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第一章

第8話 領都ベネチアン

 領都ベネチアンは陸運と水運を接続する要衝だ。
 周囲は外的からの侵入を拒む白亜の巨壁が覆っている。
 道路にはびっしりと石畳が敷き詰められ、大型の馬車二大が余裕を持ってすれ違えるほど道幅は広く、城下にはまるで祭りの時のように人々の活気に満ちている。

「前世に来た時から思ってたけど、金のある領地だよなあ~」

 恐らく無能な父の差配ではなく、有能な家令か配下の貴族によるところが大きいだろう。

 先ずは冒険者ギルドに向かった。
 ゲームや異世界モノの小説に出来る。依頼を斡旋したり、冒険者を支援したりする。異世界版ハローワークや派遣会社のような組織だ。
 この世界でもそれは変わらない。

 俺はためらうことなく大きな建物のドアを開けた。
 建物の中からは仕事終わり? と思われる冒険者達が酒や食事を楽しんでいる。
 香辛料や肉の焼ける美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。

「いらっしゃいませ。お仕事のご案内・ご依頼でしたら奥のカウンターへお食事でしたら空いているお席へどうぞ」

 見目麗しい長い茶髪のお姉さんが、見るからに子供の俺にも愛想良く声を掛けてくれる。
 魔石灯の灯に照らされた室内には、金属、革と様々な素材とデザインの鎧を来た男女がたむろしている。

 だがあからさまにガラの悪そうな人は見当たらない。
 まあ人相が悪い人はチラホラいるが。
 子供が一人で入ってくるのが珍しいのかやけに注目を集めている。
 俺の場合服の仕立が良いのも原因かもしれないが。

 お姉さんの案内に従って奥の受付に向かう。
 受け付けに居るのは女性が三名男性が二名だ。男性の一人は見るからに元冒険者と言う風体で、古傷で眉の一部が消えている。

「登録をしたいんですけど……」
「登録には大銀貨五枚が必要になりますが……」
「大銀貨?」
「大銀貨は小銀貨の上の貨幣で小金貨の下になります。因みにコレですね」

 ――と言うと見本を見せてくれる。
 昔は銅貨、銀貨、金貨が基本だったのに……今ではその枠組みが増えたらしい。
 魔王の脅威が減って貨幣経済が浸透してきたと言えるのだろう。

 さらに俺以外の勇者バカ達の活躍のせいで、幾つかの国が勃興しては滅んでを繰り返す度に、銀貨でもどこどこ国の銀貨と言った感じで数が増えているそうだ。
 含有率がそのまま価値になる金本位制の世界で、一体何をしてるんだか……

「お金が足りないので……今回は遠慮しておきます。ここに来るまでにゴブリンを倒したので、魔石買い取って貰えますか?」

「そうですか……魔石を確認してもいいですか?」

「どうぞ……」

 ポケットの中で魔術を発動させ、中から魔石を取り出しギルド職員に手渡した。

「確かにゴブリンのもののようですね……こちらはどちらで?」

「は、林で……」

「林と言うとご領主様の林でしょうか? あそこは領主さまの許可なく立ち入ってはダメなんですが……目を瞑りましょう」

 こうして魔石を買い取って貰うことは出来たものの想像以上に長く拘束されてしまった。

………
……


「やれやれ小銭を稼ぐために大損した」

 しかし情報提供料の前金として小銀貨を貰えたので忘れることにした。
 古道具屋に入って小銀貨で買える一番高いモノを購入して、移動しながら【アイテムボックス】越しに回復魔術をかけ、区画の離れた場所でそれを転売する。

「これなら買取は小銀貨一枚と大銅貨五枚だね」

「そうなんだ。じゃあ別のお店に持っていこうかな……」

 そう言って商品をカウンターから取ると……

「待ってくれ……」

 店主に呼び止められる。

「何おじさん?」

 俺は振り返りさも面倒くさそうな表情をわざと浮かべる。

「負けたよ……小銀貨二枚でどうだ?」

「誠意を込めて小銀貨二枚と大銅貨一枚なら……あ、出来ればモノで欲しいな」

「商談成立だな……」

 俺とおじさんは握手を交わした。
 こうして俺は「藁しべ長者」のような金物交換を繰り返し、一日で大金貨を稼ぎだした。

「一日でかなり儲かったな。まさかこんなにとんとん拍子に行くとは思っていなかった」

 今日は贅沢なことに昼食も食べられた。
 それも肉串だ! 柔らかい肉なんて久しぶりに食べた。普段は肉なんか食べられないし、例え食べられたとしてもスープの出汁に使われた筋肉ばかり、今度畑の作物を狙ってくる鳥でも捕まえて捌いてやろうか?

 安定した動物性たんぱく質と言えば、殆ど鳴かないらしいメスニワトリを飼うのもアリだな……何日かに一回程度にはなるが、鶏卵で安定してたんぱく質を摂取できる。

 貧困が多いアフリカ諸国では、ニワトリを使って貧困を撲滅出来ると言う記事を見たことがある。
 実際外出が出来て金もある今、選択しとしてはアリだそんなことを考えながら帰路についた。

「ペット欲しい……」
 
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