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第33話 転生陰陽師VS十三家の子女②
しおりを挟む俺が両手で振り上げた刀に対して、アーシュラが選んだ選択は防御でも回避でもなく迎撃だった。
二人とも基礎の『充纏術』は十三家の子弟だけあって水準は高く、少し力をださないと押し負けてしまいそうだ。
俺は唐竹を起点に魔力を送り込み、兜割の応用でインパクトの瞬間に全魔力を放出し威力を高めた。
互いが磨き上げて来た血と流派と努力の籠った一撃。共に優れた魔力量と魔力操作に優れるが故に手繰り寄せる偶然と言う名前の必然。
二人の剣戟は最も威力が乗るタイミングで激突するに至った。
一撃、飛燕の如き速度最中、剣戟を交わす。
カン。と言う甲高い金属音と共に圧縮された魔力が閃光を放った。
――圧縮された高密度の魔力が、打撃との誤差なく衝突した瞬間。圧縮された魔力は臨界点を突破し、デタラメに事象干渉を引き起こし、目が暗むような眩い閃光が迸る。
『【刹 華】』
観客たち全員が、刀と剣の間を這うようにして広がる稲妻のごとき魔力の奔流を目撃する。
「刹華《せっか》!? それも二人同時に!?」
「吹っ飛んだ!!」
「流したんだよ~」
目の良さあるいは知識や経験で視えるものが違うのか同じクラスの同級生と言えども感想は三者三様だった。
『刹華《せっか》』が生み出す魔力の奔流は、使用者だけの魔力の核心への理解を加速させるわけではなく、周囲にいる者にも僅かながら影響を与える。
しかし観客席に張り巡らされた結界によって、その僅かな影響の大部分が取り払われる。
これでも大きな影響を受け魔術の発動に違和感を覚えることが予想される。
本来は不可能に等しい格上殺しをも可能とさせる『刹華』は技ではなく現象だ。
再現性に乏しい正に『勝利の女神がほほ笑む』ような奇跡である。
日本では『渾身』や『会心』と呼ばれたそれは、海外でも昔からさまざまな軍神の御名で呼ばれてきた。
魔術の片手間で剣を使う男と、剣の片手間で魔術を使う女。二人の考えは一致していた。
一撃で決着は付かない!
ならばどうするのか? 二人の思考は同じ結論を叩き出していた。
最も取れる手段の質や差は大きかった。
西洋剣術であろうとも東洋剣術であろうとも、武器の形状や歴史は異なれど目指すべき方向が同じであれば類似する部分が出てくるのは必然だ。
いわゆる「収斂進化」だ。
互いに一撃を流し、何度か足場を経由して体制を立て直す。
その間にジャンヌが魔術を撃ってきたが対処できる範囲だ。
平均レベルは高いものの婚約者の三人より優れてるとは思えない。
「直毘人も『戦女神《ナイキ》の祝福』を受けた! もうゾーンに入ってる!」
「判ってるわよ! 本職のアーシュラがこれだと、わたしじゃ打ち合うのが精一杯ね……」
互いに神殿騎士をルーツとする魔術師であるが故に剣を武器とするが、二人の戦闘スタイルはまるで異なる。
ジャンヌはどちらかと言えば直毘人と同じ魔術の片手間で剣を使うタイプだ。
ナイキと言うのは、ギリシア神話に登場する勝利の女神で、日本では一般的にはニケと言う。
ローマ神話では、ウィクトーリアと言う。
ギリシア・ローマ神話では知恵の軍神アテナあるいは軍神マルスに従う従属神とされる。
戦神の祝福によって強制的にゾーンに入った二人は、明らかに先ほどとはレベルの違う濃度の魔力を身に纏う。
戦いの火蓋が切られた。ハズだった……
担任教師が霊器を持って割って入る。
「三人ともそこまでだ」
「どうしてですか!?」
「私達はまだやれます!!」
二人は抗議の言葉を口にする。
「周囲を見ろ自分達はいいかもしれないが学年の奴ら皆魔力酔いでグロッキーだ。それにこれ以上は学生同士の手合わせの範疇を超える」
手に持った刀は名品であり、武力を持って介入するという明確な意思表示だ。
確かに周囲を見渡せば、同級生でなく噂を聞きつけて見物に来ていた在校生の一部も顔を引きつらせたり、グロッキーになっている。
「いいところなのは理解できる。だけど周りのことも考えろ」
その言葉に二人は黙った。
「吉田もそれでいいか?」
「ええ」
こうして面倒な術比べは終わった。
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