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珍しい
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セイに連れられてやってきたのは、フォーマルな雰囲気の服屋だった。
大型獣人でも小型獣人でも対応できる店のようで、服がサイズごとに整列している。
店員も客も、様々な種族がいた。
この店に来るのは初めてではないらしいセイは、細身の犬獣人の店員と何やら楽し気に話しながら服の森へと入っていってしまう。
(スーツ買うのかな……珍しい)
セイは基本的に家で仕事をしているのでスーツの消耗が緩やかだ。
枚数は少ないけれど一着一着の質が良いセイの服は長持ちするため、買い換えることがあまり無い。
ただし買う時は恐ろしくこだわるため、長丁場になるだろう。
スーツ姿のセイを想像してワクワクしつつ、ソーマは気合を入れて服の森に入っていくことにした。
「ソーマ、次はこれを着てくれ」
「え!? まだあるのか!?」
セイの人差し指の先にあるベージュのスーツを見て、ネイビーのスーツを身に纏ったソーマは思わず声を上げた。
てっきりセイの服を買うものだと思っていて、それをプレゼントにしたらいいと考えていたのだが。
今、試着室から動けなくなっているのはソーマの方だった。
かれこれ五着目か六着目だ。完全に着せ替え人形状態である。
「すまない。ソーマはなんでも似合うから迷ってしまって……」
「あ、ありがとう……?」
顎に手を当てて告げてくるセイの表情は真剣そのものだ。ソーマの魅力を最大限に引き出す服を本気で吟味している。
犬獣人の店員は「ごゆっくりどうぞ」と、とっくに別の接客に行ってしまった。
豊富にサイズや形があるにもかかわらず、セイが選ぶ服は全てソーマの体にフィットしていて着心地が良かった。
流石、いつもソーマのワイシャツを洗いアイロンをかけ、スーツをクリーニングに出してくれているだけある。
「よし、これにしよう」
一体何回着替えたのだろうか。
結局、一番初めに着たグレーのスーツをセイはもう一度持ってきた。
(こ、こんなに着替える必要なかった……!)
しかし絶対に口には出さない。今日はセイの好きにしてもらうと決めていたのだから。
疲労困憊のソーマが試着室から出ようとすると、もう一度着てくれと押し戻された。
一度着て写真も撮ったはずなのだが。
拒否せず言われた通りグレーのスーツと、同系色のシャツに着替え、ネイビーのネクタイを結んで試着室のドアを開ける。
「お待た……せ……」
疲れた様子を見せないように笑顔で見たその先には、スーツに着替えたセイが立っていた。
「あ、か、かっこいい……」
思ったことがそのまま口から出た。
落ち着いた黒に近いブラウンのスーツに、緑のネクタイを締めたセイは優雅に笑みを浮かべている。
いつも私服姿ばかり見ているので、唐突なフォーマルは刺激が強い。
灰色の耳の先からライトブラウンの靴の先まで、じっくりと舐めるように見てしまった。
(眼福過ぎる結婚したい)
「じゃあ、行こうか」
「え、着てくのか?」
足元に用意されている革靴を見て、ソーマは目を瞬かせる。
セイは一歩近づいてきながら頷いた。
「ああ、久しぶりにドレスコードがある店でディナーしよう」
「久しぶりっていうか……二回目だな」
どうせすぐに脱ぐと思って適当に結んだネクタイを直してくれるセイに甘えながら、懐かしい記憶を辿る。
前に畏まったレストランに行った時に、二人は恋人同士になった。
社会人になって再会してから、ソーマが少しずつセイヘの思いを募らせて自覚した頃。
海が綺麗に見える場所で、セイに似合いそうだと思ってソーマが予約した場所だ。
セイがそろそろ猫の国に戻ろうかと考えているなんて言うもんだから、なんとしてでも繋がりを持っておきたくて。
ソーマは勢い余って大声で告白した。
そうしたら、セイは、
「学生のころからずっと好きだった」
と。
セイは学校の誰よりも優秀で、当時は何故友人でいてくれるのか分からないくらいに思っていたソーマは驚愕したものだった。
(セイにキスされて、周りのお客さんに拍手されたっけ)
あれは恥ずかしかった。
思い出に浸りながら用意された靴を履くと、初めて履く靴なのに全く違和感がなくて笑ってしまう。
セイは、ソーマよりソーマの体に詳しい可能性が出てきた。
シャツは必ず使う物だからと、二枚購入することになった。
たしかに毎日朝から晩までスーツで過ごすソーマにとってYシャツは、消耗品に間違いない。
そして店を出てから、再び違和感に気がつく。
ソーマがプレゼントするつもりだったのに、既に代金が支払われていた。
(くっそー! 次こそ!)
