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第一章
ありなんですか!?
しおりを挟む私は今、これまでになく楽しい気持ちで椅子に座ってグラスを傾けていた。
あの後は結局、ラナージュの希望通りアレハンドロと踊る羽目になった。
バレットの時より普通のダンスだったので体は楽ではあった。
しかし、周りの見えちゃいけないものを見てしまったというような視線が痛すぎた。
音楽家の皆さんは面白がっているのか偶然なのか、とてもロマンティックなスローな曲を演奏してくれたので密着度も凄かったし2人してヤケになっていた。
そしてたまに女の子の嬉しそうな声が聞こえた。
皆さんお好きですね!!
くっそ私もそっち側いきたい!!
と思いながら踊っていましたが、なんと今そっち側にいます。
私とアレハンドロが本当に1曲だけ踊って戻った後、エラルドがアレハンドロに踊ろうと声をかけてきた。
何事だよと思ったらパトリシアが「殿下とエラルドさまが踊ってるの見てみたい」と言ったらしい。
パトリシアは後ろで「冗談です!言ってみただけです!!」と大慌てだった。
が、私は冗談ではなく観てみたかったので、
「行ってこい。我らが皇太子殿下は女役も出来るとても器用な方だからな」
と、背中を押してやった。
さっきは私が女役やったから知らんけど。
今にも怒鳴りそうだったアレハンドロだったが、手をエラルドがニコニコしながら引っ張ると、空気に飲まれて行ってしまった。
(行くんだ……)
自分で言っといてなんだがびっくりした。
そうしていると、次はネルスとアンネがやってきた。
アレハンドロとエラルドが踊っているのを見て、
「じゃあ、私はバレットさまとネルスさまが踊ってるのも観てみたいですねーなんて……」
と。笑いながら本当に冗談で言ったのだと思う。
もう男同士で踊っている皇太子にすら驚かなくなっていたネルスも「まぁ僕も女性パートは踊れるからな!」と笑い返していたのだが。
「じゃあ踊るか」
え、という間もなく。
ネルスがバレットに担ぎ上げられて行った。
まさかの乗り気。
男同士で踊る方が無茶ができることを学習してしまったらしい。
しかしそれならエラルドとかを選ばなければ。
ネルスは運動だけは出来ないのだ。
「待て待て!! 僕は!! シンみたいに踊れないぞ!! 運動能力も筋力も並以下だ!! 本当に普通にしか踊れないぞー!!」
教えてあげないと危ないかと思ったが、バレットの意図を汲み取ったらしいネルスの正直すぎる断末魔が響いていたので大丈夫だろう多分。
(こんな夢みたいなことある? ただでさえ夢の世界みたいなとこなのに? 美男子たちがペアを組んで目の前で踊ってる……!)
文字通りネルスが振り回されているのを眺めていると、
「パトリシア、わたくしたちも負けていられませんわね?わたくし、男性の方も踊れますのよ」
ラナージュが優雅にパトリシアの手をとった。
「えっ! ありなんですか!?」
「親睦会ですもの! 男性同士も女性同士も仲を深めましょう!」
驚くパトリシアの手を引いてラナージュがダンスの輪に入って行った。
というわけで、今はエラルドとアレハンドロ、バレットとネルス、ラナージュとパトリシアの美しいカップルを眺めながら幸せに浸っていた。
(楽しいー良きー)
ここに白飯があったら三杯くらいいけそうだ、と思いながら、共に残されたアンネの方を向く。
小さい一口サイズのシュークリームを頬張りながらダンスを眺めている。
「楽しんでいるみたいだな?」
「はい! ダンスは慣れないんですが、とても楽しいです……!」
シュークリームを飲み込んだアンネはこくこくと何度も頷いた。
本当に楽しそうでなによりだ。
このままゆったり萌を堪能するのも大いにありだとは思ったが、ここでかわいい女の子を放っておくのもなんだか貴公子っぽくない。
私は椅子から降りて片膝をついた。
「そうか。じゃあ私とも1曲お願いしますアンネ嬢」
手を差し出しながら綺麗に微笑んで見せる。
「……! ありがとうございます! 喜んで……!」
頬を紅潮させたアンネが言葉通り嬉しそうに破顔して、手を重ねる。
私はようやく、男側で女の子と踊る機会をゲットしたのだった。
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