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68、事態は進むよどこまでも
しおりを挟むなんとも言えない複雑な気分になりつつ窓の外に目を向けて現実逃避です。
今朝からずっと曇っていた空は、4人の眩い笑顔の効果なのか晴れ間が見え隠れしていました。
いやー、流石イケメンの笑顔ですねー。
なんてしょうもない事を考えていると、近くに勢揃いしていた5人が口々に何やら話をしています。
取りあえず帰って良いですかね…。
「春日井、てめぇは1週間ミノルに接近すんの禁止な」
「はぁ?!何でそうなんすか?!」
「抜け駆けに入るからだよねー」
「抜け駆けはしない、という約束だったからね」
「諦めなさい、春日井くん」
「ひでぇ!!実助けてー!」
ひぃ!!こっち来た!!
現実逃避から無理矢理引き戻された俺は、背後に隠れた和馬くんを庇うような立ち位置で皆さんと相対しています。
「先輩達がひどいんだよ、助けて!」
何をどう助ければいいのか。
俺の後ろに隠れる和馬くんと目の前に勢揃いする皆さんを交互に見て軽く息を吐き出します。
「…えぇと……虐めちゃいけませんよ?」
何だか的外れな事を言った感が否めません。取りあえず助けてと言われたからには助けましょう。良く分かってませんが。
俺の言葉を聞いて呆れたのかなんなのか、和馬くんが後ろからぎゅっと抱き締めてきました。
「実…そうじゃないけど……うん、ありがとう…」
あ、呆れてましたね。
勢揃いしていた皆さんも俺の的外れ発言に威力を削がれた様子で、苦笑を浮かべたりおかしそうに笑ったり溜息を零したりと様々です。
うん、なんとか助けた結果になったようでなによりです。
「お腹空きました。帰りましょう?」
まだお腹の虫は鳴ってませんが時間の問題でもありますし、早く帰りたいのです。
皆さんに帰ろうと促して、俺はもぞもぞと和馬くんの腕から逃れようともがきますが……あれ?外れない。
「和馬くん?離してくれますか?」
後ろを振り向いて解放してもらおうとしたら、思ったよりも近くに和馬くんの顔があって驚きました。
滅茶苦茶イケメンですね。腹立たしい。
睫毛バッシバシですね。爽やかの代名詞のような目元だし、鼻筋だってスッと通ってて唇は薄めですよ。……羨ましくなんか…!!
思わずじっと顔を見つめてしまってました。どうやら和馬くんも俺の平凡顔を見ているらしく、面白味のない顔で申し訳ない気持ちが込み上げます。
と、思ったら唇に柔らかな感触が。
「…………?」
物凄く間近に和馬くんの顔があります。
あれ?もしかして……キスされてます?
パチパチと何度も瞬きを繰り返して固まっていたら、突然唇の感触も、俺を抱き締めていた腕の感触もなくなりハッと我に返りました。
「…………」
無言で和馬くんを羽交い締めにしている雅先輩と、俺を引き剥がして匿うように背後に隠す翔先輩。
理人先生と真一先輩はお怒りの様子で和馬くんを睨んでいます。
が、真一先輩がくるりと視線をこちらに向けたかと思うと、さっと近付いてきて俺の両頬を両手で挟み込みそのまま唇を重ねてきました。
「んん?!」
驚きで思わずくぐもった声を上げる俺に唇を離した真一先輩は、にこりと笑みを浮かべ。
「消毒だよ」
………状況を処理できず俺の精神的安息の為、ブラックアウトという現実逃避をします。
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