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第12話 転生陰陽師は実力を見せる
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「ホラね? やっぱり何かあった」
隠形印……印相から見て摩利支天の隠形を使い潜んでいたのだろう。
摩利支天の隠形の本質は三種あると言うが、彼女は気配を消すことに特化している。
「直毘人大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「だめだろ? いきなり式を打つなんて……」
「なんかあるのに分からないのが気持ち悪くて……」
「それでもだ!」
「あなた、そのぐらいにしてあげて……」
ここで母が助け船を出してくれる。
「ご夫妻、申し訳ございません。私の術が未熟だったばかりにご子息に不快な思いをさせてしまいました」
細身で長身の女性が謝罪の言葉を口にする。
しかし、表情も言葉も薄っぺらい。
全く思ってもいないというのがひしひしと伝わってくる。
言葉の端々に怒りのようなものを感じる。
パンツスタイルはキャリアウーマンと言った雰囲気であるものの、墨汁のような黒い長髪は大和撫子と言いたくなるが、隠せないメンタルが病んでいる系の雰囲気を発している。
「君は?」
「申し遅れました。土岐菖蒲《ときあやめ》と申します」
「これはこれは清和源氏の……鬼斬りの一族にお会いできるとは……光栄なことだ」
清和源氏? 武士のカリスマである源頼光の子孫か……
「私など……鬼や牛鬼、土蜘蛛と言った名だたる大禍津日《オオマガツヒ》を斬った祖先に比べればまだまだです……」
「わが吉田家など、渡辺家からすれば成り上がり者に過ぎんだろう?」
「歴史と強さは比例しません。江戸幕府天文方を歴任された吉田家の方が近年の功績は高い……」
「君は年長者を立てるのが巧いな」
「天呪を持つ方にたてつくのは馬鹿のやることです」
「君の言うことも最もだが、歴史をバカにすることも愚かだ」
父と渡辺と名乗る女性は舌戦を続ける。
鬼や牛鬼、土蜘蛛と言えば日本の有名な妖怪の代名詞だ。
「隠形の術、それもこれほどの高精度の術を意図も容易く見破るなんて……」
「直毘人は勘がいいらしいな」
「……見鬼の才に優れているとか、勘がいいの域では済まないと思いますが……」
「ではウチの息子は『魔眼《まがん》』を持っているというのか?」
「可能性は高いと思います。もしそうでなくとも、その感覚は将来その子……直毘人君の宝となるでしょう」
「……愚息が迷惑をかけました」
「いえ、私の修行が足らなかっただけです。同じ武家として将来が楽しみです」
確かに子供相手に自分の得意とする術を見破られたとあっては、怒りもこみ上げてくるだろう、申し訳ないことをした。
「ぶけけいとは何?」
「今から100年と少し前までは、適合者という存在はさまざまな呼ばれ方をしていた。陰陽師という言葉は聞いたことがあるだろう?」
「うん!」
陰陽師……祖父の安倍晴明や宿敵である蘆屋道満などが有名だ。
「だが近年では、使う術の種類や出生を問わず全てまとめて適合者と呼んでいる。ただし、それぞれの術の大本は変わっていない。われわれ武家系の適合者の源流は呪禁道と言い、古くは帝に仕えていた。現代では術の流派を取り入れ改良し、今の術としているのだ」
「つまり、殴り合いでは強いってこと?」
「……術の多彩さでは陰陽師に負ける。だが、武器を取れば近接戦闘では最強だ」
「最強!」
陰陽術は前世で身に着けた。
今生は武術を身に着けるのも悪くない。
「ああ、最強だ。まず家に帰ったら剣術の稽古をしよう」
「うん」
「あなた。武家の術者にすることを否定はしませんが、公家系をバカにしすぎです」
「む……」
「いい? 武家系は発動速度が速く近接戦闘能力を高めるものを好んで、公家系は発動が遅くても高威力で遠距離を好むという大まかな方向性の違いがあるの。
全体的に霊力や魔力が低下傾向にある現代では、魔力の篭った特別な道具を用いることが多く、武家系の術が見直されていますのよ」
「武士は昔バカにされていたの?」
「術師たる者が武器を取るなんて野蛮だという美意識が強いのよ」
「だがしかし、『魔力の篭った特別な道具』は高いし数が少ないんだ。おまけに歴史的価値も高いから、その多くが美術館や名家の蔵や国庫などに収容されている。当家にも数はあるから今度蔵を見てみよう」
「うん!」
何歳になっても剣に引かれるのは男の性だ。
「今から何をするの?」
「直毘人はもうできたけど、適合者として物に魔力を込めて立派な適合者になりますってご先祖さまや神仏に宣誓するのよ」
「ふーん、そうなんだ」
「今日は御三家の当主に勢ぞろいするから、くれぐれも失礼のないように……」
「はーい」
隣接するホールの一室には、太鼓と祝詞の声が響き、たくさんの子供たちが親と座っている。
「「「――恐み恐みも白す」」」
祓詞《はらえどのことば》を唱える。
魔力を込めることになる短刀は、『魔を引けるお守り』として生まれる前に作刀されたものらしい。
女の子の短刀は懐剣《かいけん》……つまり嫁入り道具としてのもので、男の子は実用的な短刀が神社などでお供え物が乗っている木製の台の上に置かれている。
