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第1章
第44話 穏やかなカフェデート
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「「「きゃーっ! カミラ様、カッコいい!」」」
カミラは白馬にさっそうとまたがると、それを見ていた女の子から黄色い声が聞こえる。カミラは女子から人気があるのだね~。女性の権利など無いラティアリア大陸で、それを勝ち取ろうとする生き方に多くの女性から共感を得ているのだ。
さすがに、ここでもみもみするのはまずいか、みんなの前でもみもみして羞恥に恥ずかしがるカミラなんていうのも興奮するよな。こういうときって、何をしても彼女は許すしか選択肢がない。惚れた弱みじゃないが、好きになった方が負けだな。だがカミラに恥をかかせたくないので、今回は普通に乗っておこう。
しばらく行くと、目的のカフェがあった。丸太を構造材として水平方向に井桁のように重ねて積み上げ、交差部にはノッチを使い組み上げた建築物だ。オレのラヴィアンローズと同じくログハウスだった。
ただ、ラヴィアンローズと違い規模は大きい。5、60人ほどがくつろげる大きさだ。その規模だが店内はほぼ満員、多くの女の子で大繁盛だ。ラヴィアンローズは8人で席は一杯になってしまう。
「おお、本当にカフェがある。ログハウスは異世界でも女の子に人気でオシャレな存在ということは同じなのだな」
「だよね~。妖精の国でもログハウスは人気があるよ!」
妖精国で人気って? 妖精は森にしか存在しないんじゃ? 3人が店に入ると、店内にどよめきが起こる。騎士団員もカミラがオレを連れてきていたことに驚いていたが、硬派で男を寄せ付けなかった有名人が、男を連れてカフェに来たのだ。確かにそれは目立つよな。
「え? カミラ様が男を……」
「隣の超絶美男子を見てよ。素敵すぎるんだけど」
「さすがカミラ様ね。美男美女でとってもお似合いね」
女の子たちの目がキラッキラ輝いている。オレたちは注目の的となって、先程まで女の子たちの会話でにぎやかだった店内がシーンっと静まり返る。ほぼ全員が耳をダンボにして会話を一言も逃さず、という雰囲気で聞いている。
「な、なんか雰囲気が変だよ、このお店。みんな違う方向に顔を向けているけど、耳と目はこっちを向いてる。なんかオイラ怖いよ!」
パックはこの異常さにすぐ気がついたようだ。カミラは……ダメだ、全く気がついた様子がない。さすが闇の深い女の子。好きな人の気持ちも含めて、他の人のことを気にせず、マイペースのみで物事を進めることしかしない、ということはメンヘラ闇女の特徴の1つだ。
「セシル様、この店はパンの上にフルーツをのせているところが新しいのです」
この店の異常さにまったく気がつくこともなく、メニューの紹介をはじめちゃったよ。オレの名前は言わないで欲しかったな。きっと、明日にはセシルの名前を知らない女子はこのティムガット市ではいなくなるに違いない。
だが異世界のデザート系メニューは気になるから、オレもスルー機能を発揮し、周囲の目はあえて無視して注文をすることにする。いずれオレもラヴィアンローズをカフェとして復活させたい。ラヴィアンローズから世界に最新デザートを発信するという日本で達成できなかった目標を、このラティアリア大陸で達成したいのだ。
そのようなことを考えていると、店員が注文を取りに来た。店員の目もオレをガン見している。おいおい、仕事を重視しろよ店員。
「パック、周囲は気になるがとりあえず注文しよう。オレはミアフラウラのパンに紅茶を頼もう。みんなはどうする?」
「じゃあ、オイラはアナナスのパンに紅茶を」
「私はロダキノのパンに紅茶をお願いします」
「承知いたしました。少々お待ちください」
店員は注文をとった去り際も、ずっとオレをガン見していた。やはり店員もカミラの連れてきた男は相当気になるらしい。ここで勇者があらわれる。カミラに声をかけてきた女性がいた。
「ヴェルチェッリ騎士団の団長をされているカミラ・ジョルジ様ですよね。私はファンなんです! 明日の騎士団戦を応援しているので頑張ってください!」
