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第25話馬車を改造しよう
しおりを挟む昨今のWEB小説において馬車やそれに類する乗り物が出た時には、板バネやらスプリングやら、ボールベアリングやらと後者に行けば行くほど、技術的に難しいモノを登場させようとする。
板バネが限界やろ……と俺は思うのだが……
現在公爵家にある馬車は、全て座席は懸架されているため、商人などが使う馬車に比べれば揺れは少ないらしい。
それでも昔友人に乗せてもらったオフロード車よりは揺れる。
――――という事で、魔法の先生でもある我らが先生。スヴェことスヴェトラーナ・アレクサンドロヴナ・ポクロンスカヤ氏を招いて、古くなり廃棄予定の公爵家所有の馬車を用いて、工作を開始していた。
先ずは簡単な板バネ事重ね板ばねを用いた馬車を作る事にした。
「あえて砂糖を焦がしたお菓子の時と言い……相変わらず変な事思いつくわね……まぁいいわ。今度は馬車を改造するのね。良いわ手伝ってあげる」
スヴェータの協力の元馬車を改造する事にした。
「よいしょっと……」
俺は四枚の板を重ねスヴェータの前に置いた。
「コレをどうすればいいの?」
「お湯の中に沈めて少しずつ曲げるんだよ」
俺は前世でみたスキー板の作り方を思い出しながら説明する。木にワザと重りなどを付け、ゆっくりと曲げながら育てる事で少し加工すれば曲がった板が出来ると言うモノだった。
木と言うモノは伐採され木材となり、加工された後も呼吸をし生きているのだ。
今回はその性質を利用し、水分を含ませ細胞壁が膨張し柔らかくなったところで、万力を利用しながらゆっくりと変形させる工程を短縮するための機材として、スヴェータを呼んだのだ。
「あぁ滑り板をみたいなのを作りたいのね……任せて」
水属性の魔法の水球と火属性の魔法の火球を用いて、大量のお湯を用意する。
そのままゆっくりと、念力のようなものを用いて曲げ木材を圧着させ風魔法と水魔法を用いて脱水している。
「はい出来たわよ」
そう言って渡されたのは、俺が羊皮紙に書いて見せた完成予想図に書いたモノそのままで、「つ」の字のように湾曲したソレは、重ね板ばねと呼ばれるモノだった。
「凄い魔法技術だ……」
「どこで感動してるのよ! 普通は大魔法を見たときとかに驚くモノでしょうが」
「まぁそうなんですけど……地味な技術のほうが伝わり辛いですが凄さは感じますよ……」
「まぁそうだけど……それでコレをどうするの?」
「車軸の上に金具で固定するんだよ。よいしょ」
おれはそう言って四本のタイヤを持ち出した。
「タイヤも弄るのね……」
「馬車が揺れるのは、地面から衝撃が伝わって来る事が原因だ。つまり地面からの衝撃を減らしてやればいいのさ……」
「だから車輪に革が張ってあるのね」
「騎士にお願いして今回は昨年大量発生した。熊のモンスターの革をふんだんに使って、革職人さんにお願いしておいたんだ。厚い革を三重に張り合わせてあるから、早々革が破れる心配はない。なんたって、剣も弾くような剛革なんだから……」
「げっ! フレイム・グリズリーの革をつかってるの? 信じらんない」
「まぁ文句言わずにさっさと固定すれば完成するから……」
俺はスヴェを宥めて作業を手伝わせる。
土台部分に先ずは、革性のタイヤ擬きを履いた車輪を取り付ける。カー用品店で働いていた身としては、ナットで固定していないのは、強い違和感を感じる。構造的な不安と言い換えてもいい。
検査員さんに「メーカー事のナットの締め付けトルクは幾つだ!」と意地悪な質問をされたものだが、この世界には煩わしい車メーカーは存在しない。
タイヤ擬きとは言っても、まだホイールとタイヤと言う風に車輪から分離していないのだから、構造的な未熟さは致し方がない。
久しぶりに前世の事を思い出して懐かしさを覚えるが、この世界には残念ながら、あの当時店舗スタッフ兼ピット作業員の補佐として身に着けた。スキルを活かす機会は無いと思うと物悲しくもある。
俺は客車を取り外した台の部分の車軸の上に、金具を用いて固定する。コレを四か所。そしてスヴェに手伝ってもらい新しく作った立派な乗車部分を重ね板ばねの上に乗せて、金具で固定する。
釘等ではなく金具で固定するのは、メンテナンス作業のしやすさの確保と、下手に釘などで固定すると重ね板ばねが割れる可能性が高いからだ。
「これで揺れが今まで以上に収まるの?」
「多分だけどね……物は試しだ乗ってみよう」
俺はスヴェータを誘い。御者に馬を付けてもらい屋敷の裏庭から正面の入り口に向けて走らせてもらう。
「凄い! 今までよりも揺れが少ない。あの板のお陰ね」
「概ねその通りだよ。板で大きな衝撃を吸収して、革を巻いた車輪は小石や小さな段差などで、揺れたりするのを抑えてくれる……この二つが合わさる事で揺れは、今まで以上に軽減されているんだ」
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