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第37話 転生陰陽師は部活終わりに仕事に向かう
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日本のコートの多くが人工芝を用いている。
理由は単純で総合的なコストが安いからに他ならない。
そう言った理由からか芝の上で行うスポーツの殆どで日本は後進国と呼ばれてきた。
千年前《むかし》は芝やススキの原っぱなんてその辺にあったが、沼や干潟は埋め立てられ工業団地や住宅地に転用され、昔の面影など地名から読み取るしかないほど、この国は国土を改造しつくした。
人の暮らしは豊かなモノになった。しかし精神面はどうであろうか? 身近にあった自然は消え管理された里山へと姿を変えた。
俺はそんな事を考えながら、人工芝のグラウンドを駆け抜ける。
俺の動きを見て相手チームのディフェンダーが動いた。
だが遅い。
「パスをくれ!」
俺は手を挙げてボールを寄越せと、六番ミッドフィールダーの先輩にパスを促す。
先輩は一瞬で周囲を見渡して開いている選手の確認をする。
そう先輩や他の選手の能力ではボールを相手選手に取られかねない。だから俺にボールを回すしかない。
嫌そうな表情を浮かべ、まるでシュートのような勢いでパスを飛ばす。
「直毘人やれ!」
俺が全力で走り抜ければ、なんとか届くそんなポジションに鋭いパスが飛ぶ。
信頼が厚いと言うべきか嫌がらせと言うべきか悩みどころだな……
ドン!
足を大きく伸ばしてボールを受け、そのまま俺は相手のディフェンダーを二人抜き去りゴールキーパーと睨み合う。
……だが緊張は全くしない。
俺は右足を振り上げて全力でボールを蹴る。
足と顔の方向からシュートの位置を逆算したのだろう。相手チームのゴールキーパーは左に飛び込んだ。
しかし、俺は靴の外側……小指側《アウトサイド》で弾くようにボールを蹴ることで右足で蹴り出しても左側にボールは飛んでいく――――。
千年前の平安時代でもリフティングのような蹴鞠という遊びがあった。
だから俺にとってはこの時代の中では、比較的馴染みのあるスポーツの一つであり、だからこそボールのコントロール技術は高く地方大会程度であれば十分に活躍できる。
ボールはゴールの右側へ大きな弧を描くようにして吸い込まれていく。
刹那。
ホイッスルが数回吹かれ試合終了の合図となる。結果は1対5点と言う圧倒的な点差をつけての勝利であり、我が魔道科高校サッカー部は次の試合へ駒を進める事となった。
「「「ありがとうございました。」」」
選手や監督を含めた一同総勢40名ほどのメンバーが、一斉に礼をしお互いの健闘をたたえ合う。
「吉田お前スゲーな。どこのクラブに入ってたんだ?」
敵チームの10番フォワードが声をかけて来た。
「クラブは小学生の頃に入っていたよ。今はこうして部活ぐらいでしかサッカーしないけどね……」
「もったいねぇ! それだけ上手ければユースとか余裕だろ?」
と声を張り上げる。
「実家の手伝いがあってね。どうしてもそこまでは入れ込めないんだ」
何を勘違いしたのか。
「お前大変なんだな……」
と言って俺の肩を叩く。
テレビ見てないのか? 見てないだろうなこの感じだと……
実家の稼業である陰陽師の手伝いと言った所で、この科学全盛の時代では信じては貰えないだろうけど……
そんなことを考えていると、キャプテンでフォワードの三年生が声をかけきた。
「そうだぞ! 弓道、剣道、馬術部にまで顔を出しやがるから、練習にあまり顔を出さないクセに上手いなんて理不尽だ」
趣味と実益を兼ねて参加しているだけだ。
武道系は実家関係。スポーツは純粋な趣味だ。
「一応プロなんで呼び出されると断れないんで……」
俺は申し訳なさから目線を反らしてしまう。
「吉田ってもしかして……」
「そう。こいつプロの魔術師なんだよ」
「最年少プロってお前だったのか……」
「あと仕事あるんでお先に失礼します」
「おう」
◇
汗を流す暇もなく普段着に着替えた俺は、グラウンドからほど近い駐車場に止められたワンボックスカーに駆け寄った。
「遅い!」
助手席のウィンドウを開けそう言ったのは瀬織だった。
白と見紛うほどに色素の薄い白金色《プラチナブロンド》の長髪に、ブルーグレーの大きくパッチリとしたアーモンド形の瞳。
スッと通った鼻筋と、たまご型の骨格は見慣れて居なければ思わず息を呑んでしまいそうなほど美しい。
「ごめん。試合が長引いちゃって……」
「もう! そう言う事はスマホで連絡しなさいよ……ホウレンソウよ。ホウレンソウ」
「……気をつける」
スンスンと鼻を鳴らす。
「直毘人。あんた汗臭いわよ……」
「一応シャワー浴びて制汗剤使ったんだけどなぁ……まぁコレからどうせ汗をかくんだしいいでしょ」
「言いたいことは分かるけど……身だしなみぐらい整えなよ。はい。これ使いなさい」
そう言って香水を渡してくる。
急いで来たからそれぐらいは見逃してくれ。と言う言葉を飲み込んで「ありがとう」と短くお礼を言うと香水を振りかけ車のスライドドアを開けて車内に乗り込んだ。
理由は単純で総合的なコストが安いからに他ならない。
そう言った理由からか芝の上で行うスポーツの殆どで日本は後進国と呼ばれてきた。
千年前《むかし》は芝やススキの原っぱなんてその辺にあったが、沼や干潟は埋め立てられ工業団地や住宅地に転用され、昔の面影など地名から読み取るしかないほど、この国は国土を改造しつくした。
人の暮らしは豊かなモノになった。しかし精神面はどうであろうか? 身近にあった自然は消え管理された里山へと姿を変えた。
俺はそんな事を考えながら、人工芝のグラウンドを駆け抜ける。
俺の動きを見て相手チームのディフェンダーが動いた。
だが遅い。
「パスをくれ!」
俺は手を挙げてボールを寄越せと、六番ミッドフィールダーの先輩にパスを促す。
先輩は一瞬で周囲を見渡して開いている選手の確認をする。
そう先輩や他の選手の能力ではボールを相手選手に取られかねない。だから俺にボールを回すしかない。
嫌そうな表情を浮かべ、まるでシュートのような勢いでパスを飛ばす。
「直毘人やれ!」
俺が全力で走り抜ければ、なんとか届くそんなポジションに鋭いパスが飛ぶ。
信頼が厚いと言うべきか嫌がらせと言うべきか悩みどころだな……
ドン!
