クソ水晶(神)に尻を守れと心配された件

ジャン

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辺り一面、草と葉っぱとカラフルな果物しかない。空が見えないから薄暗い。

……どこだここ…。
あぁ、いや、転生?したんだったか…。くっそ眠ぃ…。
何だっけな…鑑定?使えとか言ってた気がするわ。……どうやって?


「……鑑定」


試しに呟いてみる。何も起きない。なんだ、故障か?いや、自分に使えとか言ってたな…。


「鑑定」


もう一度、自分を鑑定してみる。
すると目の前に半透明のスクリーンが現れた。



名前 諏訪 慎一郎(スワ シンイチロウ)
年齢 17才
身長 175センチ
装備 刀(Max)
能力 鑑定(Max) 気配察知(Max) 全言語理解 アイテムボックス(容量無限) 魔力無限 創造魔法

備考 転生者。神の加護を持つ。色気溢れる美人(気を付けるように!)



なんだ、これ。美人?気を付けるって何を?やっぱ故障か?それにしても刀の詳細にMaxとか不釣り合い過ぎる。笑うわ。
つか、この鑑定どうやって消すんだよ。あ、消えたわ。

シュンッと小さな音を立てて消えた半透明のスクリーン。
どうやら思えば消せるらしい。
分からん。考えても無理だわ。…さて、現状把握するか。


辺りを見渡し、自分が知っているような場所ではないことを察する。ずっと手にしていた刀を腰のベルト部分に差して能力の気配察知を発動してみた。

どうやら能力は言葉に出さなくても使えるようで、瞬時に自分の周りの気配を感じた。
小動物であろう小さな動き。
鳥の羽ばたき。
風でそよぐ木々の葉音。
遠くの方で水の気配もするようだ。

そして更に奥…獣道とも言えない繁みを進んだ先で大勢の人の気配。それと…禍々しい殺気とも取れる嫌悪感を感じる気配。
逃げているような感じもしない。かといって積極的に攻撃しているようでもない。
どういう事だ?

気になり、気配察知を発動させたまま小走りでそこへ向かう。
途中で一度止まり、自分の気配を消すことを覚えた。
気配察知が出来るなら、遮断も出来るんじゃねぇかと。意外とすんなり出来た事に僅かに驚き、次いで怪我人がいた場合の対処を考える。
ここが俺が思ったようなファンタジー世界なら、回復魔法とか使えるのではないかと思い至り、創造魔法とやらを使って回復魔法を作ってみる。


「回復」


自分の手の甲に向かって呟いてみたが、怪我をしている訳ではないのでイマイチ実感が湧かない。
そこで、少し無謀かとも思ったが刀を鞘から抜き去る。切れ味抜群といっていただけあって、刃を手の甲に軽く押し当てただけでピリリとした傷みが走った。
切れ味のいい刃物に切られると血をあまり流さないというのは本当らしい。少し血が滲んでいる程度で見た目程の出血はない。


「……回復」


もう一度、自分の手の甲に向かって呟いてみる。
みるみるうちに傷が塞がっていった。抜き身の刀を鞘に戻し、傷が塞がったばかりの手の甲をまじまじと見つめる。
完全に塞がったようだ。傷があった部分を擦り、付着していた血を拭う。血液は戻らないらしい。

さて、もう一度気配察知を発動して目的の集団へと意識を集中させる。
先程よりも近付いたせいか、人数などの詳細が分かる程度になった。
どうやら2、30人程の団体様らしい。その周りをぐるりと、禍々しい気配が取り囲んでいる。数はおよそ10。
急いだ方が良さそうだ。
気配察知をそのままに、自分に気配遮断を使うと小走りで走っていた速度を速め、急いで目的へと向かった。




ーーーーーーーーーーーー

間合いを一気に詰め、そのまま抜刀する。勢いのまま目の前に迫った魔物を一太刀で切り上げると、すぐそばで殺気を放つ2匹目に両手で柄を握り直した刀を振り下ろす。
ドチャリといやな音を立てて2匹目が倒れると、背後から3匹目が飛びかかろうとしていた。


「危な…っ!」


誰かの声が聞こえたと同時に軸足に力を入れてくるりと方向転換しながら口を開いて襲いかかる3匹目の魔物を口の裂け目から切り伏せる。
上下に切り離された魔物の血飛沫をしこたま浴びたが、構っている暇はない。4匹目に向かおうと走り出そうとすると、目の前に迫ろうとしていた魔物は急ブレーキを掛けたように立ち止まりじりじりと後退し始めた。
どうやら戦意喪失し始めたようだ。
血に塗れた刀を一振りしてその刀身から血を払う。
ヒュッと空を裂く音に弾かれたように、魔物は身を翻して森の奥へと去って行った。


「………割と大した事はないんだな…」


そう独りごちると、手の中の刀を見つめる。
どうやら万能刀は俺の能力を底上げしてくれる、本当の万能刀だったらしい。
あんな動き、今までしたことがない。
あのクソ水晶…今度会ったら叩き割る…。


「…チッ」


刀を鞘に収め、血塗れだった事に気付く。
うぇ…へんな臭いする…。鉄臭く、獣臭い。いやな臭いだ。
気配察知は発動させて先程感じた川の流れを辿る。どうやらそんなに遠くないらしい。
着替えがないのが惜しいが、まぁなんとかするか。
そう思って歩き出そうとすると、後ろから声がかけられた。
あぁ、忘れてたわ…。


「おい!」


血塗れを早く何とかしたくて、それでも呼び止められた事にイラッとした。不機嫌に振り返りさっさと要件を言えと言わんばかりに言葉を返す。


「…なに?」


俺の理不尽なイライラをぶつけられた男は一瞬たじろいだ様子だったが、すぐに背筋を伸ばして深々と頭を下げた。


「助けて頂き、感謝する。見たところこの先の川へ向かう様子。魔物の血と臭いは落ちにくい。お礼と言ってはなんだが、着替えを提供させてくれないだろうか」


頭を上げてそう言う男は、先程観察していた男。
団長と思しき男だった。


「……はぁ…」


軽く溜息を吐き、頷いて了承の意を伝える。正直、着替えが貰えるのは有り難い。


「……先に行く」


男が後ろを振り返り部下たちに指示を出す前にそう告げ、俺はスタスタと川への道を歩き出した。顔の血が固まり始めてる。早く流したい…。
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