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第33話決闘《フェーデ》下
しおりを挟む「――――クソッ!」
ジャンは心底悔しそうな表情を浮かべ、地面を握った拳で打ち付けた。
それを見て取り巻き達は駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
そう言って、ひょろい取り巻きは巨漢のジャンの上半身を抱え起こす。
「痛ててて……」
その様子を見ていたもう一人の取り巻きは声を上げる。
「おい! テメェ身体強化の魔法を使いやがったな! じゃなきゃジャンが負けるハズない!」
その声にひょろい取り巻きは「そうだ! お前ズルしやがったな!」と同調する。
「はぁ……」
俺は溜め息を付くと、身体強を使っていない証明をする面倒くささに頭を悩ませる。
仕方ないので、スヴェに習った身体強化魔法の説明をしてあげる事にしよう……
「身体強化は、火球等とは違い外に働きかけない分使う魔力が少ないので、魔力量の少ない人でも使える数少ない魔法だ」
「だったら――――」
俺の説明に被せるようにひょろが言葉を被せる。
「お前は上官の説明を遮るのか?」
俺は魔力を体外に放出し威圧する。
魔力は人類にとって必要不可欠なモノだが、強く浴び過ぎれば恐怖心を感じ人によっては、船酔いのような吐き気を感じたり気絶したりする。
俺は魔力のコントロールが苦手なので、怒りによって漏れてしまった魔力の元栓を閉じた感じだ。
「――――ッ!」
「説明を続けましょう……しかし、回復魔法も含め体内に作用する魔法の難易度は総じて高く、身体強化魔法と呼べるほど強力なモノには、魔力操作の技術がかなり必要になる。
残念ながら俺は魔力量が多すぎて上手く操作しきれないんだ……身体強化なんて上等なものは使えない。もし使えたとしても勝てばいいんだ。使えないお前らが悪い」
「「「――――ッ!」」」
「神に誓おう、今回俺は身体強化魔法は使っていない。
よければその身を持って疑似的な体験させてあげよう……」
俺は魔力を無理やり体の形に留め地面を踏み締める。
――――ドン!
刹那。
俺の言葉を遮ったガリが剣を振って迎撃するよりも前に、ユーサーの魔力を込めた右ストレートが、ガリの胸にめり込んで綺麗に後ろに吹き飛ぶ。
「ぐはッ――――」
ガリは、パンチの衝撃と痛みで肺の空気を全て吐き出したのか、声にならない声を上げ「く」の字で飛んでいき、数度地面を見ず切石のように跳ねるとようやく止まった。
地面に手を突いて立ち上がろうとしているが、痛みで立つ事は出来ないようだ。
胸は上下しているか生きてはいるようだ。
(あぶねぇ……小姓ってこんなに弱いの? 全力で殴ってたら死んでたかも……)
「これが身体強化魔法を使っている状態を再現したものだ。俺のような五歳児でも、鋼鉄の長剣を振り回せる身体能力を与えるのが身体強化魔法だ。これで俺が魔法を使っていない証明には十分だろう……」
「――――ッひぃぃぃいぃいいいいいい!」
ひょろは俺に背を向けず後ずさりをしている。
「二人とも可哀そうだろ? ジャンは鎖骨の骨折。ガリは肋骨の骨折。記念だからひょろも怪我しておこうよ。そうしないと情状酌量の余地と言うか同情されないからさ……」
全力で逃げるひょろに追いつくと、人差し指と中指をクイクイと動かしかかって来いと合図を出す。
子守女中のマリーネ・マグヴァレッジに習った。素手格闘術と前世で習った事のある空手と柔道を試す事にした。
ひょろは恐怖心からか腰が引けていて、攻撃も無駄に大振りなモノが多い。
「えい! ヴぇい!」
大振りの攻撃は殴っている側からの見栄えは良いが、第三者視点や殴られる側から見ると随分と滑稽に映る。
手の甲や掌でパンチを反らし、合間合間に反撃を当てていく。
「ぐふッ!」
殴って来た手を掴んで、市政を崩しそのまま足をかけ膝を蹴り腕力で押し倒し、柔道の大外刈りの亜種を掛け投げ飛ばす。
「がはッ!」
立ち上がるまで待ってやり、攻撃してきたところを身体を使って切るように躱し、上段回し蹴りを胸に当てるとひょろは膝から崩れ落ちた。
この程度の戦いしか出来ない奴が、この世界の士官である騎士になるだと……巫山戯な!
教師役である騎士達と教育課程の見直しを提案しなくては……はぁ、めんどくさい……。
まぁ一カ月と言う早い段階で軌道修正出来て良かったと思うべきか……悩ましい。
「この程度で当家の騎士になるだと……騎士とはこの世界の戦場においては決戦兵種なんだぞ? それが! こんなに! 弱くて! どうなる!」
俺は余計な手間を掛けさせられた。怒りを込めてひょろの身体をサッカーボールのように蹴る。
昔の偉い人はこう言いましたボールは友達だと。
流石に疲れた。
ぜぇぜぇと肩で息をしながら声を張って三人の馬鹿共に説明してやる。
「いいか? お前らは三人で模擬戦をした結果怪我をした。
本来ならお前らとお前らの両親の首ぐらいで話を付ける所を、魔法を使わなければ全治3か月程度の怪我で済ませてやるって言ってるんだ。全員に怪我をさせたのも例えバレたとしても、手打ちにしやすいようにと配慮しての事だ。俺はお前らに期待してるからこうやって配慮してやってるんだ」
俺は木剣をその辺に捨てるとゆっくりとした足取りで、近くにある花畑に向かって歩き始めた。
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