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第57話 転生陰陽師は旧神の守人に心配される
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俺が警戒していることに感づいた守屋さんは、俺の警戒を解くために目を見てきっぱりと言い切る。
「警戒させてしまったようですね……私はあなたに敵対するつもりはありません」
俺とやり合えば、この封印・結界班が壊滅すると思っているから『敵対するつもりはない』と俺に向けて言っているのだろうか? まぁ確かにかなり魔力を消耗したとは言え、今《・》の俺なら倒せる。
恐らく守屋優子、否、諏訪としてはくだらない協会内の政治には出来るだけ不干渉を貫きたいというのが本音だろう。
なにせ彼らは旧神『御左口《ミジャグジ》』を奉り慰撫し封印しているのだから……中央の政争にかまけている余力などないというのが本音だろう。
『諏訪神党』自体昔から独自性が高く、古くから社格もあるのに本来天津神に敵対する国津神――出雲の神を祭っている古神道系一派だ。
俺が死んでから300年後には、幕府の呪的防御全般を請け負ったことで武士化し、現在の諏訪神党を結成し乱を起こすに至ったという。
武家系魔術師の中でも特に有名な一団だ。
「あなた個人の感情は理解しました。だけど物的証拠なしで『はい。そうですか』って素直に信じられる訳ありませんよ」
「……」
「でしょうね……では一つ情報をご提供しましょう。一ノ瀬武臣《いちのせたけおみ》この男をご存じでしょうか?」
一ノ瀬と言うと、京都を発祥とする。古い陰陽師の家系だったと記憶している。
「その様子ではご存じ無いようですね。一ノ瀬武臣はデスク組の中では有名な若手の保守派として知られています」
「一ノ瀬武臣ってあの一ノ瀬ですか……」
伊吹が大きな声で驚いた。
はて誰だろう?
そんな事を考えていると伊吹が丁寧に説明してくれる。
「一ノ瀬家は宇多源氏、清和源氏、諏訪系、藤原系と四種類の由来がありますが、武臣の諏訪家は藤原系つまり公家です。とは言っても地下家ですが……そして今回の仕事の割り振りの裏にはどうやら一ノ瀬家の暗躍があるみたいです」
「あーそこへ繋がる訳か……」
通常、鬼神が降臨する場合には極端な魔力の偏重が起こる。
その兆候を見逃すほど鈍い人間は魔術師にはいない。
しかし今回はその兆候が極端に薄かった。
何らかの手段で縁のある鬼神を招来したとしか思えない。
それに何より審神者である少女を、鬼がいる可能性が高い現場に向かわせることは、正気とは思えない。
つまり一ノ瀬武臣は、鬼神を招来したグループかそのグループに操られていることになる。
恐らく吉田家の台頭を嫌ってのことだろうが、鬼神に操られるとは同じ陰陽師として情けない。
「土御門さんは御存じのようですね。端的に一ノ瀬武臣と言う人物を表せば、現状維持を一番に考える自己保身を体現したような人間です」
「酷い言われようですね」
瀬織がボソっと呟いた。
「恐らくは彼を始めとする現状維持派は彼女……幸徳井珠世さんの秘匿死刑を求めるでしょう。ですが、私個人としては使えるモノは使うべきだと考えています。封印・結界班としてはあなたのように節度を持って頂きたいところですが」
一瞬『御左口《ミジャグジ》』のように? と言う言葉がでかかったものの何とか堪える。
「だから休めるうちに休んでおけと」
「その通り。最悪の場合魔術戦闘になるでしょうから魔力を回復させるべきです」
二人の視線は、守屋さんの言葉に甘えようと言っているように見えた。
「はぁ……」
短く深い溜息を付くとこう答えた。
「ではお言葉に甘えさせて頂きましょう……」
………
……
…
三十分ほどで目的地である。陰陽師協会東京本部に到着したようで守屋さんの声で起こされる。
「到着しました」
軽い睡眠……魔力の回復だけのつもりだったが、思いのほか疲れが取れた。
少しばかり眠気が残っているが今動かなければ、彼女を見殺しにすることになる。
それだけは避けなければいけない。
眠気を取るために目を擦っていると、守屋さんが話しかけて来た。
「随分お疲れのようですがもう一、二戦。戦えますか?」
その声は酷く心配しているように聞こえた。
「多分大丈夫ですよ」
「流石は魔力お化け……」
「彼の鬼神に比べれば人間の魔術師なんて子供ですよ……」
「武力はあっても政治力を試される場ですのでお気を付けを……」
「ご忠告ありがとうございます。でも大丈夫ですよ……鬼神は恐らくもう自我のない魔力だけの存在になりました。それよりも他の悪神の方が心配です」
「他の悪神? ――ッ!? それは一体……」
「詳しい話は一ノ瀬さんを始めとする上層部に伝えます」
「……我々諏訪神党は神殺しとなった貴方との関係を強化するべきでしょうか?」
