子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第二章

デルフィニウム公爵

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 楽しい夏休みに突入した。
 家ではかわいい弟と妹がいるしなんのトラブルも起きないし最高だ。

 課題もサクサク済ませてのんびり過ごしていた。
 この世界の課題に日記とか読書感想文とか絵を描くとか、ただでさえ宿題は腰が重いのに考えるだけで面倒なやつが無いのが素晴らしい。

 とはいうものの、私の世界でも流石に高校ではそんなの無かったかもしれない。もう全く覚えていない。

 暑い日が続いていたので、涼しい地域にある別邸に滞在しにいったりも出来た。
 金持ち貴族最高である。
 
 そして夏休みも終盤になった今、私はこの国の首都に父親と2人でやってきている。
 そう、アレハンドロに会うために。
 
 首都ガルディート。
 この世界で最も大きく最も栄えている土地だ。

 今は落ち着いているけれど、昔、戦争でどんどん国土を広げていって、この帝国がこの世界で一番大きくなったらしい。
 私の世界の知識で言うと「太陽が沈まない国」といった感じだろうか。
 
 馬車の小窓から外の大通りを見ると街が活気付いているのがわかる。

 石畳みの道の両側には色々なお店の看板が並んでいて、道行く人たちは煌びやかな服を着ていて。
 大道芸人や食べ物の移動販売の荷車、花を売る少年、昼間から酔っ払っている人、見回りの兵士。

 どこの世界も都会は賑やかだ。

 私の育った領土も国一番の商業の街だから賑やかだが、雰囲気がなんとなく違う。正直に言うともっと喧しい感じなんだうちの領の街。
 東京と大阪みたいな感じだろうか?
 
(街にアレハンドロと出られないかな?さすがに無理かな……)

 美味しそうなパン屋さんの横を馬車で通り過ぎながらぼんやりと考える。
 とても良い匂いがした。

「どうした? 疲れたのか?」

 不意に声を掛けられた。
 窓から目を離して正面に座る声の主の方を向く。

 ウェーブがかった金色の髪を頸の辺りで一つに束ねた、碧眼色白の美男。
 親子とはいえこんなに似るものなのかと驚くほどそっくりなこの世界での私の父、デルフィニウム公爵。

 私は21の時の子供なので現在は36歳。
 産まれてすぐに彼の顔を見た時、こんな若いイケメンが父親だと!?となってビビりまくった記憶がある。
 21歳って、まだ坊やじゃないか。

「いえ、相変わらず楽しそうな街だと思っただけです」
「そうか。行きたいところがあったら明日は好きに動いていいぞ。陛下の許可が出たら殿下もお誘いしてみると良い」
「ありがとうございます」

 穏やかに微笑む顔のいい男の人に満面の笑顔を向ける。
 ラッキー!察しがよくて好き!
 まぁどうせ護衛付きなんだろうけども。

 アレハンドロと護衛を撒くとかいうヤンチャもしてみたい気がするが、さすがにその勇気はない。責任とれないし。
 
 こういう時は、本当に15歳だったら向こう見ずなことも出来たのかなぁと寂しくなる。
 大人のつまらんところだわ。
 
 
 ◇
 
 
 
 王都にあるデルフィニウム邸で1泊し、今日はいよいよ皇帝陛下のいる宮殿に向かう。
 宮殿の周辺は貴族の別邸が並んでいる。
 馬車同士がすれ違う時には軽く挨拶し合った。

 この辺りで出会う人たちはだいたい貴族だ。
 治安維持のために道に立っている人たちは、通常の兵士ではなく、騎士と呼ばれるエリートたちである。

 宮殿に近づくにつれ、同じ方向に向かう馬車が増えてくる。
 そんな中、私たちの馬車に気がつくと、前の馬車が端に寄ったりして道を譲ってくれる。公爵家ってすごいなぁとこういう時にはヒシヒシと感じる。

 学校だとあまり分からないんだ。
 私が気遣わないでくれって言うせいもあるけれど。
 
 そんなわけで、ようやく宮殿に着いた。

 前回来た時は確か10年前だったので忘れていたが、ゴツくて豪華な門をくぐってから建物にたどり着くまでが長い長い。
 馬車で出入り出来て良かった。この広い芝生の庭、必要ある?って途中で思ってしまうくらい長かった。
 敷地内に人工的で真っ直ぐな川が流れているし。
 トイレに行きたい時だったら最悪だなという庶民の心を忘れない感想を抱いた。

 とはいうものの。

 庭園も川もその川沿いの舗装された道も美しい。
 今、目の前にあるお城は全体が白っぽい石造りの建物だ。
 形はドイツのノイシュバンシュタイン城というよりはフランスのベルサイユ宮殿。
 あれ、学校の時もベルサイユ宮殿て思ったな。想像力のボキャブラリーがないな。
 お城なんて同人誌の資料で見るくらいだから仕方がない。
 日本のお城は旅行でよく観たけれど。

 とにかく、縦よりも横に広ーいタイプのお城だ。
 
 デルフィニウム公爵は皇帝陛下に用事があると言っていたので、まずは謁見の間に行くのかな?王座に座る皇帝陛下が見られるのかな?とワクワクしていたが、

「皇帝陛下の執務室にご案内いたします」

 と、案内の人に言われてしまった。

 内心とてもガッカリだった。
 執務室も気になるけども。
 家にあるデルフィニウム公爵の執務室とそんなに変わらないだろう。

 と思っていたのだが。
 
(き、金ピカだ……!)

 床も天井も机も座り心地良さそうな椅子も本棚も、来客用であろうテーブルとソファも。

 全て全てゴールドで統一されている。

 そのギラッギラなところ以外は、大きな窓の前に仕事用の机があり、部屋の真ん中にはテーブルがあり、ザ・執務室!といった感じなのだが。

 なんせ金ピカだ。

 こんなところでよく仕事が出来るな。
 皇帝の趣味なのか?
 豊臣秀吉と気が合いそうだな。
 
 お部屋についての感想は顔に出さないようにしながら、デルフィニウム公爵の一歩後ろをついていく。
 呼ばれた割にはこの部屋の主はここにはいなかった。

「申し訳ございません。すぐにいらっしゃいますのでお待ちください」

 と言われて、テーブルの前に立って待つ。

 すると、ドタバタと足音が聞こえてくると共に大きな音を立てて勢いよく扉が開いた。
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