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第56話 転生陰陽師は巫女を移す

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 俺達四人は珠世を中心にとして、五芒星を描くように呪符を配置する。

 最高峰の封印結界である【八陣結界はちじんけっかい】には遠く及ばないもののとしは、簡易結界として最善の選択だ。

 わざと属性を固定化させた呪符――五行符は術の発動速度を高める優秀な触媒だ。

 千年前ならこの程度の結界を構築するのには、『時間』や『練度』が求められた。
 現代では呪符のような触媒を用いることで、『時間』や『練度』を踏み倒すことができる。

 こういうところに技術革新を感じる。
 霊的危険物扱いされている事を改めて痛感し、珠世は言葉を弱音を零す……

「……なんだか危険人物扱いされてて、嫌なんでけど……」

「はぁ……何をいまさら危険人物扱いじゃなくて、そういう扱いをしてるの!」

 瀬織の語気に合わせて彼女が担当している。
 木気と金気の呪符の霊気が一瞬、強くなり五芒星型の結界はグニャリと歪む。

「湊! 魔力が強くなってます! 抑えて、抑えて!」

 隣接する水気を担当する。
 伊吹は、悲鳴に近い声を上げた。

「あら、ごめんなさい……」

 その一言で出力は抑えられ、歪んだ結界は本来の姿を取り戻す。

「酷いよ~~」

 こっちは軽いパニックだというのに、結界内の珠世には随分と余裕があるようだ。

「仕方ないですよ。神仏を降ろせる巫女が一体世界で何人いると思ってるんですか……」

「そんなにすくないんですか?」

 自分のことなのに媛巫女について珠世はしらないようだ。

「幸いこの国は多いほうですけど、世界的に見れば少ないですね……」

「無駄口叩いてないで行くぞ……」

「「「はーい」」」

「俺は引率の先生か!」

 一応講師ではあるか……。
 結界を維持しながら病室を抜け、廊下を抜け特別呪術輸送車がいる救急搬送口に向かうのであった。


………
……



 ガラス製の自動ドアの向こうには、白を基調とし統一された洋服を着た集団がおり、車のバックドアは既に開きまるで大きな口のようだ。
 集団の先頭には年若い女性が能面のような表情を浮かべ佇んでいる。

 恐らく彼女が封印・結界班班長の守屋優子もりやゆうこだろう。

 先頭を歩いているのは、近接戦闘に強い俺なのだが俺が彼女に挨拶する事はない。
 現在ランクを持っていない俺の扱いは公的にはただの一般人だからだ。

「私は倉橋瀬織よ」

「土御門伊吹です」

「勘解由小路湊です」

 隊長らしき女性は俺を一瞥する。

「特別一級魔術師の守屋優子と申します。皆さん対象の護送は我々封印・結界班お任せ下さい」

 そう言うと特別呪術輸送車のエンジンが始動する。

「勇奈《いさな》五行封印の上から簡易八陣結界を張りなさい」

「了解しました」

 勇奈と呼ばれた女性が中心と成って車内に乗り込む。

「そのまま車に乗ってください。五行封印の上から略式で結界を張りますので……」

 言われるがまま、ステップを踏んで車内に乗り込む。
 様々な封印を施すために護摩壇や鳥居、注連縄としった大道具から数珠、鏡、勾玉といった祭具をはじめ専門的な治療設備まで整っている。

 八人の女性が胸元から無垢の木の鞘を取り出すと鞘から払い、短刀を車内の床に勢いよく振り下ろす。

「「「「「「「「急急如律令《きゅうきゅうにょりつりょう》」」」」」」」」

刹那。

 刀身が青白い閃光を発し、オーロラのような光のベールが床から浮かび上がると八枚の板を形成し、中心にいる珠世を取り囲む。
 ボソボソと聞き取れるか聞き取れないか分からない程度の音量で、八人は延々と呪文を詠唱を続ける。

 三人でも魔力を揃える事が困難だというのに、それを八人で行うのだから結界を主に使う彼らには尊敬の念しかない。

 恐らくは、無垢の鞘や短刀には八陣結界を補助する何かがあるいのだろう。

「凄いわね。これが対呪術医療の最前線に向かう車両……」

 元働く車マニアの血が騒いだのか、少年がスポーツカーを眺めるような視線を向ける。

 車のフーレムや内装や外装のいたるところに、真言や梵字と言った魔術文字が刻まれており破邪の力を強化している。
 液体は聖水と聖油を使用し、タイヤとホイールは摩尼《マニ》仕様のまさに魔術のごった煮のような節操のない特別車両だ。
 
 金属の素材があらゆる方法で聖別された特別仕様の護法装甲車は、内外からのあらゆる魔術的攻撃を防ぐことを目的に作られた動く病院だ。

「ホントですね。この呪具って名家の謹製品じゃないですか!」
 
 呪具作成の名門の家紋が刻印された祭具を見つけたようで、星川は大きな声を出す。

「驚かれるのも無理はありません。この特別呪術輸送車は霊的災害に被災された方を一人でも多く助けるための協会肝いりの車両です。なのでこれだけ大が掛かりなんです」……お三方は夜通し番をされていると聞いております。本部に到着するまで、少しやすまれてはいかがでしょう?」

――と言葉だけ聞けば、夜通し仕事をした俺達を気遣うような発言をする。

 が、それは本心なのだろうか?
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