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第47久しぶりの狩り
しおりを挟む久しぶりに魔の森と呼ばれる。未開拓領域に足をを踏み入れる。数週間前までの落ち葉だらけの森とは違い。12月も半ばになると、雪が積もっていて、全く別の森に感じる。
「なるほど、どうりで薬草の納品の依頼がない訳だ。この雪の中を掻き分けて、薬草を探す事が出来る冒険者が殆どいないからだろう……」
これだけ寒くなると、モンスターの分布も変化する。冬眠するものも居れば、その穴を埋めるように遠征しに来るモンスターが少なからず要るのだ。
前回と変わり、今回掻き分けるのは大量の落ち葉ではなく雪だ。表面の積もったばかりの雪は、フワフワとした羽毛のようで、踏めば、シャキ、シャキ、と音を立てて踏み固められる。
雪輪《かんじき》を履いていなかったら、膝まで雪に埋没してしましいそうだ。
冒険者として昇級した俺に与えられたのは、前世のヘラジカやギガンテウスオオツノジカを彷彿とさせる。体躯を誇る巨獣ゼブル・エルクの討伐だった。
防寒装備や防寒着の素材として人気が高く、真冬に成れば新人もベテランも冒険者はゼブル・エルクの毛皮を身に着けると言うほどなので、需要を見越した依頼との事だ。
本当は実家……と言うか本家に新年の挨拶をするために帰る準備をしなくちゃいけないんだが、準備も帰る事も面倒と思っている俺は、冒険者ギルドに顔を出しついつい依頼を受けてしまった。と言う訳だ。
紺鎧熊の単独討伐の功績を高く評価され、本来はEランクの玉石級と成るところを、Dランクの水晶級にしてもらった。その代わりという事で、ゼブルエルクの討伐に出向いていると言う訳だ。
やる気のないいつもの受付嬢に聞いたところ、
「今回から特別措置として、ギルドの回収班を派遣しますので、モンスターを狩ったら出来るだけ纏めて、結界魔術でも魔道具でもいいので野生動物に荒らされないようにしておいてください」
――――と言われてしまった。
恐らく俺が肉屋に伝手を持っているとは、思わなかったのだろう……多分だが表情の変わらない。買い取り帳場の女性職員が上司あたりに、告げ口をしたのだろう……
嫌味と言わんばかりに、「ギルドの回収班の手間賃はおいくらですか?」と聞いてやった。
すると「買い取り価格の五割です」と言われたので、「持ち帰って検討します。一応連絡方法を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」と、断る事を遠回しに言う。日本人特有の玉虫色の返事をしてやった。
あの時の唖然とした表情は、漫画で見るような分かりやすいモノだった。金の無い学生冒険者なら安く買いたたけると思ったようだが、そうは問屋が卸さない。
せめて三割なら納得したんだけどなぁ……
まぁ今回は利用してやるか、1T超えの鹿なんて、そう何頭も自力で持って帰りたくもない。
さてそうと決まれば群れの捜索だ。
やる気の無い受付嬢の話によると、ゼブル・エルクは冬の時期になると10頭前後の群れを形成し、山から下りて来て、落ち葉や雪に埋もれた木の葉や樹皮、地面に落ちた種実類、水草等を食べると言う。巨体と厚い毛皮を持つため、冷涼な環境を好むと聞いている。
同じ場所でも景色が違うだけで新鮮さを感じるのは、俺だけだろうか? ゲームでも世界の異変後とかそう言う設定で、同じマップの使いまわしであったとしても、目新しさを感じる。DQMJ1とかDQ11 とかある意味最高だった。
「厚着をしているとはいえ少し寒いな……ヒート〇ックとかないのかよ……ある訳ないか化学繊維なんて……」
もしこの世界で化学繊維なんて作れる奴が居たとしたら、転生者か錬金術師ぐらいだ。俺が持っている錬金術師のイメージと言えば、ペテン師、賢者の石、太腿出した女、鎧の弟とチビの兄貴ぐらいのもんだ。
「のんびりとした今の生活は好きだけど……科学文明の恩恵が懐かしい……ゼブル・エルクの肉はそこそこ美味いって、聞いてるから巧く倒さないとな……」
となると魔術で倒すしかないか……転生した当初は魔術大好きだったんだが、倒す実感も技術が巧くなる実感も少なく、3歳になる頃からはもうカラダ作りを始めていた俺としては、いささか不満が残る狩猟法だ。
そんな事を考えながら、森を彷徨う事30分以上雪に埋もれた森を彷徨っているとようやく大きな蹄の後を発見した。
「ビンゴ!」
俺はしゃがみ込むと、踏み固められた大きな蹄の後を指で触れて確認する。
触れてみると上にはまだ余り雪が積もっておらず、溶けて氷状にもなっていない。
という事は、まだそう離れていない場所に群れが居るという事だ。
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