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第二章
皇帝陛下
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「久しぶりだなデルフィニウム!!」
よく通る声が部屋に響き渡った。
満面の笑顔で姿を現したのは、当然皇帝陛下だ。
アレハンドロと同じ銀色の髪、瞳の色は濃い灰色。肌は日に焼けているが褐色というほどではなかった。
年齢は確か今年で40歳。
全体的な顔の作りはアレハンドロに似ている気がするが、筋肉質な大きな体、無造作に跳ねている短い髪と明るい表情や豪快な空気感のせいで全然印象が違う。
デルフィニウム公爵と私は揃って頭を下げた。
すると、
「堅苦しい挨拶は無しにしてくれ!私とお前の仲だろう!」
と、近づいてきた皇帝が公爵の背中をバーンと叩いた。
とっても痛そう。
「……陛下……ご機嫌、麗しそうでなによりです……」
それでも笑顔を作っているデルフィニウム公爵すごい。
というか、「私とお前との」ってほど仲が良かったのか。
今まで会った時にはサラッと挨拶する程度だったから知らなかった。
その時は公の場だったから遠慮したんだろうか。
デルフィニウム公爵が顔を上げているので私も上げてしまう。
皇帝はじっと私の顔を見た。
「懐かしい顔だ。この年の時のデルフィニウムにそっっっくりだな!可愛らしい5歳の姿の記憶しかないが、立派に育ってなによりだ」
長らく会っていない親戚の子を相手にしているように頭を撫でられた。
「は、はい。ご無沙汰しております……?」
このおじさんの勢いが凄すぎて、色々考えていた挨拶が吹っ飛んだ。
二次元だとすごく好きなタイプなんだけど目の前にいると圧倒される。
「アレハンドロが世話になっているようだ!迷惑をかけていないか?」
本当にお世話してるし迷惑掛けられてます。
と、言うわけにはいくまい。
「いえ、とんでもございません。こちらこそ殿下にはお世話になっております」
よし!無難に笑顔で返せたぞ!と思ったのに、
「アレハンドロは世話しないだろう!」
と、ゲラゲラ笑っている。
うんまぁ人の世話するタイプじゃないけどそういうことじゃなくない?
こんなやかましいおっちゃんだったかなぁ。
5歳の頃に出会った時は、まだ皇帝にはなっていなかった。
そもそも、皇太子ですらない人だったのだ。
私が前回この宮殿に来たのは、故人に対してこう言うのもなんだが、傍若無人で有名だった前皇帝が「魔術の天才を見てみたい」と言いだしたからだった。
いくつか魔術を披露したところとても気に入られてしまって、
「今すぐ余のものになれ」
と。
(いやおっさん言い方悪すぎだろ気色悪いわ)
と呆れながらも、子どもらしくキョトンとした後、父親の方へ逃げようとした。
が、捕まって軽く抱き上げられてしまった。
暴れても大人しくしても身に危険がある気がして、この時ばかりはさすがの私も焦った。
アラフォーくらいの大柄の男の人に迫られるのは元の私でも普通に困るし怖い。
大人と子どもの体格差が更に恐怖を煽る。
こんな、いつ刺されてもおかしくなさそうな男の側で魔術師なんてしていたら命に関わりそうだからなんとしても避けたい。
デルフィニウム公爵は「まだあまりに幼いので」と断ってくれたのだが、前皇帝は言い出したらきかない人だった。
はっきり言って暴君だ。
パワハラ上司に逆らうのが難しい公爵が困っていると、
「兄上、シンはしっかりしているようだが5歳ではまだ親元を離れられんさ。精神が不安定になってこの膨大な魔力が暴走したら一大事だぞ」
と、笑いながら割って入って庇ってくれたのが前皇帝の5番目の弟だった現皇帝だ。後光が差して見えた。
(そうだそうだもっと言え!)
そうなったら余の他の魔術師たちが始末すればいいなんて、子ども本人やその親の前で言っていたのを
「相変わらず最低な人で無しだな!」
と、スパンとぶった斬って喧嘩を売っていた。
その言葉と同時に私は現皇帝の腕の中に取り返されていた。
「好きー!!」
ってなったし私がデルフィニウム公爵の立場だったら忠誠を誓っちゃうな。
もしかしたらこの後に2人は仲良くなったのかもしれない。
そんな人だから基本的には中央の政には参加させて貰えず、地方を色々回っていたと聞いている。
男の子に恵まれなかった前皇帝が病気で亡くなった際には何やら色々派閥闘争やらなんやらあったらしいが、最終的に今の皇帝がその闘争を収めて即位した。
思い出してみると、状況が状況だけにやかましいとは感じなかったけど、やかましそうな要素はあった気がしてきたな。
でも好き。
「陛下、部屋の外まで声が響き渡っていらっしゃいます」
完全に気圧されて色々考えている中、約1か月ぶりに聞く声が聞こえた。
振り返ると、澄まし顔のアレハンドロが扉を閉めながらこちらを向いていた。
「アレハンドロ!……さま」
間違えた。
アレハンドロ殿下とか皇太子殿下とか言わないといけない気がする。
なんだか嬉しくなってつい口が滑った。皇帝の執務室なのに。
ヤバいかなー、と思いながらアレハンドロを見ると、私の気持ちを察したのか、余裕のある笑みを浮かべられてしまう。アレハンドロの癖に。
皇帝はなんだか嬉しそうにニコニコしているが問題は、
「シン。お前に限ってまさか皇太子殿下を普段は呼び捨てにしているなんてことはないな?」
まぁまぁ真面目なデルフィニウム公爵が隣からものすごい圧を掛けてきていることだった。