カミラはいきなり声をかけられ驚いたが、慣れたもので女性に優しく微笑んだ。
「応援ありがとう。明日は頑張るわね」
そう答え、女性が握手を求めて来たので、それにも応じた。闇があるのに以外と大人の対応だ。
「それで……言いにくいのですが、セシル様とはどのようなご関係なのですか?」
うげ、もうオレの名前を呼んでやがるこの女。やはり明日には女の子の間で、最も有名な名前になってしまうのは避けられないかもな。しかも言いにくいとかいいながら、思いっきり聞いてくるところが、女子力が高い女の子だ。
カミラは少しだけポッと赤くなり、フェロモン指数高めの艷やかな色気がただよった。
「セシル様は、私が誠心誠意すべてをかけて尽くしているお方よ」
店内にいる女性は興奮した様子で、我慢の限界を超えた女の子たちが発した黄色い悲鳴で一杯となる。
「きゃあああああああ、カミラ様可愛い!」
「お相手の方はどのようなお方なのかしら?」
「セシル様は体の線が細くて、顔もカッコいいわ。カミラ様が尽くすのも分かるわ」
騒然となった店内で、オレはどうやってこの場をおさめようかと考えていたが、このタイミングでデザートが運ばれてきて、1度店内はまたシーンっとなった。この異世界でも女の子はマナーが良いらしく、とても助かった。
ついに料理が運ばれてきたな。嬉しくてつい顔がほころぶ。来た料理を見ると、四角いパンの上に赤い実がのっている。パックのは四角いパンの上に黄色い実がのっていて、カミラのは四角いパンの上に白い実がのっている。
感想などいう前に、まずミアフラウラのパンを食べてみる。フォークやナイフがないので、このままかぶりつくのだろう。
「ガブッ、モグモグ、ゴクン……」
う~ん、ミアフラウラってイチゴを大きくした果物だった。糖度はかなり低い、酸味が少なめだが、味は完全に程度の低いイチゴだな。甘さが足りなくパンの旨味に負けている。そのため砂糖をまぶしているというところか。う~ん、この異世界はやはりデザートは微妙だ。はっきり言って、パンの上にイチゴをスライスしたものをひき、砂糖をまぶして焼いた。それだけだった。このレベルでもここでは新しいのだろうな。
「パックはアナナスのパンの味はどうだった?」
「そうだね~。セシルのケーキとは比べようがないレベルだよ」
やはり満足のいくデザートは自分で作るしかないようだ。迷宮都市フェロニアに着いたら、ラヴィアンローズを開業しよう。研究と冒険をダブルで楽しむというのも悪くない。
それに女の子の喜ぶ姿もみたいしな。男子はどんなに美味しいものを提供しても、美味いっすねって感じだ。女子が抜群に美味いものを食べときの反応ったら激しいもので、私はこれを食べるために生まれてきたの! って言われたこともある。女子の美味しいものへの執念は凄まじい。
店内は相変わらずシーンとしていて、異様な雰囲気のままだ。《探査マップ/神愛》で周囲の女の子のマーカーを見ると薄緑薄青ーー好奇心でオレたちは囲まれている。ん? お店に外に赤いマーカーが1つある。お店の入り口にあるドアから20メートル正面のところにいて、建物の影に隠れている。攻撃的なやつは誰なのだろうか? その者のマーカーをタップする。
●名前:ボージャン
●年齢:34歳
●種族:獣耳人犬耳族
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、暗殺団毒サソリ
●身長/体重:168/62
●経験:多数
●状態:殺意
●ベースレベル:28
●職業:レベル28盗賊
●HP:670
●MP:691
●腕力:341
●体力:329
●敏捷:331
●知力:349
●魔力:342
●器用度:312
●スキル
盗賊技能3、弓術3、剣術2
●装備
銀製の弓3、銀製の短剣、銅製のブレストプレート3、ブーツ+1
暗殺者か。レベル28とは刺客としては超一流の部類なのだろう。マーカーが赤薄緑ーー殺意なのでオレの命を狙っていることは確定だ。ラスメデュラス騎士団から差し向けられた暗殺者の可能性が最も有力だ。すぐに暗殺者のプレゼントを寄越すとは、ポートフォリオ団長は行動が早い。
