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第8話

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「ホラね? やっぱりなにかあった」

「勇樹《ユウキ》大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

「だめだろ? いきなり式を打つなんて……」

「なんかあるのに判らないのが気持ち悪くて……」

「それでもだ!」

「あなたそのぐらいにしてあげて……」


 ここで母が助け船を出してくれる。


「ご夫妻申し訳ございません。私の術が未熟だったばかりにご子息に不快な思いをさせてしまいました」


 細身で長身の女が謝罪の言葉を口にする。
 しかし、薄っぺらい。
 全く思っても居ないというのがひしひしと伝わってくる。
 言葉の端々に怒り? のようなものを感じる。
 パンツスタイルはキャリアウーマンと言った雰囲気であるものの、墨汁のような黒い長髪は大和撫子と言いたくなるが隠せないメンタルが病んでる系の雰囲気を発している。


「君は?」

「申し遅れました。土岐菖蒲ときあやめと申します」

「これはこれは、鬼斬りの一族にお会いできるとは……光栄なことだ」

「私など……鬼や牛鬼、土蜘蛛と言った名だたる大妖《たいよう》を斬った祖先に比べればまだまだです……」

「我が吉田家など渡辺家からすれば成り上がり者に過ぎんだろう?」

「歴史と強さは比例しません。江戸幕府天文方を歴任された吉田家の方が近年の功績は高い……」

「君は年長者を立てるのが巧いな」

天呪てんじゅを持つ方にたてつくのは、馬鹿のやることです」

「違いない……」


 父と渡辺と名乗る女性は舌戦を続ける。
 鬼や牛鬼、土蜘蛛と言えば日本の有名な妖怪の代名詞だ。

それを斬ったって物凄い偉業なんじゃ……


「隠形の術、それもこれほどの高精度の術を意図も容易く見破るなんて……」

「勇樹《ユウキ》は目かカンいいいいらしいな」

「……見鬼けんきの才に優れているとか、カンがいいの域では済まないと思いますが……」

「ではウチの息子は『魔眼《まがん》』を持っているというのか?」

「可能性は高いと思います。もしそうでなくともそのカンは将来その子……勇樹《ユウキ》君の宝となるでしょう」

「……愚息が迷惑をかけた」

「いえ、私の修行が足らなかっただけです。同じ武家として将来が楽しみな限りです」


 確かに子供相手に自分の得意とする術を見破られたとあっては、怒りも込上げてくるだろう申し訳ないことをした。

「ぶけけいとかってなに?」

「今から100年と少し前までは、降魔師こうましという存在は様々な呼ばれ方をしていた。陰陽師と言う言葉は訊いたことがあるだろう?」

「うん!」


陰陽師……安倍晴明とか蘆屋道満とか有名だよね……


「だが近年では、使う術の種類や出生問わず全て纏めて降魔師こうましと呼んでいる。だがそれぞれの術の大本は変わっていない。我々武家系の降魔師こうましは当時存在した。術の流派を取り入れ改良し今の術としているのだ」

「つまりさいきょうってこと?」

「……術の多彩さでは陰陽師に負ける。だが武器を取れば近接戦闘では最強だ」

「さいきょう!」

「ああ最強だ。先ず家に帰ったら剣術の稽古をしよう」

「うん」

「あなた。武家の術者にすることを否定はしませんが、公家系をバカにしすぎです」

「む……」

「いい? 武家系は発動速度が速く近接戦闘能力を高めるモノを好んで、公家系は発動が遅くても高威力で遠距離を好むっていう大まかな方向性の違いがあるの。
全体的に霊力や呪力が低下傾向にある現代では、呪力の篭った特別な道具を用いることが多く武家系の術が見直されているのよ」

「ブシはむかしバカにされてたの?」

「術師たるもの優雅であれ、と言う美意識が強いのよ」

「だがしかし、『呪力の篭った特別な道具』は高いし数が少ないんだ。オマケに歴史的価値も高いから、その多くが美術館や名家の蔵や国庫などに収容されている。当家にも数はあるから今度鞍を見て見よう」

「うん!」


 何歳になっても剣に引かれるのは男の性だ。
 

「いまからなにをするの?」

「勇樹《ユウキ》はもうできたけど、降魔師こうましとして物に呪力を込めて立派な降魔師こうましになりますってご先祖さまや神仏に宣誓するのよ」

「ふーんそうなんだ」

「今日は御三家の当主に勢ぞろいするからくれぐれも失礼のないように……」

「はーい」


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