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第62話食堂2
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「遅れて申し訳ありません」
大きなドアを開け開口一番謝罪の言葉を口にしたのは、少女と見紛う程に若々しい女性だった。
彼女が着ているのは刺繍で飾り建てられた髪色と同じ紫紺のワンピース。襟元や袖口、スカートの裾から黒いフリルが覗いており、腰回りは見せつけるような黒いコルセットで飾り立てている。
所々にワンポイントととして、薔薇や十字があしらわれているのでゴスロリと呼ぶべきなのだろう。
服と分断された襟をからは、胸丈をどの短いネクタイが伸びている。
だが俺は彼女が見た目と違う年齢だと理解している。
「お久しぶり。叔母上ご壮健そうでなによりです」
彼女の名前は、ソーナ・フォン・クローリー俺の父母と同じ40歳代とは思えない程若々しい見目をしている。
腰に佩しているのは、魔杖細剣・黒揚羽蝶。叔母上が打った剣の中で間違いなく最高の一振りである。
「アーノルド来ていたんですか。あなたの事だから何か理由を付けてここには来ないと思っていましたが……」
叔母は心の底から楽しそうに、「ちゃんと来たのは褒めてあげます」と言った。
「ありがとうございます」
「アトナとミーネル暫くぶりです。それぞれの鍛冶、付与、剣術の習熟は目覚ましいものがあると聞いています。来年の秋には学院の生徒ととなり、他の生徒の模範となるように頑張ってください」
「「クローリー家の恥とならぬように励みます」」
「では食事にしましょうか」
叔母上がパンパンと短く手を叩くと、ドアが開きメイド達が配膳台を押して部屋に入って来る。皿に乗った料理が何品かと、グラスに注がれた酒と言った前菜が配膳される。
「アンソニーとダニエルが欠席という事で本日は女子会……と言いたいところですが、残念ながらアーノルドと言う不純物が混ざっていますが気にせずに楽しみましょう」
邪魔者で悪かったな!
「叔母上もし女子会をしたいと仰られるのであれば、俺は喜んで離席させてもらいますが……」
これは好機! と思った俺は叔母上に提案する。
「冗談ですよ。こういえばアーノルドが離席でもするかと思って言ったのですが……まさか読み通りに動くなんて成長してませんね。それに刀も佩していないようですが……たるんでるのではありませんか?」
「叔母上はこのクローリー家の当主であらせられる。いくら続柄上の叔母とは言えども、完全に気の抜けた対応をするなんて俺にはできませんよ。それに天下に轟くクローリー家それも本家筋の人間が一堂に会するこの時期に、暗殺をしかけて来るとは考えにくいですから、食事の場所に無粋な刃物は部屋に置いてあるだけです」
「それは結構な心意気ですね。学園に入学してから数か月……それで新しい剣は打ったのかしら?」
俺はクローリー家の中では異端とされる。必ずしも剣士が自ら槌を振い、呪いを掛ける必要はないと考えているので、叔母上としてはその考えを改めて欲しいようだ。
「今手元にはありませんが、同級生に依頼されたので一振り濶剣を打ちましたよ」
俺は濶剣を強調して報告した。
「手元にないと言うのは置いて来たって事? それとも売却したという事かしら?」
やけに食いつくな……何か確認したい事があるのだろうか?
「説明したとおり、依頼されたものですので既に納品しました」
俺は段々と答えるのが面倒になって来た。
本当の事を言ってやろう。
「メイザース家の息女のミナ・フォン・メイザースに依頼されたので売却しました」
「はぁ……どうしてメイザース家に売ったんですか? 当家とメイザース家の因縁はあなたも知っているでしょうに……」
叔母上は呆れたと言わんばかりに、ナイフとフォークをテーブルに置いた。
大きなドアを開け開口一番謝罪の言葉を口にしたのは、少女と見紛う程に若々しい女性だった。
彼女が着ているのは刺繍で飾り建てられた髪色と同じ紫紺のワンピース。襟元や袖口、スカートの裾から黒いフリルが覗いており、腰回りは見せつけるような黒いコルセットで飾り立てている。
所々にワンポイントととして、薔薇や十字があしらわれているのでゴスロリと呼ぶべきなのだろう。
服と分断された襟をからは、胸丈をどの短いネクタイが伸びている。
だが俺は彼女が見た目と違う年齢だと理解している。
「お久しぶり。叔母上ご壮健そうでなによりです」
彼女の名前は、ソーナ・フォン・クローリー俺の父母と同じ40歳代とは思えない程若々しい見目をしている。
腰に佩しているのは、魔杖細剣・黒揚羽蝶。叔母上が打った剣の中で間違いなく最高の一振りである。
「アーノルド来ていたんですか。あなたの事だから何か理由を付けてここには来ないと思っていましたが……」
叔母は心の底から楽しそうに、「ちゃんと来たのは褒めてあげます」と言った。
「ありがとうございます」
「アトナとミーネル暫くぶりです。それぞれの鍛冶、付与、剣術の習熟は目覚ましいものがあると聞いています。来年の秋には学院の生徒ととなり、他の生徒の模範となるように頑張ってください」
「「クローリー家の恥とならぬように励みます」」
「では食事にしましょうか」
叔母上がパンパンと短く手を叩くと、ドアが開きメイド達が配膳台を押して部屋に入って来る。皿に乗った料理が何品かと、グラスに注がれた酒と言った前菜が配膳される。
「アンソニーとダニエルが欠席という事で本日は女子会……と言いたいところですが、残念ながらアーノルドと言う不純物が混ざっていますが気にせずに楽しみましょう」
邪魔者で悪かったな!
「叔母上もし女子会をしたいと仰られるのであれば、俺は喜んで離席させてもらいますが……」
これは好機! と思った俺は叔母上に提案する。
「冗談ですよ。こういえばアーノルドが離席でもするかと思って言ったのですが……まさか読み通りに動くなんて成長してませんね。それに刀も佩していないようですが……たるんでるのではありませんか?」
「叔母上はこのクローリー家の当主であらせられる。いくら続柄上の叔母とは言えども、完全に気の抜けた対応をするなんて俺にはできませんよ。それに天下に轟くクローリー家それも本家筋の人間が一堂に会するこの時期に、暗殺をしかけて来るとは考えにくいですから、食事の場所に無粋な刃物は部屋に置いてあるだけです」
「それは結構な心意気ですね。学園に入学してから数か月……それで新しい剣は打ったのかしら?」
俺はクローリー家の中では異端とされる。必ずしも剣士が自ら槌を振い、呪いを掛ける必要はないと考えているので、叔母上としてはその考えを改めて欲しいようだ。
「今手元にはありませんが、同級生に依頼されたので一振り濶剣を打ちましたよ」
俺は濶剣を強調して報告した。
「手元にないと言うのは置いて来たって事? それとも売却したという事かしら?」
やけに食いつくな……何か確認したい事があるのだろうか?
「説明したとおり、依頼されたものですので既に納品しました」
俺は段々と答えるのが面倒になって来た。
本当の事を言ってやろう。
「メイザース家の息女のミナ・フォン・メイザースに依頼されたので売却しました」
「はぁ……どうしてメイザース家に売ったんですか? 当家とメイザース家の因縁はあなたも知っているでしょうに……」
叔母上は呆れたと言わんばかりに、ナイフとフォークをテーブルに置いた。
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