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第15話 転生陰陽師の魔力は規格外
しおりを挟むとても日本人とは思えない白金《プラチナブロンド》の長髪を靡かせ、少女は枝毛一つない美しい髪になんの躊躇いもなく刃を入れ髪を切り取った。
そして力士が塩をまくかの如く豪快に髪をくべる。
自身満々の銀髪? の幼女は腕組みをして炎が猛るを前にして尊大に構えた。
刹那。閃光《せんこう》とともに火を噴いた。
BOOOOOM!!
炎が舞い上がった。
それは炎というよりは爆発に近い現象のようだ。
炎の差、それが現在持っている魔力量を雄弁に語っている。
「第二位階B級相当の魔力量だ!」
「さすが名門、都道府県の守護責任者相当の魔力量だ!」
続く土御門伊吹嬢も金色の長髪を火にくべる。
「第二位階B級相当の魔力量だ!」
「最初に試験を突破したのに悪かったね、吉田さん」
と勘解由小路が謝罪の言葉を口にした。
しかし悪びれた様子はなく、自分の娘――否、血統の方が優れているとでも言いたげだった。
本家と分家が並んで今の世で言う国(県)一番に匹敵する能力を見せたのだ。血と歴史と実力のある家が傲慢《ごうまん》に振る舞うのは当たり前のことだ。
だが平安の世では平凡とまではいかないが、とても国一番の魔力量とは思えない。
術式が効率化されて魔力量が重要視されなくなっただけなのか? はたまた魔力量の平均が下がっただけなのかはわからないが、気に留めておこう。
「われわれ適合者の家系では年長者より実力者を敬うように、なじみの薄いレディーファーストを行っただけですので謝罪の言葉は不要ですよ。それに一般の学校に行けば、常識が異なる子供たちにとっても必要な経験でしょう」
「……そうだな」
俺は刃文が美しい短刀を引いてザクザクと髪を切る。
不揃いになった頭髪は不格好に見えるだろう。
だがそんなことはどうでもいい。
この日のために両親が用意してくれた短剣は素直に嬉しかった。
子供への適合者として初の贈り物だ。値段も張るだろう。それよりも思いがこもったものだ。
魔力量は並の術者を超えているのは明白だ。
そしてそれが判明することを初めて怖いと思った。
俺は両親と周囲の大人を一瞥する。
化け物と言われたらどうしようか?
そんなことを考えると風が吹いた。
サラサラと砂のように手から零れ落ちる髪の毛は空を舞って護摩に自らくべられるように。
そして髪が火に焚かれた瞬間、それは起こった。
太陽が落ちた。
より正確に言えば二つ目の太陽が現れた。
ピカッと炎が光り全てを飲み込まんと輝いた。
そんな陳腐な独白が脳裏を過った。
とっさに手で頭を覆いながら回転し地に伏せる。身を投げるように……
数瞬遅れて轟音が轟き大爆発が起きた。
しかし、一定以上の爆風に伴った熱風は来なかった。
炎は全て火柱となって上へ上へ吹き抜け、まるで天を焦がすようだ。
「安全装置が発動しやがった!」
「第一から第八結界が焼失《・・》残るは四枚のみです」
「対禍津日用と目くらましを除けば残り二枚か……」
「このまま燃え上がれば、結界を焼き切れば羽田空港にも影響が出かねません」
「第特別位階、国際規格S級相当で魔力出力も超一級……」
「天に住まう神仏が呪いを与えると言う天呪《てんじゅ》なんてこの子には必要ない。これが生まれながらの頂点……」
「時代が動くぞ……」
誰かがポツリと呟いた。
正直、そんな期待をされても困る。
超越者から力を貰いはしたが、俺はただの人間だ。
「हुं!!」
種子真言! 魔力に方向性を付与し術としていないからとは言えど、この魔力量を何とか出来る自信があるというのか!?
突如現れた男の魔力は風船のように爆発的に膨らむ。
たった一言で見上げれば首が痛くなるような炎は霧散した。それは生前最後に見立てた播磨守の術のようだった。
「不動明王火界咒《ふどうみょうおうかかいじゅ》もかくやと言う業火だ」
そこにいたのは疲れたお爺さんとしか言いようのない男だった。
「改めまして安倍一門40代目当主安倍晴明だ」
「……千年前の?」
違うと分かっているものの尋ねずにはいられなかった。
「世襲と言って昔の人の名前を引き継いでいる……有名な方で威厳があるでしょ?」
「なるほど……」
陰陽三大宗家のうち、土御門と倉橋は安倍《・・》晴明の子孫。
そして目の前にいる中年は安倍一門40代目当主と名乗り、世襲名でもある……もしかしなくても最強クラスの適合者なのだろう。
「理解が早くて助かるよ。さて……吉田の、なんで早く止めなかった?」
「……こうなるかもしれないとはうすうす思っていた。今日初めて俺は式神術と魔力操作を教えたのにもかかわらず、直毘人は数時間で使いこなしました」
「渡辺の隠形を見破ったとも聞いている」
土御門が補足した。
「……目がいいのか勘がいいのか……どちらにせよ天賦の才だな」
「魔力量だけなら仙人や神使《しんし》に並ぶ存在だ。問答無用で第特別位階、国際規格S級以上だ。
吉田の家格には見合わない不世出の天才だな」
「間違いありません。」
「同年代の子どもを持った親同士として、これからは仲良くしよう」
そう言って倉橋さんが父に寄る。
「……勝手なことを言うな」
「手始めに上層階にあるバーに飲みにいかない?」
「懇親会があるだろう?」
「いっぱい引っ掛けるぐらい問題ないだろう?」
「吉田、諦めろ。コイツはそう言うヤツだ」
勘解由小路《かでのこうじ》父が何か諦めたように呟いた。
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