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あれ?
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ソーマが満足いくまでじっくりと会場内を歩き回った二人。
気が付けば午後二時になっていた。
丁度、ソーマの腹も朝のサンドイッチを消化し終えた頃だ。
休憩がてら展示会場の近くにあるパンケーキ屋に向かうことにした。
ライトブラウンの木目で統一されている店内は、甘い匂いで満たされている。
週末は行列ができる人気の店だが、今日は平日のためかすんなりと入ることができた。
「うー……幸せ……」
看板商品である、たっぷりの生クリームの上に色とりどりの果物が飾られているパンケーキを一口含んだソーマは、頬を抑えて味を堪能した。
合わせて注文したトロピカルジュースも美味しい。
魚介のフライやサラダが添えてある甘さ控えめのパンケーキにフォークを刺しながら、セイも楽し気に笑う。
「お前は、本当に美味しそうに食べるな」
「へへ」
「ずっと見てられる」
上品にパンケーキをナイフで切り分けながら、セイは惜しげもなく熱い視線をソーマに注ぐ。
大口を開けていたソーマは、そろそろとフォークを皿に戻した。
気まずげに視線が揺れる。
どう考えても今更だが、家の中と外では感じ方がまるで違った。
「あ、あんまり見られるとちょっと食いにくいかも……」
「でも、俺が見てないとほら」
ソーマとは対照的に、人前でも何も変わらないセイがソーマに手を伸ばす。
人差し指で、口元についた生クリームを拭い取って微笑んだ。
「こういうの、気づいてあげられないだろ」
「あ、ついてたか? ありがとな」
見せられたものをなんの躊躇もなく、指ごとパクリと口に含む。
「……っ」
綺麗に舐めとりながら視線をあげると、セイが目を見開いていた。
珍しく驚きを表に出しているセイを見て、ソーマは内心首を傾げる。
こんなやりとりはいつものことだ。
そんなソーマとじっと目を合わせながら、セイは指を引き抜く。唾液のついた指に軽く舌を這わせる仕草が色っぽくて、ソーマは見惚れると共にハッとした。
(だから! ここ外だって!)
誰の目に止まるとも分からない場所で、大胆なことをしてしまった。
一瞬前に、ソーマが指摘したことだったのに。
二人での食事はもっぱら家で、外食なんて久々だったから感覚が鈍っている。
僅かでも気を抜くと、また何かやらかしそうだ。
無言で慌てているソーマを面白気に見守ってくるセイを睨め付け、ジュースのストローを咥えた。
果物の甘味と酸味のハーモニーが堪らない。
(あー……それにしても楽しい美味しい。ここ、ずっと来てみたかったんだよなー。忙しくてなかなか……ん? 待てよ)
ソーマはそこで、引っ掛かった。
朝寝坊してブランチのサンドイッチ、大好きな有名映画の展示会、気になっていたパンケーキ屋。
セイは朝はご飯派だし、映画はサスペンス派だし、甘いものは基本的には食べない。
今だって、紅茶には砂糖もミルクも入れていない。
「なんか、俺が好きなとこばっか行ってないか?」
問いかけにはにっこりと良い笑顔だけで返される。
確かセイは「俺が行きたいところ決めてもいいか?」と言っていた。
セイがソーマに合わせずやりたいことを言ってくれることはなかなか無いから、全力で付き合おうと思っていたというのに。
ソーマはジュースのグラスをテーブルに叩きつけたいのを堪えて、そっと置いた。
「お前の誕生日なんだけど!」
「楽しそうなお前が見れて、最高の誕生日だ」
「だからそういうとこ!」
長い茶色の耳が興奮してピンと立つ。
実際、セイは機嫌良く楽しそうだった。尻尾もずっと楽しげに立っていた。
だからいつも通りソーマに合わせてくれていると気付くのが遅れた。
自分はどうして鈍いんだろうと、今度は耳が垂れる。
忙しい感情が全て耳に出ているのを眺めながら、セイは柔らかい表情で頬杖をついた。
「じゃあ、ここからは俺の趣味に付き合ってくれよ」