毒サソリのボージャンを捕まえるのは簡単だが……う~む、どう対応するかな。とりあえず、マーカーをチェックしておいて、ボージャンがどこに逃げるか泳がせるか。確実にラスメデュラス騎士団の団長が黒幕ということを確認するとしよう。もしかしたら白猫亭にいた冒険車で、カミラにゾッコン惚れ込んでいる男からのプレゼントの可能性も僅かだがあるのだからな。
「さあ、そろそろ帰るとするか」
「ご来店ありがとうございます! お代は合計で銅貨3枚です」
「ご馳走さま。また来る」
『ガランガラン!』
店員にお茶代の銅貨を3枚支払ってお店を出る。ドアについている鈴がけたたましく鳴り響いた。
~~~戦闘開始
◎レベル28盗賊ボージャン×1(1)
ボージャンは奇襲に失敗した。イニシアティブはオレが取るが待機を選択。カミラは奇襲に気がつき、オレの前に出てかばうことを選択した。そして3番手のボージャンとなる。
『バシュッ!』
店の外に出たタイミングでボーシャンから必殺の矢が放たれ、矢は若干回転しながらオレの急所である胸部に向かって凄まじい速さで飛んできた。
『ドスッ!』
「くぅ!」
距離が20メートルと短いので、1秒以内に矢は胸に到達する。だがカミラが奇襲に気がつきオレの前に飛び出して両手を広げると、矢が彼女の左肩に命中し、ダメージをうけて膝をついた。
「「「きゃあああああああああああああ!」」」
女の子たちの悲鳴で店内は騒然となる。カミラは高レベル聖騎士なので、腰の短剣で弾くと予想していたが、身を呈してオレを守った。
~~~2ターン
◎レベル28盗賊ボージャン×1(1)
イニシアティブを取ったオレは、カミラの治療のため、もう一度大騒ぎとなっている店内に戻ろうと彼女を抱きかかえた。
『バシュッ!』
次点の毒サソリ、ボージャンはさらに追い討ちをかけるように矢を続けてもう1発射ってきた。
『ビィシッ!』
残りの矢はデコピンで弾く。その光景を見た暗殺者はギョッとして即撤退を開始する。さすが暗殺者だね。デコピンでオレが矢を弾いたのを見て力の差に気がつき、即撤退に踏み切るとはね。いい決断をしたな。今回は誰が黒幕か見極める必要があるので逃してやろう。
~~~戦闘終了
「セシル! 暗殺者が逃げちゃうよ!」
刺客を追いかけようとするパックの羽を指でつかんで止めた。
「痛たた! なんで止めるの?」
「パック、もうやつのマーカーはきっちりマークしてあるから大丈夫だ」
「そういうことなら分かったよ。すぐにカミラを助けなきゃ」
お姫様抱っこをして店内奥の個室を借り、カミラを寝かせた。矢の刺さった左肩をビリビリと服を破ってだすと、倒れているカミラの左肩に矢が刺さっている。高レベルの盗賊だけあり、筋肉の置く深くまで矢が突き刺さっていた。どうやら威力が3倍になるクリティカルヒットだったようだ。レベル38聖騎士にダメージを与えられるとは思っていなかったので完全に油断していた。
これから迷宮都市フェロニアで仲間を育てるときに、オレは大丈夫だが、仲間は死んだりすることがあるかもしれない。《リザレクション/上位蘇生魔法》で甦ることができるといっても、アリシアやクレタが死ぬのを見たくはない。こういう油断をしないように気をつけなくてはならないな。
カミラの左肩が毒で黒く変色してくる。《探査マップ/神愛》を見ると、ご丁寧にヒュドラの毒を使っていたようだ。大抵ヒュドラの毒は、RPG などでは世界最高クラスのものとなっている。ここでもきっとそうなのであろう。毒の効果が高いとは、VRの世界とリアルな世界の違いはここでもあった。
「パック、《ペインレス/無痛》だ」
「承知~」
《ペインレス/無痛》
「カミラ、矢を抜くぞ。魔法で痛みを消したから安心しろ」
「……はい、セシル様」
『ズッ』
一息でカメラに刺さっていた矢を抜いた。抜いた場所から大量の血が吹き出した。
「!? 痛く……ないです。血が大量に出ているのに」
「だろ! オイラの魔法は凄いんだよ!」
パックの鼻が伸び、炙られたスルメのように、後ろに反り返った。
《キュア/状態異常回復》
《フルリカバリー/フル回復魔法》
