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第61話食堂1
しおりを挟む広い食堂には大きな長机が一基部屋の中心に置かれており、座席は暗黙の了解で指定されており、最奥の席は家長である伯母上の席となっている。
叔母上に近い方が上座で、叔母上から遠い場所が下座である。基本的には産まれた順番と一族への貢献度で座席が変更されると言われている。
身の丈を超えた大きなドアをメイドが開ける。
「どうやら叔母上はまだいらしていないようだ」
部屋を見回すが豪奢な調度品やこの日の為に飾られたのであろう、花瓶に生けられたドライフラワーが飾られていて華やかな印象を与えてくれる。
「お兄様本日は、私達以外のクローリー家の者は叔母上以外いないと言う話ですが……座席はどのように致しましょう?」
「私はいつもの席に座ればいいと思うわ。怒られるの嫌だし……」
「叔母上は俺の事が嫌いなのか直ぐに虐めて来るからなぁ~~余計な口実を作りたくないな」
「分かりましたお兄様がそう仰られるのであれば、私も従いましょう……」
俺達二人は一番下よりも二席上と三席上の下座に座る。それに対して、ミーネルは子供世代では一番上の席に座っている。
序列として先代当主の一人娘を、下座も下座には座らせられないという事だ。
ミーネル、長兄のリチャード、次男のニール、三男のコネリー、四男の俺、長女のアトナ、叔父上の息子のアンソニー、ひいお爺から一族扱いされていない大叔父上の息子のダニエルとなっている。
ミーネルとの間は二席ほどしかないが、誰もいないため少し物悲しく感じる。
数メートルの距離を開けて立っているのは、自身の側仕えであるメイドであり、このクローリー家において“側仕え”とは
「叔母上が来るまで歓談の続きでもしようじゃないか?」
「いいわね。少し喉が渇いたわ人数分お茶でも淹れて頂戴」
序列の一番高いミーネルが給仕メイドに指示を出してお茶を用意させる。
「かしこまりました」と短く返事をし礼をすると奥の部屋からティーポットを運び、白磁器のカップに並々とお茶を注ぐ。
「お熱いのでお気を付けください」
メイドはそう言って礼をすると再び奥へ引っ込んでいった。
茶菓子の類はないが暖を取りつつ喉を潤すのには丁度いい。
シュガーポッドからスプーンで3杯も砂糖を掬い紅茶に溶かす。
「暖かくて美味しいわ」
「ミー姉ぇは相変わらず甘党なんだね」
「アーノルドくんたちがおかしいのよ。こんな酸味のあるものを平気で飲めるなんて……」
この味覚音痴共が……とでも言いたげな訝しむような視線を感じる。
「俺だって得意ではないけど、ミルクを入れれば酸味は弱くなるから砂糖なんて太るだけだ」
「私もお兄様と同じく、酸味が苦手なので渋いグリーンティーの方が好きです」
「レディーに対して“太る”って酷い言い方ね! 世の女性を敵に回す発言だわ」
「ごめんて悪気はないんだよ」
三人とも酸味のある紅茶が苦手なのに、砂糖を入れたり、ミルクを入れたり、何も入れずに飲んだりと三者三葉の様子である。
こうして俺達は三人は談笑を楽しんだ。
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