うん、私も親の立場ならそう言うと思うわ。
よく通る声が部屋に響き渡った。
満面の笑顔で姿を現したのは、当然皇帝陛下だ。
アレハンドロと同じ銀色の髪、瞳の色は濃い灰色。肌は日に焼けているが褐色というほどではなかった。
年齢は確か今年で40歳。
全体的な顔の作りはアレハンドロに似ている気がするが、筋肉質な大きな体、無造作に跳ねている短い髪と明るい表情や豪快な空気感のせいで全然印象が違う。
デルフィニウム公爵と私は揃って頭を下げた。
すると、
「堅苦しい挨拶は無しにしてくれ!私とお前の仲だろう!」
と、近づいてきた皇帝が公爵の背中をバーンと叩いた。
とっても痛そう。
「……陛下……ご機嫌、麗しそうでなによりです……」
それでも笑顔を作っているデルフィニウム公爵すごい。
というか、「私とお前との」ってほど仲が良かったのか。
今まで会った時にはサラッと挨拶する程度だったから知らなかった。
その時は公の場だったから遠慮したんだろうか。
デルフィニウム公爵が顔を上げているので私も上げてしまう。
皇帝はじっと私の顔を見た。
「懐かしい顔だ。この年の時のデルフィニウムにそっっっくりだな!可愛らしい5歳の姿の記憶しかないが、立派に育ってなによりだ」
長らく会っていない親戚の子を相手にしているように頭を撫でられた。
「は、はい。ご無沙汰しております……?」
このおじさんの勢いが凄すぎて、色々考えていた挨拶が吹っ飛んだ。
二次元だとすごく好きなタイプなんだけど目の前にいると圧倒される。
「アレハンドロが世話になっているようだ!迷惑をかけていないか?」
本当にお世話してるし迷惑掛けられてます。
と、言うわけにはいくまい。
「いえ、とんでもございません。こちらこそ殿下にはお世話になっております」
よし!無難に笑顔で返せたぞ!と思ったのに、
「アレハンドロは世話しないだろう!」
と、ゲラゲラ笑っている。
うんまぁ人の世話するタイプじゃないけどそういうことじゃなくない?
こんなやかましいおっちゃんだったかなぁ。
5歳の頃に出会った時は、まだ皇帝にはなっていなかった。
そもそも、皇太子ですらない人だったのだ。
私が前回この宮殿に来たのは、故人に対してこう言うのもなんだが、傍若無人で有名だった前皇帝が「魔術の天才を見てみたい」と言いだしたからだった。
いくつか魔術を披露したところとても気に入られてしまって、
「今すぐ余のものになれ」
と。
(いやおっさん言い方悪すぎだろ気色悪いわ)
と呆れながらも、子どもらしくキョトンとした後、父親の方へ逃げようとした。
が、捕まって軽く抱き上げられてしまった。
暴れても大人しくしても身に危険がある気がして、この時ばかりはさすがの私も焦った。
アラフォーくらいの大柄の男の人に迫られるのは元の私でも普通に困るし怖い。
大人と子どもの体格差が更に恐怖を煽る。
こんな、いつ刺されてもおかしくなさそうな男の側で魔術師なんてしていたら命に関わりそうだからなんとしても避けたい。
デルフィニウム公爵は「まだあまりに幼いので」と断ってくれたのだが、前皇帝は言い出したらきかない人だった。
はっきり言って暴君だ。
パワハラ上司に逆らうのが難しい公爵が困っていると、
「兄上、シンはしっかりしているようだが5歳ではまだ親元を離れられんさ。精神が不安定になってこの膨大な魔力が暴走したら一大事だぞ」
と、笑いながら割って入って庇ってくれたのが前皇帝の5番目の弟だった現皇帝だ。後光が差して見えた。
(そうだそうだもっと言え!)
そうなったら余の他の魔術師たちが始末すればいいなんて、子ども本人やその親の前で言っていたのを
「相変わらず最低な人で無しだな!」
と、スパンとぶった斬って喧嘩を売っていた。
その言葉と同時に私は現皇帝の腕の中に取り返されていた。
「好きー!!」
ってなったし私がデルフィニウム公爵の立場だったら忠誠を誓っちゃうな。
もしかしたらこの後に2人は仲良くなったのかもしれない。
そんな人だから基本的には中央の政には参加させて貰えず、地方を色々回っていたと聞いている。
男の子に恵まれなかった前皇帝が病気で亡くなった際には何やら色々派閥闘争やらなんやらあったらしいが、最終的に今の皇帝がその闘争を収めて即位した。
思い出してみると、状況が状況だけにやかましいとは感じなかったけど、やかましそうな要素はあった気がしてきたな。
でも好き。
「陛下、部屋の外まで声が響き渡っていらっしゃいます」
完全に気圧されて色々考えている中、約1か月ぶりに聞く声が聞こえた。
振り返ると、澄まし顔のアレハンドロが扉を閉めながらこちらを向いていた。
「アレハンドロ!……さま」
間違えた。
アレハンドロ殿下とか皇太子殿下とか言わないといけない気がする。
なんだか嬉しくなってつい口が滑った。皇帝の執務室なのに。
ヤバいかなー、と思いながらアレハンドロを見ると、私の気持ちを察したのか、余裕のある笑みを浮かべられてしまう。アレハンドロの癖に。
皇帝はなんだか嬉しそうにニコニコしているが問題は、
「シン。お前に限ってまさか皇太子殿下を普段は呼び捨てにしているなんてことはないな?」
まぁまぁ真面目なデルフィニウム公爵が隣からものすごい圧を掛けてきていることだった。
うん、私も親の立場ならそう言うと思うわ。
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