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第二章

第35話 ブラック

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 特にスプラッタはダメだ。
 多少慣れはしても大丈夫にはならないと思う。
 トリアージをしながらポーションで誤魔化し、赤いタグ――優先度一位の人間から【ヒール】を使い危険域から脱させる。

「ふぅー」

 緊張感と熱気で汗が滴る。
 袖口で拭うと泥まみれの男が俺を引っ張った。

「早くしてくれっ!」

 人が大勢集まっており、人ゴミを掻き分けて現場に向かう。
 人を掻き分け患者の元に辿り着くとそこに居たのは、想像を絶するモノだった。
 黒く焦げたモノが床に横たわっている。
 それが人間だと直ぐに理解できなかった。

「確認します」

 と一声かけて被せられていたボロ布を取り払うと、炭化していない四肢が見えそれが人間なのだと実感できた。
 これだけ人望のある冒険者がサラマンダーのブレス如きで、炭化するほどの重症を負うか? と疑問が過るが今は他のことを考えている暇はない。

 【身体強化】の魔術で強化した聴覚が間者の呼吸音が、徐々に緩やかに成っていくのを喧騒の中から聞き分けた。 
 ポーションをじゃぶじゃぶとかけながら【鑑定スキル】を発動させ容体を確認する。

 火傷、裂傷、骨折、欠損、破裂、出血、etc、etc……。
 
 その中に一つだけ見過ごせないモノがあった。
 『呪い』。
 通常のサラマンダーは使わないはずの攻撃だ。
 上位種や変異種あるいは、サラマンダー以外の敵と交戦したのだろうか?

「【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】っ!!」

 声に出さずとも発動できる回復魔術を声を出して発動する。
 今の俺なら一回、それも一瞬で治すことが出来る。
 しかしそれをしては、必要以上に目立ち過ぎる。
 俺はこんな家を継ぎたくないのだ。
 体内から順に治していく、炭化して使い物にならない腕は後回しだ。
 
 破裂、内出血、欠損、火傷、裂傷、骨折、etc、etc……。
周囲が固唾を呑んで見守る中、順々に対応しそれだけだと申し訳ないので魔力を大量に放出し、さも奇跡が起きたと言うていで欠損部位を治す。

「おお! 奇跡だ!! 奇跡が起きた!!!」

「神は我らを見捨ててはいないようだ」

「おお神よ」

 周囲にいた冒険者――恐らく仲間――が「うおおおおおおお」っと歓声を上げる。
 なんだか申し訳ない気持ちになってその場を後にする。

「ナオス様はどうして実力を隠しているんですか? 能力がある人間は社会に還元するべきだと思います」

「俺は全く思わない。能力を隠しているのは面倒ごとに巻き込まれたり、こんなクソ見たいな家を継ぎたくないからだ」

 グレテル先生は綺麗ごとが好きなようだ。
 確かに俺の回復魔術は神に与えられたものと言っていい。
 だからって社会に還元しなくちゃいけない通りはない。
 俺が女神に願ったのは、人生を後悔なくやり直すことであって使徒とか聖者として神に奉仕する人生ではないのだから。

 俺が好き勝手生きた結果、女神さまの特になるのなら構わないが率先して協力するつもりは一ミリたりともない。
 前世勇者として魔王を倒した事だって自分達が望んで戦い倒した訳じゃない。
 この世界に拉致され「魔王に世界が滅ぼされそうです助けてください」と、俺を巻き込んで人質交渉をされたに過ぎない。

「貴族の恩恵に預かっているのにですか?」

「望んで産まれた訳でもなければ、つい最近まで冷遇されていたんだが? だったら孤児院にでも預けてくれた方が俺は嬉しかっんだが」

「……」

「お前が黙っていればお前と考えが合わない俺が、当主になる可能性は低いだろう。今日の事は黙っているんだな」







 状況が一段落したころ複数のひずめが鳴る音が聞えた。
 
「サラマンダーが出たと訊いて駆けつけて見ればなんですのこのありさまは?」
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