頭を掻きむしりたい気持ちを抑えて、セイが予約したという店に並んで向かうのだった。
大型獣人でも小型獣人でも対応できる店のようで、服がサイズごとに整列している。
店員も客も、様々な種族がいた。
この店に来るのは初めてではないらしいセイは、細身の犬獣人の店員と何やら楽し気に話しながら服の森へと入っていってしまう。
(スーツ買うのかな……珍しい)
セイは基本的に家で仕事をしているのでスーツの消耗が緩やかだ。
枚数は少ないけれど一着一着の質が良いセイの服は長持ちするため、買い換えることがあまり無い。
ただし買う時は恐ろしくこだわるため、長丁場になるだろう。
スーツ姿のセイを想像してワクワクしつつ、ソーマは気合を入れて服の森に入っていくことにした。
「ソーマ、次はこれを着てくれ」
「え!? まだあるのか!?」
セイの人差し指の先にあるベージュのスーツを見て、ネイビーのスーツを身に纏ったソーマは思わず声を上げた。
てっきりセイの服を買うものだと思っていて、それをプレゼントにしたらいいと考えていたのだが。
今、試着室から動けなくなっているのはソーマの方だった。
かれこれ五着目か六着目だ。完全に着せ替え人形状態である。
「すまない。ソーマはなんでも似合うから迷ってしまって……」
「あ、ありがとう……?」
顎に手を当てて告げてくるセイの表情は真剣そのものだ。ソーマの魅力を最大限に引き出す服を本気で吟味している。
犬獣人の店員は「ごゆっくりどうぞ」と、とっくに別の接客に行ってしまった。
豊富にサイズや形があるにもかかわらず、セイが選ぶ服は全てソーマの体にフィットしていて着心地が良かった。
流石、いつもソーマのワイシャツを洗いアイロンをかけ、スーツをクリーニングに出してくれているだけある。
「よし、これにしよう」
一体何回着替えたのだろうか。
結局、一番初めに着たグレーのスーツをセイはもう一度持ってきた。
(こ、こんなに着替える必要なかった……!)
しかし絶対に口には出さない。今日はセイの好きにしてもらうと決めていたのだから。
疲労困憊のソーマが試着室から出ようとすると、もう一度着てくれと押し戻された。
一度着て写真も撮ったはずなのだが。
拒否せず言われた通りグレーのスーツと、同系色のシャツに着替え、ネイビーのネクタイを結んで試着室のドアを開ける。
「お待た……せ……」
疲れた様子を見せないように笑顔で見たその先には、スーツに着替えたセイが立っていた。
「あ、か、かっこいい……」
思ったことがそのまま口から出た。
落ち着いた黒に近いブラウンのスーツに、緑のネクタイを締めたセイは優雅に笑みを浮かべている。
いつも私服姿ばかり見ているので、唐突なフォーマルは刺激が強い。
灰色の耳の先からライトブラウンの靴の先まで、じっくりと舐めるように見てしまった。
(眼福過ぎる結婚したい)
「じゃあ、行こうか」
「え、着てくのか?」
足元に用意されている革靴を見て、ソーマは目を瞬かせる。
セイは一歩近づいてきながら頷いた。
「ああ、久しぶりにドレスコードがある店でディナーしよう」
「久しぶりっていうか……二回目だな」
どうせすぐに脱ぐと思って適当に結んだネクタイを直してくれるセイに甘えながら、懐かしい記憶を辿る。
前に畏まったレストランに行った時に、二人は恋人同士になった。
社会人になって再会してから、ソーマが少しずつセイヘの思いを募らせて自覚した頃。
海が綺麗に見える場所で、セイに似合いそうだと思ってソーマが予約した場所だ。
セイがそろそろ猫の国に戻ろうかと考えているなんて言うもんだから、なんとしてでも繋がりを持っておきたくて。
ソーマは勢い余って大声で告白した。
そうしたら、セイは、
「学生のころからずっと好きだった」
と。
セイは学校の誰よりも優秀で、当時は何故友人でいてくれるのか分からないくらいに思っていたソーマは驚愕したものだった。
(セイにキスされて、周りのお客さんに拍手されたっけ)
あれは恥ずかしかった。
思い出に浸りながら用意された靴を履くと、初めて履く靴なのに全く違和感がなくて笑ってしまう。
セイは、ソーマよりソーマの体に詳しい可能性が出てきた。
シャツは必ず使う物だからと、二枚購入することになった。
たしかに毎日朝から晩までスーツで過ごすソーマにとってYシャツは、消耗品に間違いない。
そして店を出てから、再び違和感に気がつく。
ソーマがプレゼントするつもりだったのに、既に代金が支払われていた。
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頭を掻きむしりたい気持ちを抑えて、セイが予約したという店に並んで向かうのだった。
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