黒ずんでいたカミラの肩が、あっという間に綺麗なもとの白い肌に戻る。魔法は何度見ても凄い効き目だな。地球にもあったら便利だったよな。
「カミラ、魔法で毒と傷は完全に治ったはずだ。体の状態は大丈夫か?」
「はい、セシル様。体は問題ないようです。ただ、セシル様に胸を見られて恥ずかしい……です」
カミラが恥ずかしさで横を向き、頬が赤くなる。半球型のGカップは迫力があるな。カミラの乳首は予想通り薄ピンク色となっていて、乳輪は小さい。カッコいい系超絶美少女の条件を完璧に満たしている。美しい形の胸で、むしゃぶりつきたくなり、男を惑わせるような乳首だった。
それに毒の処理で服を脱がせたので、若い女の子独特の柑橘系の良い香りがし、頭がクラクラする。この香りは駄目だ、急激にカミラを抱きたくなってきている。一物が少し元気になってむくむく起きてきた。
「カミラが無事で良かった~。いきなり毒矢を射ってくるなんて、酷いことをするよな~。オイラ頭に来ちゃうよ!」
カミラを魔法で治したあと、個室から店内に戻り、いまだに不安な顔をして残っているお客と店員にお詫びをしに行った。
「みなさんお騒がせして申し訳ない。このお詫びに今日のお代はすべてオレがお支払をするから、気を取り直して食べていってくれ。おかわりも好きなだけ、腹一杯に食べていいからな。店員さん、これで足りるかな?」
そういってアイテムボックスから、金貨を10枚出すと店員に手渡す。
「き、金貨が10枚もですか。十分すぎるほどです」
「「「わあぁぁぁ、セシル様ご馳走さまです!」」」
女の子の喜ぶ声が店内に響く。女の子を喜ばすのは男の甲斐性だというのは正しいな。
カミラをお姫様だっこして白馬に乗り、後ろにまたがる。ここでオレが馬に乗れればカッコ良かったのにな。この後は暗殺者が依頼人のところに、失敗の報告に行くまで、白猫亭で待機することにしよう。
カミラは白馬にさっそうとまたがると、それを見ていた女の子から黄色い声が聞こえる。カミラは女子から人気があるのだね~。女性の権利など無いラティアリア大陸で、それを勝ち取ろうとする生き方に多くの女性から共感を得ているのだ。
さすがに、ここでもみもみするのはまずいか、みんなの前でもみもみして羞恥に恥ずかしがるカミラなんていうのも興奮するよな。こういうときって、何をしても彼女は許すしか選択肢がない。惚れた弱みじゃないが、好きになった方が負けだな。だがカミラに恥をかかせたくないので、今回は普通に乗っておこう。
しばらく行くと、目的のカフェがあった。丸太を構造材として水平方向に井桁のように重ねて積み上げ、交差部にはノッチを使い組み上げた建築物だ。オレのラヴィアンローズと同じくログハウスだった。
ただ、ラヴィアンローズと違い規模は大きい。5、60人ほどがくつろげる大きさだ。その規模だが店内はほぼ満員、多くの女の子で大繁盛だ。ラヴィアンローズは8人で席は一杯になってしまう。
「おお、本当にカフェがある。ログハウスは異世界でも女の子に人気でオシャレな存在ということは同じなのだな」
「だよね~。妖精の国でもログハウスは人気があるよ!」
妖精国で人気って? 妖精は森にしか存在しないんじゃ? 3人が店に入ると、店内にどよめきが起こる。騎士団員もカミラがオレを連れてきていたことに驚いていたが、硬派で男を寄せ付けなかった有名人が、男を連れてカフェに来たのだ。確かにそれは目立つよな。
「え? カミラ様が男を……」
「隣の超絶美男子を見てよ。素敵すぎるんだけど」
「さすがカミラ様ね。美男美女でとってもお似合いね」
女の子たちの目がキラッキラ輝いている。オレたちは注目の的となって、先程まで女の子たちの会話でにぎやかだった店内がシーンっと静まり返る。ほぼ全員が耳をダンボにして会話を一言も逃さず、という雰囲気で聞いている。
「な、なんか雰囲気が変だよ、このお店。みんな違う方向に顔を向けているけど、耳と目はこっちを向いてる。なんかオイラ怖いよ!」
パックはこの異常さにすぐ気がついたようだ。カミラは……ダメだ、全く気がついた様子がない。さすが闇の深い女の子。好きな人の気持ちも含めて、他の人のことを気にせず、マイペースのみで物事を進めることしかしない、ということはメンヘラ闇女の特徴の1つだ。
