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第17話 転生陰陽師は婚約者を得る

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 かく言う俺も優れた術と歴史を持つ当家が日本の適合者《アデプタ》界に君臨できるというのは魅力的だ。

「陰陽師は簒奪者だ」
「我々の立場を奪いおって……」
「暦を奪った時は爽快だった」

 なんて江戸時代にやり返したことを爺様たちは誇っている。京都人か! そんな家で育った俺もどちらかと言えば陰陽師は嫌いだ。

 だがどこかで折り合いを付ける必要があるというのは理解しているが……人の親になって分かった。俺は子供を利用できるほど冷徹ではないようだ。

今日がその日、Xデーということか……

「一つお話したいことがあります」

 三人は押し黙った。

「直毘人は産まれて間もない頃に吉田の秘祭を行っております」

「二百年前に廃された通称『赤子殺し』の秘祭だったかな?」

「禁術だろそれ? 
確か霊を魂に融合させ人工的な『生成り』にするっていう……厳密には違うらしいが……」

 おおむねその認識であっているものの、吉田の秘祭の本質は、『融合』と『隷属』だ。  
 優れた式神使いは、式神から魔力を奪い自身の糧とするというそれを応用した下法だ。

「あれだけの才能を、さらに飛躍させたいという気持ちはわかりますが……そこまでの危険を犯す必要があったのでしょうか? 凡人の感覚に比べれば、女性と子どもの命なんて軽い業界ですが……彼の血は日本魔術界をいや、世界を変えるものですよ?」

 三者ともに懐疑的な反応を返した。

「実行したのは私の父母、つまりは現当主とその妻だ。
そしてそれは俺が屋敷をあけていた時に行われた」

「違法な魔術による強化人間ということか……」

「しかしそれでもあれだけの才は惜しい……」

結局コイツらは直毘人を非難するのか……混ざり者、人外なんて心無い言葉をぶつけるのだろうか?

 魔術による強化を、血と才能そして歴史のある家の人間は過度に嫌う。  
 過去同じようなことをやってきたのにも関わらず、ここ二百年ほどで生まれた人道という道徳を、人道を踏み外した歴史を持つ彼らが説くのに違和感を覚える。

さて土御門はなんというのだろうか?

 長きにわたり朝廷で権力闘争を生き延び、そして四つの時代を生き延び未だ燦然と日本魔術界に君臨する土御門はこう答えた。

「吉田家当主への抗議は後でするとして……婚約の話受けては貰えないだろうか?」

 その言葉は予想外のものだった。

「直毘人は魔術で強化された人間なんですよ?」

「それがどうした? 彼は被害者であり、魔術による強化などみな黙っているだけで、歴史の深い家であるほど行っていることだ」

「……あの子が幸せになるのなら」

 俺は涙を堪えながら返答を返した。

「決まりだな……」

 俺達は盃を交わし子供達の平穏を願い子供の話に花を咲かせた。


………
……



 普段パーティー会場として使われているフロアは子供の託児所となっていた。
 カーペットは敷いてあるもののこければ痛い。
そのため積み木や人形、絵本など走らない遊びが基本となっているようだ。

「子供達はここにいる保育士の方々が見てくれますので安心できますね……」

「上は十歳以上下は乳幼児まで幅広いですし、万が一禍津日マガツヒが出ても未成年の適合者アデプタがバイトで倒してくれるわ」

「保育士だけじゃ数が足りないから……それに適合者アデプタって兄弟姉妹が多いから小さい子の扱いがうまいのよ」

 『懇親会』と言っても来賓は、各家の当主や跡取りの男子とその子供でしかない。
 適合者アデプタ界隈も一般的社会と同様に、男女平等の機運は高まっているものの、一般女性との婚姻に比べ適合者アデプタ同士、あるいは適合者アデプタの家系同士の方が次世代が産まれやすく、必然的に女性は早婚が求められている。

 これは現作と現在の保育園状態の現場を見ての感想でしかないが……だから男尊女卑が続くのだろう。

「ここにいる子達は適合者アデプタの子供、つまり直毘人と同じ境遇のお友達です。友達が出来るといいわね」

 周囲を見ると、子供がメインのここは子供達の交流と言うよりは託児所に見える。
 母親たちは子供の相手をしながら談笑している。
 中には習いたてなのか、術を使おうとする者までいる。

これはひどい。

 今世では従兄たちやお手伝いさんとしか遊んでこなかったため、少しばかり気後れする。

「湊《ミナト》ちゃんと瀬織《セオリ》ちゃん、伊吹ちゃんと仲良くするのよ?」

「はーい」

 どうやら俺に拒否権はなさそうだ。

「手を……」

 ミナトちゃんは、お姉さんぶりたいのか俺たちに手を差し出す。
 どうやら手を握れと言うことらしい。
 日本人形然とした容姿の彼女の手を取る。
 快活な瀬織《セオリ》ちゃんと違い、大人しいようで人形コーナーに向けて歩みを進める。
 二人のおままごとに付き合うことは吝かではないが、周囲の、特に大人の視線が痛い。

 同年代の少年少女からすれば、芸能人よりもずっと魅力的で家柄も申し分ない美少女に手を引かれる俺は「誰だアイツ」案件だろうし、大人からすれば自分の子供を脅かす存在に見えるだろう……

 幸いなことに俺の対象年齢は女子高生からだ。
 幼女には興味はない。

 そしてエレベーターなどでの話をまとめると、俺の婚約者になるかもしれない少女たちだ。
 伊吹ちゃんの顔立ちは可愛らしい系と言った感じで、薄い茶髪がふわりと舞う。

ミナトちゃん、ウチの娘をお願いできる?」

「うん。わたしお姉さんだもん」

「じゃあ頼むわね」
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