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第十二話
しおりを挟む今日は色々あったな……
車両ドア横にある仕切りに寄りかかりながら今日の出来事を思い出す。
前世なら、真っ直ぐに帰っていたであろう帰り道。
でも、悪役に転生したことで折角手にした二度目の人生を無駄にしないために、意識して生活するだけでこんなにも世界は一変した。
いや、口を開いているだけで飛びつけば手にできていたかもしれないものに気が付けただけかもしれない。
学生生活って、こんなに楽しいモノだったんだな……よし、これからも破滅の未来を回避するために色々頑張って――――
「おっと!」
電車が揺れバランスを崩してしまう。
倒れるほどではなかったが、それ以上のことに気が付いた。
成嶋さんがニヤニヤと微笑んでいた。
「……んだよ、人の顔みてニヤニヤしやがって」
「別にぃ、それと私女の子なんだけど?」
「逆にその見た目でチ〇コついてたら脳がバグるわ」
「そう言う意味じゃなくて……」
「はぁ……」とため息を付くとコイツまじか……と言わんばかりの表情で俺を見つめる。
「そうじゃなくて、痴漢から守ってくるのはうれしいけどさ普通そう言うポジションを譲ってくれてもいいと思うんだけど……」
「さっき妊婦さんに席譲ったのは成嶋さんだし……まあ、約束は守ってるからいいかなって?」
「言わんとすることは判るけど……私もう少しぐらい優しくされてもいいと思うの!」
「それを自分で言うか?」
「私はNOと言える日本人よ! それぐらい言えるわ」
「誇るな」
「そう言うノリのいいところ好きよ。あと自分の意見をハッキリと言えるところもね」
「……」
「ん? 顔が赤い見たいだけどどうかした?」
「す、好きとかそう言うことサラっと言うなよ……照れ臭いだろ……」
自分の顔が熱くなるのを感じる。
女子といままでこんな話をしたことないのに……それを言って来た相手が成嶋だと余計に照れ臭い。
「ふふふっ、結構可愛いところあるのね。真堂くんて見た目に反して結構表情に出るよね? 入学式の時から考えるとまるで別人みたい」
「……そうかもな」
「気を悪くしないでね? 確かに、行動力とか言動とか真堂くんが私を痴漢から助けてくれて以来、全然違うもの……」
「ホラ」
そう言って彼女と場所を入れ替わる。
「譲って欲しかったんだろ?」
「いいの?」
「つり革か手すりもってれば大丈夫だ……それに今の時間は学生ばっかりでもないし、そこのばしょのほうが痴漢からは守り易い」
「なら遠慮なく……」
そう言って俺が元居た場所に少女は背中を預ける。
そのまま俺達は特別な会話をすることなくスマホを弄って、目的地が来るのを待った。
「今日は送ってくれてありがと……」
「別に大したことはしてないよ一駅戻るだけだし……」
「別に私の地元の駅まで送ってくれなくてもいいのよ?」
「後悔したくないんだ。一度引き受けた事だし出来ることは全力でやり通したい」
「へんなの、じゃあね真堂くん今日もありがとう」
「おう!、また明日学校でな」
笑顔で手を振ると彼女は改札に向かって歩いて行った。
電源の入っていないスマホを眺める。
「なんか、まだ現実感ないな……」
文字とイラスト、そしてテレビの中にしか存在しなかったキャラクター達と同じ教室で一緒に勉強するなんて……
何よりも“悪役”に転生して、自分の運命を呪ったものの打開策のヒントをくれたのは彼女『成嶋明日羽』だった。
だがそれもまだ第一歩でしかない。
「人生何があるか本当に判らないな……」
そんなことを考えていると、スマホに通知が来た。
画面にはメッセージの通知と送信者の名前があった。
妹の鈴乃からだった。
『今日、帰ってくるの遅くなるらしいんだけどさ、それなら私焼肉食べに行きたい!』
焼肉か……十代の時に比べると最近は敬遠していた。
第一関門を乗り越えられたお祝いに食べるのはアリだな……
そうと決まれば即断即決。
俺は返信を打ち込んだ。
『了解』
鈴乃にLIMEを返すとスマホをしまい成嶋さんの最寄り駅を後にした。
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