「セシル様、この店はパンの上にフルーツをのせているところが新しいのです」
この店の異常さにまったく気がつくこともなく、メニューの紹介をはじめちゃったよ。オレの名前は言わないで欲しかったな。きっと、明日にはセシルの名前を知らない女子はこのティムガット市ではいなくなるに違いない。
だが異世界のデザート系メニューは気になるから、オレもスルー機能を発揮し、周囲の目はあえて無視して注文をすることにする。いずれオレもラヴィアンローズをカフェとして復活させたい。ラヴィアンローズから世界に最新デザートを発信するという日本で達成できなかった目標を、このラティアリア大陸で達成したいのだ。
そのようなことを考えていると、店員が注文を取りに来た。店員の目もオレをガン見している。おいおい、仕事を重視しろよ店員。
「パック、周囲は気になるがとりあえず注文しよう。オレはミアフラウラのパンに紅茶を頼もう。みんなはどうする?」
「じゃあ、オイラはアナナスのパンに紅茶を」
「私はロダキノのパンに紅茶をお願いします」
「承知いたしました。少々お待ちください」
店員は注文をとった去り際も、ずっとオレをガン見していた。やはり店員もカミラの連れてきた男は相当気になるらしい。ここで勇者があらわれる。カミラに声をかけてきた女性がいた。
「ヴェルチェッリ騎士団の団長をされているカミラ・ジョルジ様ですよね。私はファンなんです! 明日の騎士団戦を応援しているので頑張ってください!」
カミラはいきなり声をかけられ驚いたが、慣れたもので女性に優しく微笑んだ。
「応援ありがとう。明日は頑張るわね」
そう答え、女性が握手を求めて来たので、それにも応じた。闇があるのに以外と大人の対応だ。
「それで……言いにくいのですが、セシル様とはどのようなご関係なのですか?」
うげ、もうオレの名前を呼んでやがるこの女。やはり明日には女の子の間で、最も有名な名前になってしまうのは避けられないかもな。しかも言いにくいとかいいながら、思いっきり聞いてくるところが、女子力が高い女の子だ。
カミラは少しだけポッと赤くなり、フェロモン指数高めの艷やかな色気がただよった。
「セシル様は、私が誠心誠意すべてをかけて尽くしているお方よ」
店内にいる女性は興奮した様子で、我慢の限界を超えた女の子たちが発した黄色い悲鳴で一杯となる。
「きゃあああああああ、カミラ様可愛い!」
「お相手の方はどのようなお方なのかしら?」
「セシル様は体の線が細くて、顔もカッコいいわ。カミラ様が尽くすのも分かるわ」
騒然となった店内で、オレはどうやってこの場をおさめようかと考えていたが、このタイミングでデザートが運ばれてきて、1度店内はまたシーンっとなった。この異世界でも女の子はマナーが良いらしく、とても助かった。
ついに料理が運ばれてきたな。嬉しくてつい顔がほころぶ。来た料理を見ると、四角いパンの上に赤い実がのっている。パックのは四角いパンの上に黄色い実がのっていて、カミラのは四角いパンの上に白い実がのっている。
感想などいう前に、まずミアフラウラのパンを食べてみる。フォークやナイフがないので、このままかぶりつくのだろう。
「ガブッ、モグモグ、ゴクン……」
う~ん、ミアフラウラってイチゴを大きくした果物だった。糖度はかなり低い、酸味が少なめだが、味は完全に程度の低いイチゴだな。甘さが足りなくパンの旨味に負けている。そのため砂糖をまぶしているというところか。う~ん、この異世界はやはりデザートは微妙だ。はっきり言って、パンの上にイチゴをスライスしたものをひき、砂糖をまぶして焼いた。それだけだった。このレベルでもここでは新しいのだろうな。
「パックはアナナスのパンの味はどうだった?」
「そうだね~。セシルのケーキとは比べようがないレベルだよ」
やはり満足のいくデザートは自分で作るしかないようだ。迷宮都市フェロニアに着いたら、ラヴィアンローズを開業しよう。研究と冒険をダブルで楽しむというのも悪くない。
