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第二章

第33話 トリアージ

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 トリアージとは、傷病者の状態に応じて治療の優先順位を決めることを言い主に大規模な事故やテロ、戦争時の医療現場で用いられる。
 日本人に馴染みやすい人物を上げれば、『白衣の天使』や『バーサーカー』として有名なフローレンス・ナイチンゲールや『医者にして文豪』の森鷗外もりおうがいなども関わっている。

 医者にして文豪って……文豪にして剣豪のキャッチコピーで有名な仮面ラ〇ダーが脳裏を過る。
 コナンドイルや知念先生。web小説だと津田先生とか高山先生とか結構多いんだよな……

 俺は頭をふると仕事モードに切り替える。
 一般的な能力の範疇で両手を伸ばして届く範囲の人々を分け隔てなく救おう。
 
「大丈夫ですかー聞こえますか? お名前言えますか?」

 声を掛けながら脈を取る。

「ディアベル……」

 脈は正常、自分の名前も言えることから意識の混濁は無し、見るからに骨折しているので黄色のタグを付ける。

「後でまた来ますのでそれまでは、痛み止めにポーションを呑んでいてください」

 ポーションは傷の回復効果が薬効だが、微弱ではあるものの呪いへの抵抗を上昇させたり、痛み止めとしての効能を持つ。
 言い方は悪いが手足の骨折程度では即死しない。
 だからディアベルさんの優先度は二番目。
 入院治療が必要だ。

「大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だ! 他の奴を!!」

 脈も意識も正常。
 軽度の火傷と言ったところだ。
 問題なしの緑のタグを付ける。
 ひたすら走り回りながらタグを付けつつ、適宜対処をする。

「判りましたポーションをお願いします。判りますか?」

 ゆすりながら声を掛けるが反応はない。
 脈を取るが脈拍は薄く呼吸も荒い。
 鎧は変形し大きな爪痕によって引き裂かれている。
 不味いかもな……

「【鑑定】」

 【鑑定スキル】を発動させると病状が確認できた。
 恐らくは肺の損傷か……重症だな……
 優先度一位の赤いタグを付けることなく、治療を開始する。

「この場で回復魔術を発動します。【ヒール】!!」

 回復魔術をピンポイントに胸の上に発動させる。
 淡い緑の光が弾け【ヒール】が発動する。

「なんて緻密な魔力制御なの!」

 多くの回復術師のように離れた場所から発動すればロスが多く、その効果は十二分に発揮できない。
 最小限の魔力で最大の効果を得ようとすれば、文字道理に手を当て術をかけることが最も効率的なのだ。
 脈は正常に戻り、呼吸も安定している。
 入院措置が必要であることを示す黄色のタグを付ける。

「――っ戻りません!!」

 涙目で声を上げた若い回復魔術が目に入った。

「処置変わります」

 脈は低く出血状態が酷いようだ。打撲痕から考えると、サラマンダーの前足か尻尾による攻撃を真面に喰らったようだ。
 【身体強化】を常にかけられていれば軽傷で済んだのに……

「【鑑定】」

 小さく呟いて【鑑定スキル】で見れば、腹部で出血を起こしているようだ。
――ショック状態を起こしかけている。直ぐに止血しないと……腹部に一度触れ触診で判別したアリバイ作りをした後こう言った

「腹部の中で出血しているようです。中級以上の回復魔術で無理やり血を止めるか、ポーションの服用による止血作用に期待するか、腹を裂いて直接血を止める必要があります」

「無理です! 中級以上だなんて私使えません!! それに腹を切裂くなんて勇者様でもあるまいし……」

 この時代には外科的手法は廃れてしまった技術のようだ。
 一般高校生の俺達でも知っているような手術を、他に方法がないからと言う理由で行ったことがあった。
 回復魔術やポーションと言った既存の技術以外の治療手段を、既得権益者が嫌ったのだろうか?

 考察していている時間はない。
 俺なら直ぐに治す事ができる。
 しかし、それでは彼女のレベルアップには繋がらない。
 心が折れた彼女に必要なのは自信……つまり成功体験と自らを奮い立たせてくれる存在だ。
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