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第9話RPGの装備は、少し無理をしてでも次の街で良いモノを買え

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折角のオフ会なんだからと、数戦お互いの試合を見ながらリアルタイムでアドバイスをしあって、お互いの足りない部分を実感していた。

「あぁ~~楽しかった。ユタカくん折角名古屋まで来たのだから、ウィンドウショッピングでもしていかない?」


三ヶ日さんの何気ない提案に彼女いない歴イコール年齢としては、ドキッとくるものがある。


「別に構わないけど……俺今日そんなに金持ってきてないんだけど……」

「別にここで買うつもりはないのよ……服や小物なんてのはネットで買ったほうが、安いんだから実物を見て判断するだけよ」

「町の小売商店(パパママストア)が潰れる原因は、デパートやショッピングモールに大規模小売店と、ネット商店のせいなんだよなぁ……」

「パパママストア? あぁ商店街みたいなお店の事かな……確かに価格を比べると通販には絶対に負けるよね……まぁ直ぐに商品が手に入るという事を考えればしょうがないのだけれど……確かに少しでも安く買う事しか頭になかったわね……」

「地域の雇用を考えると少し割高でも必要なんだよなぁ~。まぁウォ〇マートなんかは周囲の小売店を潰してその客を奪い、その従業員を格安で雇い自分の所の製品を買わせて、最低限の利益を出すって岡田〇司夫が言ってたし……」

「ふーん。雑学と言うものは人生を彩り豊かにはする知識だけれど、男女の交友においては、肉における胡椒のようなものでかけすぎは良くないわ」


確かに余計な事を語りすぎたようだ。


「……まぁこれは人間観察も兼ねているのよ。アナタがどんな人間になりたいのかと言う目標設定も兼ねているのよ」


「なるほど」

「ゲーム風に言うなら、どんなビルドにするのかっていう流行を感じてね」


なるほど周りの出来る奴を見て、どういう風にしたいのかを決めろという事だろう。


「わかった周りを見てみるよ……」

「良い心がけね……今から学校が始まるまでには、幸い一カ月以上も時間があるわ……自分を磨くには少し物足りない時間だけれど」

 名古屋の町並みは、豊橋市と比べると雲泥の差があり道行く人々のファッションも、豊橋と比べれば派手の一言に尽きる。
 しかし、この世界ではリア充になると決めたのだから、ハデだの格好いいだのと、一言二言の語彙の無い感想を言っているだけではダメだ。必要なのは感想ではなく知識だからだ。今必要な事は少しでもインプットをして自分の引き出しを広げることだ。


「そうだな時間はある……」


三ヶ日は俺の顔を覗き込むと俺の頬を両の手で押さえつけて、タコの様な口にさせるとニッコリと笑った。


「なーに。おっさん臭い事を言ってるのよ今までの15年間も時間はあったけれど立ち向かえなったのがアナタよ!」


確かに彼女の言うとおりだ。実際には彼女の言った時間の2倍ほどではあるのだが……


「でもね。あなたは自分の弱さと向き合った。いつかはやらなきゃいけない事よ? でも。行動に移すのはとっても難しい事なのよだから誇りを持ちなさい」

「そうだな」


ふと顔を上げると、男にしては少し長めの茶髪にパーマをかけたツーブロックに、マッシュを合せた髪型の二十台前半のスラリとした男性がそこに居た。
少なくとも未来ではこういう髪型が流行っていた気がする。


「よし。じゃぁあの茶髪の人みたいなのがいいな……」


俺の一言に彼女は、一瞬試案するような表情を浮かべる。


「……努力がかなり必要よ?」


それはそうだろう。俺は彼ほど痩せている訳でもなければイケメンという訳でもないのだから……
だから俺はこう答える。


「イケメンと同じような土俵に上がるんだ覚悟してる」

「そう」


彼女は満足そうに頷くと、男性に向かって駆け寄った。


「あのーすいません」


臆することなく年上の男性に、話しかけていく姿に俺は敬意の念を覚えた。
俺が仕事を始めたばかりの頃や新人にも、アレだけの度胸持った奴はなかなかいなかったからだ。


「なにかな?」


青年は嫌な顔一つせずにニッコリと微笑んだ。


「ちょっと今お時間ありますか? 五分だけでいいんです」

「なにかな?」

「コイツがアナタみたいになりたいって言ってて……」


そう言うとおれの服の袖をグイと掴んで手繰り寄せた。


「彼が?」


三ヶ日は「チャンスは作ってやったんだからあとは自分で何とかしろ」と、目で合図した。


「その髪型すごく恰好良いなぁって思って、俺もそんな髪型にしたら自分にも自信がつくかもって……良ければ美容室か美容師さんを紹介してください!」


一瞬戸惑いの表情を浮かべるが俺の顔と言うかパーツをジッと観察する。


「うんもちろんいいよ。付いてきな」

「予定とかあったんじゃ……」

「良いの良いの少し遠いけど我慢してね。あ、俺こういうものです一応ね……」


そう言って差し出した名刺にはピ・ヴォワーヌ専属美容師。小碓《おうす》武《タケル》と書いてあった。

「新人美容師だけどそこそこ名前の通った店に居るんだ。ければカットモデルってことにしてくれれば料金も無料でやらせてもらうから。今日駅にいたのもカットモデルを探すためだったんだ」

「いいじゃない渡りに船……いえ地獄に仏と言ったほうが正しいかしら……」


なんでモノの例えが悪くなってるんですか三ヶ日さん……

「ぜひお願いします」

「任せてくれ。君を持て男へ変身させて見せる。何の実績もない新人だけど……」

「いえ。絶対この髪型流行ると思いますよ」


俺がいた未来ではな。


「じゃぁ行こうか君たち学生だろ? 出来るだけ早めに完成させるから」


そう言って俺達は美容室へと向かうことになった。


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