それに女の子の喜ぶ姿もみたいしな。男子はどんなに美味しいものを提供しても、美味いっすねって感じだ。女子が抜群に美味いものを食べときの反応ったら激しいもので、私はこれを食べるために生まれてきたの! って言われたこともある。女子の美味しいものへの執念は凄まじい。
店内は相変わらずシーンとしていて、異様な雰囲気のままだ。《探査マップ/神愛》で周囲の女の子のマーカーを見ると薄緑薄青ーー好奇心でオレたちは囲まれている。ん? お店に外に赤いマーカーが1つある。お店の入り口にあるドアから20メートル正面のところにいて、建物の影に隠れている。攻撃的なやつは誰なのだろうか? その者のマーカーをタップする。
●名前:ボージャン
●年齢:34歳
●種族:獣耳人犬耳族
●所属:パルミラ教皇国ティムガット市、暗殺団毒サソリ
●身長/体重:168/62
●経験:多数
●状態:殺意
●ベースレベル:28
●職業:レベル28盗賊
●HP:670
●MP:691
●腕力:341
●体力:329
●敏捷:331
●知力:349
●魔力:342
●器用度:312
●スキル
盗賊技能3、弓術3、剣術2
●装備
銀製の弓3、銀製の短剣、銅製のブレストプレート3、ブーツ+1
暗殺者か。レベル28とは刺客としては超一流の部類なのだろう。マーカーが赤薄緑ーー殺意なのでオレの命を狙っていることは確定だ。ラスメデュラス騎士団から差し向けられた暗殺者の可能性が最も有力だ。すぐに暗殺者のプレゼントを寄越すとは、ポートフォリオ団長は行動が早い。
毒サソリのボージャンを捕まえるのは簡単だが……う~む、どう対応するかな。とりあえず、マーカーをチェックしておいて、ボージャンがどこに逃げるか泳がせるか。確実にラスメデュラス騎士団の団長が黒幕ということを確認するとしよう。もしかしたら白猫亭にいた冒険車で、カミラにゾッコン惚れ込んでいる男からのプレゼントの可能性も僅かだがあるのだからな。
「さあ、そろそろ帰るとするか」
「ご来店ありがとうございます! お代は合計で銅貨3枚です」
「ご馳走さま。また来る」
『ガランガラン!』
店員にお茶代の銅貨を3枚支払ってお店を出る。ドアについている鈴がけたたましく鳴り響いた。
~~~戦闘開始
◎レベル28盗賊ボージャン×1(1)
ボージャンは奇襲に失敗した。イニシアティブはオレが取るが待機を選択。カミラは奇襲に気がつき、オレの前に出てかばうことを選択した。そして3番手のボージャンとなる。
『バシュッ!』
店の外に出たタイミングでボーシャンから必殺の矢が放たれ、矢は若干回転しながらオレの急所である胸部に向かって凄まじい速さで飛んできた。
『ドスッ!』
「くぅ!」
距離が20メートルと短いので、1秒以内に矢は胸に到達する。だがカミラが奇襲に気がつきオレの前に飛び出して両手を広げると、矢が彼女の左肩に命中し、ダメージをうけて膝をついた。
「「「きゃあああああああああああああ!」」」
女の子たちの悲鳴で店内は騒然となる。カミラは高レベル聖騎士なので、腰の短剣で弾くと予想していたが、身を呈してオレを守った。
~~~2ターン
◎レベル28盗賊ボージャン×1(1)
イニシアティブを取ったオレは、カミラの治療のため、もう一度大騒ぎとなっている店内に戻ろうと彼女を抱きかかえた。
『バシュッ!』
次点の毒サソリ、ボージャンはさらに追い討ちをかけるように矢を続けてもう1発射ってきた。
『ビィシッ!』
残りの矢はデコピンで弾く。その光景を見た暗殺者はギョッとして即撤退を開始する。さすが暗殺者だね。デコピンでオレが矢を弾いたのを見て力の差に気がつき、即撤退に踏み切るとはね。いい決断をしたな。今回は誰が黒幕か見極める必要があるので逃してやろう。
~~~戦闘終了
「セシル! 暗殺者が逃げちゃうよ!」
刺客を追いかけようとするパックの羽を指でつかんで止めた。
「痛たた! なんで止めるの?」
「パック、もうやつのマーカーはきっちりマークしてあるから大丈夫だ」
「そういうことなら分かったよ。すぐにカミラを助けなきゃ」
お姫様抱っこをして店内奥の個室を借り、カミラを寝かせた。矢の刺さった左肩をビリビリと服を破ってだすと、倒れているカミラの左肩に矢が刺さっている。高レベルの盗賊だけあり、筋肉の置く深くまで矢が突き刺さっていた。どうやら威力が3倍になるクリティカルヒットだったようだ。レベル38聖騎士にダメージを与えられるとは思っていなかったので完全に油断していた。