足を大きく伸ばしてボールを受け、そのまま俺は相手のディフェンダーを二人抜き去りゴールキーパーと睨み合う。
……だが緊張は全くしない。
俺は右足を振り上げて全力でボールを蹴る。
足と顔の方向からシュートの位置を逆算したのだろう。相手チームのゴールキーパーは左に飛び込んだ。
しかし、俺は靴の外側……小指側《アウトサイド》で弾くようにボールを蹴ることで右足で蹴り出しても左側にボールは飛んでいく――――。
千年前の平安時代でもリフティングのような蹴鞠という遊びがあった。
だから俺にとってはこの時代の中では、比較的馴染みのあるスポーツの一つであり、だからこそボールのコントロール技術は高く地方大会程度であれば十分に活躍できる。
ボールはゴールの右側へ大きな弧を描くようにして吸い込まれていく。
刹那。
ホイッスルが数回吹かれ試合終了の合図となる。結果は1対5点と言う圧倒的な点差をつけての勝利であり、我が魔道科高校サッカー部は次の試合へ駒を進める事となった。
「「「ありがとうございました。」」」
選手や監督を含めた一同総勢40名ほどのメンバーが、一斉に礼をしお互いの健闘をたたえ合う。
「吉田お前スゲーな。どこのクラブに入ってたんだ?」
敵チームの10番フォワードが声をかけて来た。
「クラブは小学生の頃に入っていたよ。今はこうして部活ぐらいでしかサッカーしないけどね……」
「もったいねぇ! それだけ上手ければユースとか余裕だろ?」
と声を張り上げる。
「実家の手伝いがあってね。どうしてもそこまでは入れ込めないんだ」
何を勘違いしたのか。
「お前大変なんだな……」
と言って俺の肩を叩く。
テレビ見てないのか? 見てないだろうなこの感じだと……
実家の稼業である陰陽師の手伝いと言った所で、この科学全盛の時代では信じては貰えないだろうけど……
そんなことを考えていると、キャプテンでフォワードの三年生が声をかけきた。
「そうだぞ! 弓道、剣道、馬術部にまで顔を出しやがるから、練習にあまり顔を出さないクセに上手いなんて理不尽だ」
趣味と実益を兼ねて参加しているだけだ。
武道系は実家関係。スポーツは純粋な趣味だ。
「一応プロなんで呼び出されると断れないんで……」
俺は申し訳なさから目線を反らしてしまう。
「吉田ってもしかして……」
「そう。こいつプロの魔術師なんだよ」
「最年少プロってお前だったのか……」
「あと仕事あるんでお先に失礼します」
「おう」
◇
汗を流す暇もなく普段着に着替えた俺は、グラウンドからほど近い駐車場に止められたワンボックスカーに駆け寄った。
「遅い!」
助手席のウィンドウを開けそう言ったのは瀬織だった。
白と見紛うほどに色素の薄い白金色《プラチナブロンド》の長髪に、ブルーグレーの大きくパッチリとしたアーモンド形の瞳。
スッと通った鼻筋と、たまご型の骨格は見慣れて居なければ思わず息を呑んでしまいそうなほど美しい。
「ごめん。試合が長引いちゃって……」
「もう! そう言う事はスマホで連絡しなさいよ……ホウレンソウよ。ホウレンソウ」
「……気をつける」
スンスンと鼻を鳴らす。
「直毘人。あんた汗臭いわよ……」
「一応シャワー浴びて制汗剤使ったんだけどなぁ……まぁコレからどうせ汗をかくんだしいいでしょ」
「言いたいことは分かるけど……身だしなみぐらい整えなよ。はい。これ使いなさい」
そう言って香水を渡してくる。
急いで来たからそれぐらいは見逃してくれ。と言う言葉を飲み込んで「ありがとう」と短くお礼を言うと香水を振りかけ車のスライドドアを開けて車内に乗り込んだ。
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