「お好きにされたらいいんじゃないですか?」
「ではそのように……」
古神『御左口《ミジャグジ》』を祭る一族の娘は、俺の意志を汲み取った。
「警戒させてしまったようですね……私はあなたに敵対するつもりはありません」
俺とやり合えば、この封印・結界班が壊滅すると思っているから『敵対するつもりはない』と俺に向けて言っているのだろうか? まぁ確かにかなり魔力を消耗したとは言え、今《・》の俺なら倒せる。
恐らく守屋優子、否、諏訪としてはくだらない協会内の政治には出来るだけ不干渉を貫きたいというのが本音だろう。
なにせ彼らは旧神『御左口《ミジャグジ》』を奉り慰撫し封印しているのだから……中央の政争にかまけている余力などないというのが本音だろう。
『諏訪神党』自体昔から独自性が高く、古くから社格もあるのに本来天津神に敵対する国津神――出雲の神を祭っている古神道系一派だ。
俺が死んでから300年後には、幕府の呪的防御全般を請け負ったことで武士化し、現在の諏訪神党を結成し乱を起こすに至ったという。
武家系魔術師の中でも特に有名な一団だ。
「あなた個人の感情は理解しました。だけど物的証拠なしで『はい。そうですか』って素直に信じられる訳ありませんよ」
「……」
「でしょうね……では一つ情報をご提供しましょう。一ノ瀬武臣《いちのせたけおみ》この男をご存じでしょうか?」
一ノ瀬と言うと、京都を発祥とする。古い陰陽師の家系だったと記憶している。
「その様子ではご存じ無いようですね。一ノ瀬武臣はデスク組の中では有名な若手の保守派として知られています」
「一ノ瀬武臣ってあの一ノ瀬ですか……」
伊吹が大きな声で驚いた。
はて誰だろう?
そんな事を考えていると伊吹が丁寧に説明してくれる。
「一ノ瀬家は宇多源氏、清和源氏、諏訪系、藤原系と四種類の由来がありますが、武臣の諏訪家は藤原系つまり公家です。とは言っても地下家ですが……そして今回の仕事の割り振りの裏にはどうやら一ノ瀬家の暗躍があるみたいです」
「あーそこへ繋がる訳か……」
通常、鬼神が降臨する場合には極端な魔力の偏重が起こる。
その兆候を見逃すほど鈍い人間は魔術師にはいない。
しかし今回はその兆候が極端に薄かった。
何らかの手段で縁のある鬼神を招来したとしか思えない。
それに何より審神者である少女を、鬼がいる可能性が高い現場に向かわせることは、正気とは思えない。
つまり一ノ瀬武臣は、鬼神を招来したグループかそのグループに操られていることになる。
恐らく吉田家の台頭を嫌ってのことだろうが、鬼神に操られるとは同じ陰陽師として情けない。
「土御門さんは御存じのようですね。端的に一ノ瀬武臣と言う人物を表せば、現状維持を一番に考える自己保身を体現したような人間です」
「酷い言われようですね」
瀬織がボソっと呟いた。
「恐らくは彼を始めとする現状維持派は彼女……幸徳井珠世さんの秘匿死刑を求めるでしょう。ですが、私個人としては使えるモノは使うべきだと考えています。封印・結界班としてはあなたのように節度を持って頂きたいところですが」
一瞬『御左口《ミジャグジ》』のように? と言う言葉がでかかったものの何とか堪える。
「だから休めるうちに休んでおけと」
「その通り。最悪の場合魔術戦闘になるでしょうから魔力を回復させるべきです」
二人の視線は、守屋さんの言葉に甘えようと言っているように見えた。
「はぁ……」
短く深い溜息を付くとこう答えた。
「ではお言葉に甘えさせて頂きましょう……」
………
……
…
三十分ほどで目的地である。陰陽師協会東京本部に到着したようで守屋さんの声で起こされる。
「到着しました」
軽い睡眠……魔力の回復だけのつもりだったが、思いのほか疲れが取れた。
少しばかり眠気が残っているが今動かなければ、彼女を見殺しにすることになる。
それだけは避けなければいけない。
眠気を取るために目を擦っていると、守屋さんが話しかけて来た。
「随分お疲れのようですがもう一、二戦。戦えますか?」
その声は酷く心配しているように聞こえた。
「多分大丈夫ですよ」
「流石は魔力お化け……」
「彼の鬼神に比べれば人間の魔術師なんて子供ですよ……」
「武力はあっても政治力を試される場ですのでお気を付けを……」
「ご忠告ありがとうございます。でも大丈夫ですよ……鬼神は恐らくもう自我のない魔力だけの存在になりました。それよりも他の悪神の方が心配です」
「他の悪神? ――ッ!? それは一体……」
「詳しい話は一ノ瀬さんを始めとする上層部に伝えます」
「……我々諏訪神党は神殺しとなった貴方との関係を強化するべきでしょうか?」
「お好きにされたらいいんじゃないですか?」
「ではそのように……」
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