「もちろんだ! 絶対だぞ!」
立ち上がりそうな勢いで、ソーマは元気よく返事をした。
気が付けば午後二時になっていた。
丁度、ソーマの腹も朝のサンドイッチを消化し終えた頃だ。
休憩がてら展示会場の近くにあるパンケーキ屋に向かうことにした。
ライトブラウンの木目で統一されている店内は、甘い匂いで満たされている。
週末は行列ができる人気の店だが、今日は平日のためかすんなりと入ることができた。
「うー……幸せ……」
看板商品である、たっぷりの生クリームの上に色とりどりの果物が飾られているパンケーキを一口含んだソーマは、頬を抑えて味を堪能した。
合わせて注文したトロピカルジュースも美味しい。
魚介のフライやサラダが添えてある甘さ控えめのパンケーキにフォークを刺しながら、セイも楽し気に笑う。
「お前は、本当に美味しそうに食べるな」
「へへ」
「ずっと見てられる」
上品にパンケーキをナイフで切り分けながら、セイは惜しげもなく熱い視線をソーマに注ぐ。
大口を開けていたソーマは、そろそろとフォークを皿に戻した。
気まずげに視線が揺れる。
どう考えても今更だが、家の中と外では感じ方がまるで違った。
「あ、あんまり見られるとちょっと食いにくいかも……」
「でも、俺が見てないとほら」
ソーマとは対照的に、人前でも何も変わらないセイがソーマに手を伸ばす。
人差し指で、口元についた生クリームを拭い取って微笑んだ。
「こういうの、気づいてあげられないだろ」
「あ、ついてたか? ありがとな」
見せられたものをなんの躊躇もなく、指ごとパクリと口に含む。
「……っ」
綺麗に舐めとりながら視線をあげると、セイが目を見開いていた。
珍しく驚きを表に出しているセイを見て、ソーマは内心首を傾げる。
こんなやりとりはいつものことだ。
そんなソーマとじっと目を合わせながら、セイは指を引き抜く。唾液のついた指に軽く舌を這わせる仕草が色っぽくて、ソーマは見惚れると共にハッとした。
(だから! ここ外だって!)
誰の目に止まるとも分からない場所で、大胆なことをしてしまった。
一瞬前に、ソーマが指摘したことだったのに。
二人での食事はもっぱら家で、外食なんて久々だったから感覚が鈍っている。
僅かでも気を抜くと、また何かやらかしそうだ。
無言で慌てているソーマを面白気に見守ってくるセイを睨め付け、ジュースのストローを咥えた。
果物の甘味と酸味のハーモニーが堪らない。
(あー……それにしても楽しい美味しい。ここ、ずっと来てみたかったんだよなー。忙しくてなかなか……ん? 待てよ)
ソーマはそこで、引っ掛かった。
朝寝坊してブランチのサンドイッチ、大好きな有名映画の展示会、気になっていたパンケーキ屋。
セイは朝はご飯派だし、映画はサスペンス派だし、甘いものは基本的には食べない。
今だって、紅茶には砂糖もミルクも入れていない。
「なんか、俺が好きなとこばっか行ってないか?」
問いかけにはにっこりと良い笑顔だけで返される。
確かセイは「俺が行きたいところ決めてもいいか?」と言っていた。
セイがソーマに合わせずやりたいことを言ってくれることはなかなか無いから、全力で付き合おうと思っていたというのに。
ソーマはジュースのグラスをテーブルに叩きつけたいのを堪えて、そっと置いた。
「お前の誕生日なんだけど!」
「楽しそうなお前が見れて、最高の誕生日だ」
「だからそういうとこ!」
長い茶色の耳が興奮してピンと立つ。
実際、セイは機嫌良く楽しそうだった。尻尾もずっと楽しげに立っていた。
だからいつも通りソーマに合わせてくれていると気付くのが遅れた。
自分はどうして鈍いんだろうと、今度は耳が垂れる。
忙しい感情が全て耳に出ているのを眺めながら、セイは柔らかい表情で頬杖をついた。
「じゃあ、ここからは俺の趣味に付き合ってくれよ」
「もちろんだ! 絶対だぞ!」
立ち上がりそうな勢いで、ソーマは元気よく返事をした。
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