……なんとも物騒な風習だと思ったが、帝《みかど》由来のものらしい。帝《みかど》最高。
隠形印……印相から見て摩利支天の隠形を使い潜んでいたのだろう。
摩利支天の隠形の本質は三種あると言うが、彼女は気配を消すことに特化している。
「直毘人大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「だめだろ? いきなり式を打つなんて……」
「なんかあるのに分からないのが気持ち悪くて……」
「それでもだ!」
「あなた、そのぐらいにしてあげて……」
ここで母が助け船を出してくれる。
「ご夫妻、申し訳ございません。私の術が未熟だったばかりにご子息に不快な思いをさせてしまいました」
細身で長身の女性が謝罪の言葉を口にする。
しかし、表情も言葉も薄っぺらい。
全く思ってもいないというのがひしひしと伝わってくる。
言葉の端々に怒りのようなものを感じる。
パンツスタイルはキャリアウーマンと言った雰囲気であるものの、墨汁のような黒い長髪は大和撫子と言いたくなるが、隠せないメンタルが病んでいる系の雰囲気を発している。
「君は?」
「申し遅れました。土岐菖蒲《ときあやめ》と申します」
「これはこれは清和源氏の……鬼斬りの一族にお会いできるとは……光栄なことだ」
清和源氏? 武士のカリスマである源頼光の子孫か……
「私など……鬼や牛鬼、土蜘蛛と言った名だたる大禍津日《オオマガツヒ》を斬った祖先に比べればまだまだです……」
「わが吉田家など、渡辺家からすれば成り上がり者に過ぎんだろう?」
「歴史と強さは比例しません。江戸幕府天文方を歴任された吉田家の方が近年の功績は高い……」
「君は年長者を立てるのが巧いな」
「天呪を持つ方にたてつくのは馬鹿のやることです」
「君の言うことも最もだが、歴史をバカにすることも愚かだ」
父と渡辺と名乗る女性は舌戦を続ける。
鬼や牛鬼、土蜘蛛と言えば日本の有名な妖怪の代名詞だ。
「隠形の術、それもこれほどの高精度の術を意図も容易く見破るなんて……」
「直毘人は勘がいいらしいな」
「……見鬼の才に優れているとか、勘がいいの域では済まないと思いますが……」
「ではウチの息子は『魔眼《まがん》』を持っているというのか?」
「可能性は高いと思います。もしそうでなくとも、その感覚は将来その子……直毘人君の宝となるでしょう」
「……愚息が迷惑をかけました」
「いえ、私の修行が足らなかっただけです。同じ武家として将来が楽しみです」
確かに子供相手に自分の得意とする術を見破られたとあっては、怒りもこみ上げてくるだろう、申し訳ないことをした。
「ぶけけいとは何?」
「今から100年と少し前までは、適合者という存在はさまざまな呼ばれ方をしていた。陰陽師という言葉は聞いたことがあるだろう?」
「うん!」
陰陽師……祖父の安倍晴明や宿敵である蘆屋道満などが有名だ。
「だが近年では、使う術の種類や出生を問わず全てまとめて適合者と呼んでいる。ただし、それぞれの術の大本は変わっていない。われわれ武家系の適合者の源流は呪禁道と言い、古くは帝に仕えていた。現代では術の流派を取り入れ改良し、今の術としているのだ」
「つまり、殴り合いでは強いってこと?」
「……術の多彩さでは陰陽師に負ける。だが、武器を取れば近接戦闘では最強だ」
「最強!」
陰陽術は前世で身に着けた。
今生は武術を身に着けるのも悪くない。
「ああ、最強だ。まず家に帰ったら剣術の稽古をしよう」
「うん」
「あなた。武家の術者にすることを否定はしませんが、公家系をバカにしすぎです」
「む……」
「いい? 武家系は発動速度が速く近接戦闘能力を高めるものを好んで、公家系は発動が遅くても高威力で遠距離を好むという大まかな方向性の違いがあるの。
全体的に霊力や魔力が低下傾向にある現代では、魔力の篭った特別な道具を用いることが多く、武家系の術が見直されていますのよ」
「武士は昔バカにされていたの?」
「術師たる者が武器を取るなんて野蛮だという美意識が強いのよ」
「だがしかし、『魔力の篭った特別な道具』は高いし数が少ないんだ。おまけに歴史的価値も高いから、その多くが美術館や名家の蔵や国庫などに収容されている。当家にも数はあるから今度蔵を見てみよう」
「うん!」
何歳になっても剣に引かれるのは男の性だ。
「今から何をするの?」
「直毘人はもうできたけど、適合者として物に魔力を込めて立派な適合者になりますってご先祖さまや神仏に宣誓するのよ」
「ふーん、そうなんだ」
「今日は御三家の当主に勢ぞろいするから、くれぐれも失礼のないように……」
「はーい」
隣接するホールの一室には、太鼓と祝詞の声が響き、たくさんの子供たちが親と座っている。
「「「――恐み恐みも白す」」」
祓詞《はらえどのことば》を唱える。
魔力を込めることになる短刀は、『魔を引けるお守り』として生まれる前に作刀されたものらしい。
女の子の短刀は懐剣《かいけん》……つまり嫁入り道具としてのもので、男の子は実用的な短刀が神社などでお供え物が乗っている木製の台の上に置かれている。
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