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第21話四歳の誕生日のその後上
しおりを挟む俺の内々でのお披露目会が終わり、お爺様とノーフォーク十二家の全員が屋敷に宿泊する事になった。十二家の配下や騎士爵や騎士を始めとする関係者は、爵位やノーフォーク家の序列順で城下町の宿屋や屋敷の客間に宿泊する事になった。
経済効果を考えれば、凄まじい効果をもたらすのは明白と言っていい。
そんな状態で屋敷の主人の部屋には、父の乳兄弟で友人のソウルベリー子爵公子ウィリアム・フォン・フッテンが招かれていた。
「久しぶりだなウィル!」
ドアを開けて直ぐの場所で、お互いに立ったまま旧交を温めている。
「そっちこそ」
そう言って父パウルはガタイの良い茶髪の男を抱擁した。
二人の関係を見る限り、乳兄弟とは本来当主の右腕となるような存在が割り当てられ、本当の兄弟や姉妹のような関係を築くのだろうが、俺とグリンダのように男女であると、ベリンダの旦那を重用する事になり少し関係値が弱くなってしまう。
「そっちの子供がお前の倅か……お前に似ず随分と利発そうじゃないか、ご当主様への対応を直ぐ後で見ていたが他派閥の奴ら皆度肝を抜かれて居たぞ?」
「この子は本当に優秀だからな……自慢の息子だよ。ユーサー挨拶なさい」
相手は子爵公子という事は、爵位に直せば男爵位相当。ソウルベリー子爵が他に男爵や準男爵、騎士爵、勲功爵・勲爵士を持っていれば、その爵位に準ずる扱いになるのだが生憎とそこまでは覚えていない。
公爵孫である俺は、伯爵位相当なので上位者としての挨拶をすれば、慣習には問題ないがモラルとして問題がある。相手は父の友人として接しているのに冷や水をかける訳にもいかない。ここはラフに行こう……
略式の挨拶である会釈の後に言葉を紡ぐ……
「お初にお目にかかります。ウィリアム卿ノーフォーク公爵が長子パウルが息子ユーサー・フォン・ハワードと申します」
「まだ少し硬いかな……ユーサー君は挨拶と言うモノを形式的に囚われ過ぎている感じがする。年のわりに優秀だけども少し場数が必要かな……」
ウィリアムからの批評を聞いてその通りだと思った。こういう風に挨拶をすると言う知識はあっても、TPOに準拠したやり方をまだ知らない。
「はい。五歳のお披露目が終わり次第、挨拶の練習のため領内を回ります」
「挨拶回りは良いことだ。だが幼過ぎる。もう少し先でもいいと思うケドね」
――――と苦笑いを浮かべている。
「確かに、ユーサーは既に家庭教師の教育課程を修了しているから、他の子供よりも成長が数倍速いが……旅は色々と危険も多い。もう少し大人になってからの方が妻も安心するだろう……」
「分かりました。10歳になったら旅をします」
俺の言葉にウィリアムさんは茶化すような発言をする。
「外に出たいのは親子そろって同じなんだな」
「俺の事はいいだろう?」
ウィリアムの言葉に父が少し拗ねたような口調で返事を返す。
「家の娘の方が年上なんだが、ユーサー君の方が賢そうだ。今度連れてくるから遊んでやってくれ、弟が欲しいって五月蠅くてたまらない。普段関わらない人と関わるのもいい経験になるぞ?」
「……分かりました」
父の友人で俺の支援者の言葉とあっては、立場の弱い俺は「はい」と首を縦に振るしかない。前世と同じだな……
「家の娘は自分で言うのもなんだが、男勝りだが美人で家臣の悪童共のトップをしている。年もそんなに離れてないからお互いいい刺激になるだろうさ」
面倒臭そうな女の子の相手をしなきゃならんのは辛いが、これも未来の公爵となるため、多少の事は我慢して甘んじて受け入れよう……
父が白磁器に並々と注がれた紅茶に一口。口を付け口内を湿らせると本題を切り出した。
「……それで俺と俺の息子をソウルベリー子爵家は、当主へと推挙してくれるのか?」
父の言葉で場の空気が凍るのを肌で感じる。
暫くの間を開けてウィリアムは答えた。
「無論だ。しかし君が冒険者として家を飛び出していた間に、次男のヘンリー様、三男のフランキー様の勢力は着実に増えた」
「それでも俺の優位性はまだある」
「だがヘンリー様もフランキー様の子供も、男児でユーサー君よりも年上オマケにノーフォーク十二家の支持は、次男派と三男派で半数程度を占めている長男家パウル・ユーサー君の支持は、我がソウルベリー子爵家とユーサー君の乳母のカルデコート子爵家の二家のみ……中立派の残り家を取り込めれば勝利出来る」
「幸いな事にヘンリーもフランキーも自身の乳母は十二家ではない。ヘンリーの息子の乳母はハーディング子爵夫人、フランキーの息子の乳母はキャムローズ子爵夫人まだ巻き返せる!」
二家共に固定票は1つ。それにたいして長男家は2つも不動評を持っており、残り8票は動く可能性があるという事だ。少し不利とは言え俺が麒麟児ムーブをすれば挽回できる範囲だ。
「貴族は血の柵があるから厳密にその通り……って訳にはいかないが概ねその通りだ。難しい話してたら小腹が空いてしまった。菓子パンでもパイでも何でもいい何かないか?」
「パーティーの余りがあるハズだ。それでよければ直ぐにでも出せると思うぞ」
「贅沢は言わねぇ。人の食いかけでなければ何でもいいさ……」
「それでは、タルト・タタンを食べて頂きましょう」
「タルト・タタン? なんだそれは?」
「今日のパーティーでも振る舞った。優しい甘さの新しい貴族のお菓子ですよ」
「ほう……」
こうして新しい貴族のお菓子タルト・タタンはまた一人ファンを増やし、世に羽ばたいていく事になりました。
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