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第49話 転生陰陽師は神を殺す

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「遠く離れた山陰地方と山北陸地域この二つを結ぶ共通点は日本海交易と反ヤマト政権だ! 出雲も高志国も古くから皇祖神が祭られた伊勢神宮に迫る社格を持ってる! それは両地域を支配する勢力、現代で豪族とよばれる諸勢力……つまり諸王を無視できない理由があったからだ! 出雲は武具の産地として有名で無視できない国力をもっていた。
 当時鉄を得るには山を炉と破壊するタタラ製鉄が必要だった! その土砂は川に流れ込み下流地域では莫大な被害が産まれ浅瀬を埋め小島を大きな島へと変える。それは何も知らない古代の人からすれば天災に等しだろう」

「く!」

 戸部天は苦悶の表情を浮かべ声をあげる。

「反朝廷勢力であった出雲王を調略で盗んだ製鉄技術を背景にし武力と政治で懐柔し、英雄神である素戔嗚尊《スサノオノミコト》を彼ら出雲族の遠祖とすることで、大国主を信奉する出雲族をヤマト王権の内側に取り込んだ。
 素戔嗚尊《スサノオノミコト》の八岐大蛇《ヤマタノオロチ》討伐の神話はそうした複雑な背景を持った政治的な側面を持った神話だ。戸部天王……否、名も貶められた古の女神・高志之八俣遠呂智タカシノヤマタノオロチそれがお前の正体だ!!」

 鋭く研ぎ澄まされた言の葉の剣は、手蕨刀ごと古の神『八俣遠呂智《ヤマタノオロチ》』を斬った。
 カン。と言う甲高い金属音と共に圧縮された魔力が閃光を放った。

 ――圧縮された高密度の魔力が、打撃との誤差なく衝突した瞬間。圧縮された魔力は臨界点を突破しデタラメな事象干渉を引き起こす。

『【刹 華せっか】!』

 『刹華《せっか》』が生み出す魔力の本流は魔力の核心への理解を加速させる。

「武神の加護を得るとは運のあるやつだ」

 しかし知恵を象徴する蛇の女神がこれで終わる訳がない。
 予想通り二振り目の手蕨刀が開いていた左手に生成されカウンターを放つ。

 しかし今の今まで気配を消していた香犬が飛び掛り隙を作った。
 それに乗じて太刀による袈裟斬りを放つ。
 不意を突いた一撃だったが神の身体フィジカルの前には無意味だった。
 軽い足捌きでヒラリと一閃を避けられる。

 太刀が空を斬りその切っ先が地面に触れる前に、手首を返し返す刀で逆袈裟斬りを放つ。
 再び目が暗むような眩くが迸る。

『【刹 華せっか】!!』
 
「――――っ!」

 どごん。と言う衝撃音を伴った重く鋭い一撃が女神の握る手蕨刀を破砕し、まるで鎧のように発達した外骨格を断ち切らんと迫る。
  二振りの手蕨刀こそが蛇神の牙を象徴する武器だったのだろう。
 牙を失った蛇の攻撃手段は少ない。

 しかし今のままでは硬い外骨格を砕くには力が足らない。
 魔力を込めようと【刹 華せっか】が起こらなければ、無駄に隙を晒すだけだ。

 力があれば――

 魔力が不意に流れると、懐かしい感覚を感じた。
 ふと腕に視線を向ければ『皓釰銀《シラハガネ》』を発動した時に発生する白銀の魔力ではなく、漆黒の魔力が腕を覆っている。

 疑念が確信に変わった。
 逡巡した刹那の時間は終わりを告げ、俺は正確に刀を振るい外骨格を切り裂き少女の白魚のような真っ白な腕が露出させる。

「おのれ! おのれ! おのれ! おのれぇぇええええええ! わらわを誰と心得る!? このような無礼許されるわけが――」

「やれ香犬」

 俺の指示によって再び香犬が飛び出して、露出した腕に嚙みつくと地面に押し倒す。

「――――グルルルル!!」

 唸り声を上げながら絡みつくようなその姿はさながら警察犬のようだ。

 恐らく、少女の四肢に現れた黒い外骨格は鬼神の力が具象化したもので、これを破壊することで一時的に力を弱める事が出来ると推察される……まるでゲームのボス攻略みたいだ
 俺は迷うことなく残りの外骨格しんかくを削ぐべく、刀を振るい断ち切る。

「意識を取り戻してもおかしくないはずなんだが……」

 すると少女は喋り始める。

「……助けて禍津日として死にたくなんてないです!」

「分かった微力を尽くそう……そのために君にお願いがある君の精神力で鬼に抗ってくれ」

「!」

「無理難題だとは思うが今の俺にはそれぐらいの奇跡がなければ君を救う事は残念ながら出来ない」

「他の人なら……」

「酷い事を言うようだが君を救えるような高位の魔術師はいないだろう。世界でも数える方が早い……」

「そんな……」

「今から君の体を拘束する術を使うその間だけでも、神から体の制御を奪ってくれ……」

「分かり、ました」

「大丈夫君は優秀な巫女だ……」

臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前りんぴょうとうしゃかいじんれつぜん―――」

 普賢三摩耶印ふげんさんまやいん 、大金剛輪印、外獅子印、内獅子印、外縛印、内縛印、智拳印、日輪印、隠形印――と神仏を表す9種の印と言葉を用いて九字を結ぶ。
 主に祭事等で使用される作法でその効果は極めて高い。

 この格子状の文様はドーマンとも呼ばれ、魔を祓い退ける呪術的防御力をそなえており、裏を返せばそれは霊体への攻撃力を有している。

「――行《ぎょう》!」

 また九字には十字と言う派生があり、『臨兵闘者皆陣列前』九字の後に一文字の漢字を加えて効果を一点に特化させる効果がある。
 一文字の漢字は特化させたい効果によって異なる。
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