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第一章

またなんかあるわ

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 なんとかまだざわついているその場をおさめて、皆に夏休み元気でねーっという挨拶をすませた。

(夏休み明け、私はすごく怖い人として噂が広がるんじゃないかなーこれでトラブルが舞い込む件数減るかなー)

 などと思いながら自分の家の迎えを探していると、肩を掴まれた。
 今度はなんだと振り返ると、アレハンドロが立っている。

「悪かったな。私たちの怒りが収まらないせいでお前にあんなことをさせてしまった」

 まさかの謝られた。
 アレハンドロに。
 アレハンドロが普通に謝った。
 罰悪そうにするわけでも悔しそうにするわけでもなくサラッと当然のように謝った。

 少しフリーズしかけたが、なんとか持ち堪える。

「謝ることじゃないだろう。正当な怒りだったぞ珍しく」
「だがあいつらが直接貴様に言っていれば、貴様は笑って許しただろう」
「どうかな。それは言わない方がいいとくどくど説教をしていたかもしれないな」 

 私は肩をすくめた。

 この世界の価値観として、スルーしていい内容じゃないなと思ったから今回はわざわざトラウマレベルの演出をしたわけだし。
 でも直接言ってくれた方がマシだったとは思う。

 私本人が今日は火事の夢とか見そうだ本当にやめときゃよかったとは言えまいカッコ悪い。

「ところでどうしたんだ?馬車が待ってるぞ」

 たくさん停まっている馬車の中で最も豪華な、皇室の紋章のついたものを指差す。おそらく執事であろう人が、背筋を伸ばして立っていた。

 アレハンドロは視線を斜め下へ逸らしながら、先程とは打って変わってボソボソと喋る。

「……貴様は、父親の仕事について夏休み中に王都へくる予定はあるか?」

 人間の言葉に訳すと「夏休みに一緒に遊ぼう」ということだろう。かわいいな。

 しかしお友達の誘い方も知らんのかこいつは。
 私はニヤつく口元を隠さずに頷いた。

「ああ、帰ったら父上に確認してみよう。友人に会いに王都へ行っても良いかと」

 アレハンドロは口をへの字に曲げて顔ごとそっぽを向いた。

「貴様のそういうところが嫌いだ」
「天邪鬼め。許可を貰ったらまた連絡する。お前は忙しいだろうから日にちはお前に合わせるよ」

 緩く手を挙げるとパチンと軽くハイタッチされた。

「公務を抜け出してでも予定を調整する」
 
 一学期だけで随分棘がとれたものだ。
 嬉しそうな笑顔が眩しい。顔がいい。

 そういえば夏休み中はエラルドやバレットの顔が見られないのか残念すぎる。
 ネルスには多分会うけど。ネルスの首席祝いとか絶対あの家族ならやるし。
 アンネもパトリシアも会う機会はないんだろうなー王都に行くのに誘いたいけど家族と過ごしたいよなー。
 
 と、なんだか思ってたよりこちらの世界での青春を楽しめている一学期でした。
 ドタバタだけど楽しかったです。
 このまま一気に3年経ってめでたしめでたしになれるように頑張りたいと思います。
 
 
 どうせ絶対またなんかあるわ。
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