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第13話 転生陰陽師は魔力を込める

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「ここからは、君たちの誕生とともに賜剣しんけんされ今日まで君たちを守り抜いてきた守り刀に自身の気を込め、本物の守り刀としてもらう。そうしてはじめて君たちは、魔力に適合した選ばれた者――適合者アデプタとしての人生が始まると心得よ」

『それでは入気《にゅうき》の儀を始めてください』

「……さっき式神を生成した時のようにその短剣に魔力を込めるんだ」

「わかった」

 言われた通りに魔力を込める。
先ほどの呪符と比べると流し辛いものの、鋼が良いのか鍛冶師の腕がいいのか容量は大きく限界まで流してみたくなった。

 が、それが悪かった……短刀が目が眩むほど輝いた。

あっ、少しまずいかも…… 

「直毘人、魔力を込め過ぎだ抑えろ! 流した魔力は水のようなもの! 元はと言えばおまえの力だ。すぐになじむように雑巾で拭うように刀身から魔力を戻せ」

「わかった!」

 魔力は水や電気のように流すことができる。
 しかし、水や電気と違って意識一つで細かな操作ができる。
さっき式神術を習った時に術で大切なのは、神仏への感謝の念と術への理解度、そしてイメージだと教えられた。
 ならば流した魔力を自分と一体化させることはそう難しくないはずだ。

戻れ。

戻れ。

 戻れと何度も念じ魔力を操作するべく苦心する。
 そのわずか数十秒ほどの時間は、俺にとっては数分にも感じられ、額には玉のような汗が滲む。

戻れ。

戻れ。

 まるで満杯のダムの関を開け放水するように、刀身から溢れそうになっている魔力を自身に戻し、8、9割のところまで減らしたところで限界が来た。

「よくやってのけた。おまえは立派な吉田の術者だ」

「うん」

 俺は何だか誇らしい気分になった。

「守り刀は適合者《アデプタ》として人類のために生きることを誓うとともに、妖魔に食われ無に帰すのなら自刃し冥府へ帰るためのものだ……その意識を持つんだ。明日からは修行だぞ」

 背信行為や妖魔に食われて脅威度を上げる恐れのある場合や、苗床になって強力な妖魔の数を増やすなら、人間として自刃しろと言うことか。
気が狂った武士の子孫がある程度幅を利かせているのなら、こういった野蛮な習慣が入り込んでも仕方がない。

「吉田の子供は卓越した魔力量とコントロールセンスを持っているな」
「ああ、あれだけのことを引き起こしてもなお、一番早く短剣に魔力を込め終わったわい」
「まさに天賦の才だな……」

「ああ……」
「しかし、入気《にゅうき》の儀で測れるのは魔力コントロール能力と才能、あるいは早熟具合ということだけだ」
「この後の魔力測定も楽しみだな」
「魔力の量もそのコントロールも現段階では格別だ。
無論絶対の要素ではないがな……」

 周囲のものたちが口々に俺の噂話をしているのが耳に入る。
 俺の自尊心が高ぶっていくのを感じる。

『入気《にゅうき》の儀が終わった子供と後見人の方は、係員の指示に従って別の階にお進みください』

 この時代の陰陽師にとっての『入気の儀』は、烏帽子を被ることで成人と見なすことに通じるものがある。
 恐らく『入気の儀』とこの後あるであろう『魔力量の測定』をもとに、婚姻関係を結ぶ相手を家単位で見定めるのだろう。

「こちらにお願いします」

「何をするんですか?」

 係のお兄さんに質問すると答えてくれる。 

「ここでは炎を使って魔力の総量と放出量の測定を行います」

「総量と放出量?」

「魔力の総量と放出量の関係は、例えると水鉄砲に入る水の量と、水鉄砲の引き金を引いた時に一度にどれだけ水を出せるかというものです」

何ともまあ分かりやすい例えだ。

姉弟か子供でもいるのだろうか? 何というか手慣れている気がする。

「まずは魔力放出量を計りますので、この蝋燭に火を付けてもらいます」

「でも、火を付ける魔法は使えないよ?」

「大丈夫です。この呪符に魔力を込めていただくと自動で術が発動し、蝋燭に火がともります。何度か繰り返すことで平均出力を導くことができます」

 なるほど『|呪符に魔力を込めると自動で発火する』術があるのなら確かに、術者の平均出力を導くことができるだろう。

「イメージや術への理解も関係ないんだ」

「適合者《アデプタ》協会謹製の術ですから

「じゃあね」

「では呪符を持って急急如律令《きゅうきゅうにょりつりょう》と唱え、魔力を流してください。」

 眼前に一列に並んだ銀の燭台と木製の三宝《さんぽう》(神社などでお供え物が乗っているもの)があり、その側面には何枚もの呪符が貼られている。
 
 手前から順に強さ(難易度)を上げる退火の呪符付きか……

 俺は冥府の王から力をもらったんだぞ? 
術への理解なんて要らない! 神仏への感謝の念も……
ただイメージしろ、この炎は稲妻のように早いものだと……

「急急如律令《きゅうきゅうにょりつりょう》」

 刹那、ボウと音を立て蝋燭が全て瞬時にともり、それ自体の熱で一瞬遅れて蝋燭の炎が揺れた。
 
 係りのお兄さんは信じられないようで、記録用の紙が乗せられたカバンを落とした。

「バカな……」

「信じられない発動速だ!」

「熟練の術者でもここまでは……よほど神仏に愛されているのか、魔力が多い上にオマケに放出量も多いのではないでしょうか?」

「……そうだよなぁ……」

 さすがの出来事に父母も絶句状態だ。  
 魔力を流すのを辞めると一定時間で蝋燭のあかりは消える。

「次は雷をイメージせずにやるね」

 先ほどより幾分か速度は落ちたもののやはり発動スピードは早い。

「目を凝らしてよく視て・・見れば漏出している魔力に気を送るだけでも爆発しそうな量だぞ?」  
「そんなの目を凝らさなくても分かるだろ!」

「俺はおまえと違って見鬼《けんき》の才に乏しいんだ!!」  
「あんなの500Wの家電に10000W流しているようなもんだぞ」  
「それじゃあいつ壊れてもおかしくないってことか?」

 外野がうるさい。

 術を発動するときに周りが輝くのはどうやら魔力が漏出しているかららしい。  
 家電と電力の話からして大分まずいようだ……もしかして冥府の王に授けられた莫大《ばくだい》な力ってマイナスになってる?

 俺は不意に脳裏をよぎったその考えを振り払えずにいた。  
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