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追いかけてきた攻めにつかまった受けの話
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しおりを挟む「…………」
「…………」
再三の沈黙である。とにかく、ひたすらに、気まずい。
俺はリビングにある皮張りのソファ、の端っこにジャケットも脱がず小さくなって座っていた。ラグの上に座ろうとしたらソファにしなよ、と言われたのだ。こういうところはいつもの恵さんだと思うのに、彼の口調は相変わらずどこか刺々しいもので俺をいっそう困惑させた。
話といっても何を話せばいいか分からなかったし、聞きたいこともたくさんあったけど何を聞けばいいか分からないので俺は俯いたまま無言を貫いていた。
「色々言いたいことはあるけど…」
びくり、と俺の肩が跳ねる。
「とりあえずそんなに怖がらないでほしいかな」
「あ……」
ため息まじりの恵さんの言葉に俺は小さく口を開けて、またすぐに閉じた。そんな俺の様子を見た恵さんは「まあ無理か」と呟いて俺の隣に座った。近づいた距離に動揺して体を退け反らせる。肘置きにぶつかった。
「こっち向いて、直巳」
怒ってる、というより懇願するような声音だった。驚いてパッと顔を上げると、恵さんは眉尻を下げて直巳、と俺の名前を呼んだ。その表情を見て、俺は目を見開いた。なんで、なんでそんな。
「どうして俺の前からいなくなったの」
やっと絞り出したような掠れ声だった。
「どうしてって、」
「朝目が覚めて君がいなかったと知った時の俺の気持ち、わかる?」
そんなの分からない。確かに少しぐらい惜しんでくれたらいいなとは思ってた。思ってたけど、どうしてそんな――悲しそうな顔をしているのかなんて分からない。
「直巳」
恵さんがもう一度俺の名前を呼んで、そっと目を伏せた。その視線は俺のジャケットに注がれている。居心地が悪くて俺はぎゅうと拳を握った。
「これ、俺があげたやつだよね」
そう言って恵さんはジャケットの裾を持ち上げた。思わずびくり、と肩を揺らす。ジャケットも、今履いているズボンだって恵さんからもらったものだ。こんなことになるならやっぱり服は買い替えておくべきだった。後悔しても遅い。
「ご、ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「それは、」
未練がましくて、あなたを諦めることができなくてごめんなさい。
ちゃんと言って、許してもらわなきゃと思うのに、喉に何かが張り付いたように口から音が出ることはなかった。恵さんがさらに距離を詰める。膝と膝がぶつかった。近づいた距離に何か思う余裕はなくて、さらに言うなら何かが決壊しそうだった。
首を傾げながら、何かを堪えるような――俺の聞き間違いじゃなければ悲しそうな声で恵さんが言った。
「俺のこと嫌いになった?」
「きら、い」
嫌いって、俺が? 誰を?
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