5 / 18

第5話 

しおりを挟む
「xxxxxxxxx!」

 なんだこの声は……

 男の怒声のような聞こえる。しかし不思議と恐怖感はない。
どちらかと言えば安心感さえ覚える。奇妙だ。
 微睡の中にいるように何とも言い難い。気怠さが身体を支配している。
 取りあえず寝た状態から身体を起こそうと手を動かすが、バタバタと大雑把に動くだけで上半身を起こすほどの膂力はないようだ。
 肥えた訳でも大病を患った訳でもないのに、身体が持ち上がらなかった。
 否、正確に言えば上がらないのだ。

「――――ッ!!」

 息が出来ない。
呼吸の仕方をまるで知らないように、体が俺の言う事を聞かない。
呼吸ができず苦しんでいると、お尻の辺りに衝撃が走る。

――――バシン!

(痛いって!)

 するともう一度ケツが叩かれる。

――――バシン!  

 叩《はた》くとかそう言うのじゃなくて、体を揺さぶる……そんな衝撃が何度も走る。
 痛みと衝撃に耐えられなくなって終に口から声が漏れる。

「えっえっ……ふぎゅあ、ほぎゃぁああぁぁぁぁぁ――――!!」

 まるで赤子の鳴き声のよな声が俺の口から発せられていた。

(は? 何なんだこれ……何が起こってるんだ? なんで俺喋れないんだ? 意識は間違いなくあるだが体が動かない)

 一所懸命喋ろうと試みるが、老人や赤子のように何を言っているか分からない言葉しか話せない。

 肺は新鮮な空気を求め、酸素を吸収していく。
 泣いたお陰か、呼吸の仕方をこの幼い体は理解したようで先ほどまでの息苦しさはない。

「xxxxxxxxxxxxxxxxxx」

 優しい女の声が聞こえる。
だが何を喋っているのかはさっぱり分からない。
しかし彼女の優し気な声音からは敵意や害意を感じる事はない。
もっとこう……母性……慈愛? そう言った優しさを感じる。
 
だが女性の声は、到底大和の言葉を喋っているようには聞こえない。

(もしかして……俺は清明様の言う通り、未来の日の本の赤子に転生したのだろうか?)

 俺の眼も耳もロクに見えないし聞こえない。
 だがその分他の感覚は冴えわたっている。

 そんな事を考えていると、この小さな体の体力が尽きたのか眠りに落ちた。

………
……


 どうやら俺、安部春秋は『播磨守』(安部晴明)様の仰る通り通りどうやら赤子に転生したようだ。
 先ずはこの国の話をしよう。どうやら今世では日の本は、日本と言うらしく東国よりも北……北海道から九州よりも南西にある沖縄と言う地域を領有し、五十年以上も平和な世が続いている。 
 着物は祭りや縁日でしか着ず洋服という舶来品……唐よりも西にある異国の服を好んで来ている様であった。

 一番驚いたのは科学と言う技術だ。馬の無い車が走り、遠く離れた人と人が会話をすることが出来るなどと、都の貴族に話をしても到底信じては貰えないだろう。

まぁ優れた陰陽術の使い手であれば出来た事ではあるが……

 それが術者でもない人間でも出来るとなれば、我々陰陽師はもう必要のない世なのかもしれない。

 俺が産まれてから早約六年が経過した。
 この六年間の間の出来事を軽く語ろう。

 先ず俺の苗字は土御門《つちみかど》と言うらしい。
 どうやら安部家の子孫を名乗る家柄であり、父は現代の陰陽師らしいが、父の腕は世辞にもいいとは言いため稼ぎは低めらしい。

 ならば父に優秀な兄弟がいるのか? と思うがどうやら陰陽師として最も基本的な才能である。見鬼けんきの才が無いらしく、土御門家は正直に言って没落していると言っていいのだが、それでも陰陽師を続けなくてはいけないらしく稼ぎは低い。

 陰陽師として頭角を現すにも、それ以外の道で生きるにも先ずは勉学だ。と言う訳で俺は勉強を始めた。

 唐国の言葉で記された書物を読めた俺には、現代の日本語などは存外簡単に習得できると思っていたのだが……新字と呼ばれる平易な漢字の出現や、平仮名、片仮名の変化に戸惑う所はあれども読むだけなら一年ほどで習得出来た。

 転生した家……土御門家は分家らしく、貴重な書物がある訳ではないのだが、腐っても旧家蔵や書斎には多くの書が眠っている。普段は明るくないものの本を読む時は明かりを付けている。昔なら術で灯を確保していたが、すっかり近代文明になれた今の俺はライトで灯を確保する。時々前世の習慣が懐かしく感じるが、便利なのは今生のは間違いない。

 本を読んだり、父から術を習い前世で習った術と照らし合わせ習得する。
 当然この千年間で進歩した技術体系もあれば、千年前の方が優れた技術も存在する。

 元々新しい技術は好きだったので、自分が習ったものが間違っていた。遅れていた。劣っていたと突きつけられ少し悲しいと感じる部分はあったが、千年間で変わらないものなどないのだと自分に言い聞かせる。

……そんな日の事だった。

春明はるあき今日は陰陽師一族の集会がある。東京へ行くぞ」

 土御門春明はるあき……それが新しい俺の名前だ。
 東京……あぁ、辺境地である東国の武蔵国の今の名前だったか……

「わかったよ。パパ」

 どうやら今回向かうのは毎年開かれる。七歳以上になる旧家の陰陽師達のお披露目会であるらしく、都のあった京都・奈良と東京で三交代制で行われるらしい。
 父曰く意地の張り合いなのだとか……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...