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第38話 転生陰陽師と婚約者達①
しおりを挟む「皆で戦うのってどれぐらいぶりだったかしら?」
緩やかにウエーブした長く美しい黒髪に、アイドルや女優かと思うほどの整った美貌の少女は、どこか浮世離れした天女のような雰囲気を纏いながらも、どこか冷たい印象を抱かせる少女の名前は、勘解由小路湊《かでのこうじミナト》。幼馴染で許嫁の一人である。
「1、2年ぶりかな? 湊が入学してからは頻度減ってたし……」
「私は全力が出せそうで嬉しいわ。中学生時代の熱い日々をもう一度味わえるなんて……興奮するわ♡」
その瞬間運転席の方からガタっと音が聞こえた。
「誤解を生むような良い方しないでよ。四人で良く禍津日《マガツヒ》狩りしただけだよね! それに湊も結界術使えるでしょ? 自分で張りなよ……それか協会の『童子《ドウジ》』を連れて行くなりすればいいのに……」
『童子《ドウジ》』とは協会に所属する非戦闘員のことで、何らかの理由で一戦から退いた魔術師や禍津日《マガツヒ》に家族を殺された非魔術師が多く、結界を張ったり車での送迎、宿の手配などサポート全般を請け負う。オペレーターも『童子《ドウジ》』に含まれる。
「湊がそんなことできるわけないじゃないコミュ障女なのよ?」
瀬織がちゃちゃを入れる。
確かに湊は年上ということもあって姉ぶるものの本質は甘えたがりの女の子だ。
少し毒舌で煽るような発言をするもののそれは湊の思い描く姉像がおかしなだけだ。
「……」
「なんとか言いなさいよ」
「本性が使いでしかないわたし達が本気を出すためには、相応のチカラを持った主がいなければいけないんですからストレスが貯まるのも判ります……」
そう言ったのは伊吹だった。
三人とも両家の娘ということもあり男で前線に立つ俺とは違った苦労があるのだろう。
「私達『五芒格子《ごぼうこうし》会』が直毘人を独占してるから、パーティーの雑談の一巻で直毘人の妾や嫁候補を断っているわ。直毘人が受け入れてくれれば楽なんだけど……ハーレムって男の子的には嬉しいモノなんじゃないかしら」
「何を言ってるのよ! 湊! 直毘人のハーレムがこれ以上増えたら面倒じゃない!」
「だからってお見合いおばさん見たいに、親族一門の子を身代わりにするのは気が引けるわ。瀬織の言うことも分かるけど、『五格会』としての判断は絶対破れないよ。幸い三家とも懇意にしている組織が違うんだから負担は最小限よ」
「えっと……土御門家が『日本キリスト教会連合』。倉橋家が『神宮会』。勘解由小路が『全日本仏教連合』を対応しているんだったよな?」
「あってるわ。『琉球魔術連』や北海道の『ウタリ魔術連』と言った組織もあるけどあまり気にしなくていいわ」
一帯どんな譲歩をしているのだ。まだ生まれていない子供を一人、二人婚約者に回すとか婚約者にしてやるとかそう言うものだろうか? まあ子や孫、一族の婚姻を決めるのは家長や当主と考えれば、前世と同じだ、今の風潮では古臭い考えかもしれないが仕方がないことだ。
「あのー仕事のお話いいでしょうか?」
運転手の女性はハンドルから片手を離すと鞄の中からタブレットを差し出した。
そこに表示されているのは大学のレポートのような、文字と図解や写真が添付された資料だった。
俺は目を走らせて文字を読んでいく……。
「何だこれ……」
「上層部曰く肩慣らしだそうです。皆さんもご存じの通り日本は禍津日《マガツヒ》大国ですから、少しでも多く経験を積んでもらいたいんでしょう。禍津日の出現頻度は増加傾向にありますから……」
女性の言葉には「実力を付けろ」と言う意味の他に、「子供を作れ」と言う言葉が含まれているように感じたのだろう。
三人は顔を赤らめ車窓の方を向いて俺と目線を合わさないようにしている。
「今回の案件は端的に言えば鬼退治です」
『鬼』それは日本で最もメジャーな禍津日《マガツヒ》だ。
種類によって強さも小鬼《ゴブリン》~魔王まで大きな幅があり、神と称される個体もいる。
「桃太郎と家来の三匹はいないですけどね」
「でも狐と鴉はいるわ」
「犬と雉の代役? でも猿が居ないわね……」
「まあ人間も猿と言えば猿だしいいんじゃないかしら……勘解由小路家は海神系の子孫なんだから同氏族に『犬養』っていたし犬と雉兼業できるわね」
「犬養って六氏族いるのよ? 四氏は海神系だけど……」
「そうすると俺が四道将軍の一人、吉備津彦命《キビツヒコノミコト》って訳か……恐れ多いな……」
阿倍家の祖である大彦命《おおびこのみこと》、武渟川別命《たけぬなかわわけのみこと》父子の同僚であり叔父だ。
余談だが吉備と付いているものの吉備真備とは直接的な血縁関係はなく、弟の稚武彦命《わかたけつひこのみこと》の系統と言われている。
「記紀《げんてん》だと猿って楽々森彦《ささもりひこ》って名前だよね? 高塚と藤井両家が持ちネタで話してるし……」
「それを言うなら雉のモデルの留玉臣《とめたまおみ》の子孫の鳥飼、鳥越の両家は明確に賀茂《ウチ》の系統を敵視してるわね。同じ鳥使いだし……」
地方豪族の留玉臣は、百里(393キロ)を飛行できる優れた魔術師だったといわれている。この距離は東京大阪間の400キロに迫る。古代でも現代でも指折りの魔術師と言える。
「朝廷系とか貴族にルーツある魔術師って結構動物使い多いよね……」
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