あまつさえ、最強だと謳われた人魚でさえも深傷を負わされた。

 その話に皆絶望し、家から出るのが怖くなってしまったそうだ。

「その深傷を負わされたって人は何処にいるの?」

「族長の家さ。地図は持っているかい?場所を教えるよ」


 カシム達は族長の家に行き、巨大な魔物について聞いてみる事にした。
 もし解決出来たなら、魔王への第一歩に繋がるかもしれないからだ。

 人魚にお礼を言い、周囲を警戒しつつ族長の家へと向かった。
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