これから迷宮都市フェロニアで仲間を育てるときに、オレは大丈夫だが、仲間は死んだりすることがあるかもしれない。《リザレクション/上位蘇生魔法》で甦ることができるといっても、アリシアやクレタが死ぬのを見たくはない。こういう油断をしないように気をつけなくてはならないな。
カミラの左肩が毒で黒く変色してくる。《探査マップ/神愛》を見ると、ご丁寧にヒュドラの毒を使っていたようだ。大抵ヒュドラの毒は、RPG などでは世界最高クラスのものとなっている。ここでもきっとそうなのであろう。毒の効果が高いとは、VRの世界とリアルな世界の違いはここでもあった。
「パック、《ペインレス/無痛》だ」
「承知~」
《ペインレス/無痛》
「カミラ、矢を抜くぞ。魔法で痛みを消したから安心しろ」
「……はい、セシル様」
『ズッ』
一息でカメラに刺さっていた矢を抜いた。抜いた場所から大量の血が吹き出した。
「!? 痛く……ないです。血が大量に出ているのに」
「だろ! オイラの魔法は凄いんだよ!」
パックの鼻が伸び、炙られたスルメのように、後ろに反り返った。
《キュア/状態異常回復》
《フルリカバリー/フル回復魔法》
黒ずんでいたカミラの肩が、あっという間に綺麗なもとの白い肌に戻る。魔法は何度見ても凄い効き目だな。地球にもあったら便利だったよな。
「カミラ、魔法で毒と傷は完全に治ったはずだ。体の状態は大丈夫か?」
「はい、セシル様。体は問題ないようです。ただ、セシル様に胸を見られて恥ずかしい……です」
カミラが恥ずかしさで横を向き、頬が赤くなる。半球型のGカップは迫力があるな。カミラの乳首は予想通り薄ピンク色となっていて、乳輪は小さい。カッコいい系超絶美少女の条件を完璧に満たしている。美しい形の胸で、むしゃぶりつきたくなり、男を惑わせるような乳首だった。
それに毒の処理で服を脱がせたので、若い女の子独特の柑橘系の良い香りがし、頭がクラクラする。この香りは駄目だ、急激にカミラを抱きたくなってきている。一物が少し元気になってむくむく起きてきた。
「カミラが無事で良かった~。いきなり毒矢を射ってくるなんて、酷いことをするよな~。オイラ頭に来ちゃうよ!」
カミラを魔法で治したあと、個室から店内に戻り、いまだに不安な顔をして残っているお客と店員にお詫びをしに行った。
「みなさんお騒がせして申し訳ない。このお詫びに今日のお代はすべてオレがお支払をするから、気を取り直して食べていってくれ。おかわりも好きなだけ、腹一杯に食べていいからな。店員さん、これで足りるかな?」
そういってアイテムボックスから、金貨を10枚出すと店員に手渡す。
「き、金貨が10枚もですか。十分すぎるほどです」
「「「わあぁぁぁ、セシル様ご馳走さまです!」」」
女の子の喜ぶ声が店内に響く。女の子を喜ばすのは男の甲斐性だというのは正しいな。
カミラをお姫様だっこして白馬に乗り、後ろにまたがる。ここでオレが馬に乗れればカッコ良かったのにな。この後は暗殺者が依頼人のところに、失敗の報告に行くまで、白猫亭で待機することにしよう。
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神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
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飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
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彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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